米国株相場レポート
                                     5月20日
                                    森   崇

引けにかけ小反落。


(背景)

1.FOMCが景気に対してもっと深刻に受け止めていた事実が判明した。

★この日公開された米連 邦公開市場委員会(FOMC)議事録で、一部のメンバーが国債などの買い取り拡大に言及していたことが判明。買い取り枠が今後拡大される可能性もあると受け止められた。
★4月のFOMC議事録で、2009年の米国内総生産(GDP)実質成長率をマイナス2.0%-マイナス1.3%の範囲と予想し、1月時点の前回見通しを下方修正、一方、失業率は9.2%-9.6%と前回見通しを引き上げた。

2.インフレ懸念が出てきた。
20日のニューヨーク原油先物相場は大幅続伸。ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物6月限は前日比1.94ドル高の1バレル=62.04ドルで終えた。引け値ベースで11月以来、ほぼ半年ぶりの高値となった。

(背景)
★米エネルギー省エネルギー情報局(EIA)が20日発表した週間石油統計によると、15日現在の原油在庫(戦略備蓄を除く)は前週比210万バレル減の3億6850万バレルと2週連続で減少した。市場予想は70万バレルの減少。ガソリン在庫は430万バレル減の2億400万バレル。市場予想は120万バレル減。石油精製品在庫は60万バレル増の1億4810万バレル。予想は70万バレル増。
★ドル安傾向が強まっていることも買い材料となった。

また、ニューヨーク金先物相場も続伸し、取引の中心となる6月渡しは前日比10.70ドル高の1オンス=937.40ドルで取引を終了。終値としては3月26日以来、約2カ月ぶりの高値水準となった。

ダウ指数は前日比52.81ドル安の8,422.04ドル、S&P500指数は同4.66ポイント安の903.47、ナスダック指数は同6.70ポイント安の1,727.84で引けた。

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(米国株相場にとっての強材料)
1.15日まで1週間の住宅ローン申請指数は915.9(前週895.6)だった。金利低下を受けて借り換えが進んだ。

  (その他主要指数動向)
★借り換え指数…4794.4(前週4588.6)
★購入指数…254.0(前週265.7)

2.ターゲット(TGT)
ディスカウントチェーン第2位のターゲットが20日寄り前決算発表。2―4月(第1四半期)の総売上高は前年同月比ほぼ変わらずの148億ドル、1株当たり利益は69セントとなった。予想は、売上高が148億3825万ドル、1株当たり利益は60セントだった。減益となったが、予想ほどは悪化しなかった。価格設定の改善や食品雑貨の販売好調が下支えた。

3.タルボッツ(TLB)
米婦人衣料品のタルボットの株価が上昇、一時は2カ月ぶりの大幅高。フリードマン・ビリング・ラムジーが、タルボットの株式投資判断を「マーケットパフォーム」から「アウトパフォーム」に引き上げた。春物商品が好調だったことが背景。

4.ゼネラル・エレクトリック(GE)
ゼネラル・エレクトリックのジェフリー・イメルトCEOは20日、小規模企業向け融資や電化製品販売などの分野で景気回復の兆候がみられるとの認識を示した。4-6月(第2四半期)に、小規模企業向けの商業融資需要が急速に伸びたと語った。

5.経済協力開発機構(OECD)のグリア事務総長は20日、以下の通り発言。

  (発言要旨)
★2009年は困難な1年となるだろうが、恐らく10年には景気縮小に歯止めがかかり、回復し始めるのではないかと思われる。

★最新の経済見通しを6月24日に発表するが、大幅な修正はないだろう。
(OECDの3月末時点の予測では、加盟国30カ国全体の09年経済成長率はマイナス4.3%と、過去50年余りで最悪の落ち込みが見込まれている。ユーロ圏については4.1%のマイナス成長が予想されている)

★世界の各国・各地域の政府が採用した景気対策を評価に値する。地域により影響は異なるものの、景気対策やゼロに近い政策金利、流動性の供給、銀行の資本強化などの組み合わせはいずれ、効果をもたらすだろう。

6.オバマ大統領は20日、ボルカー元米連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる経済回復諮問会議のメンバーに、米国経済の一部は正常化しつつあると語った。

7.ガイトナー米財務長官は20日、上院銀行委員会で証言。

  (発言要旨)
★銀行の不良資産を買い取る計画が7月初めまでに始まる見通しだ。FRBと米連邦預金保険公社(FDIC)とともに協議を進めており、計画が6週間以内に始まるとみている。

  ★さまざまな不良資産が米金融システムに詰まっている。この資本ひっ迫により、金融機関の新規信用創造力が低下。さらに不良資産価値をめぐる不透明感から金融機関の民間資本調達能力は弱まっている。

  ★7000億ドルの問題資産購入計画(TARP)資金のうち、約1240億ドルが残っている。それには今後1年間に返済されるとみられる250億ドルも含まれている(従来の残高見通しは3月下旬現在で1350億ドルだった)

★金融システムが回復し始めていることを示す明確な兆候が表れている。社債や地方債、銀行間貸出金利のプレミアムが低下している。

★レバレッジは低下しており、銀行以外の金融システムで最もぜい弱な分野のリスクは従来ほど高くはなく、銀行の資金調達方法は従来よりも保守的になっている。

8.FRBが20日公表した連邦公開市場委員会(FOMC、4月28-29日開催)の議事録によると、資産購入拡大は、当面見合わせることで全会一致に至った。

  (主な内容)
★回復歩調を速めるため、購入総額のさらなる引き上げがいずれ正当化される可能性は十分にあるとの指摘が一部メンバーからあった。しかし、すで
に講じた政策に対する経済と金融状況の反応を見極めるまでは決断を見送るのが望ましいとの認識で一致した。

★金融状況の改善と、企業と家計の景況感が上向いたことに加え、在庫刷新のための鉱工業生産の拡大が予想される。

★FRBによる大規模な証券購入が金融へ刺激を与えており、持続的経済成長の緩やかな再開に貢献するとの認識でメンバーは一致した。すでに発表済みの1兆7500億ドル規模の計画に基づいた資産購入の継続は適切となろうとの見解で合意した。

★2009年の米国内総生産(GDP)実質成長率をマイナス2%-マイナス1.3%の範囲と予想、1月時点の前回見通し(マイナス1.3%-マイナス0.5%)を下方修正した。09年の失業率は9.2-9.6%と前回見通し(8.5-8.8%)を引き上げた。米金融当局はストレステストを実施した際、前提条件となる景気悪化シナリオで09年の失業率を8.9%としており、雇用情勢はこのシナリオより大きく悪化する見通しとなった。また、09年の個人消費支出(PCE)物価指数は0.6-0.9%と前回見通し(0.3-1.0%)から予想範囲を縮小。食品とエネルギーを除く同コア指数は1.0-1.5%と前回の予想(0.9-1.1%)を上方修正した。

9.欧州中央銀行(ECB)の政策決定委員会は、今月7日の定例政策委員会で、約1250億ユーロ(約16兆3800億円)相当の資産購入計画を協議していたと言う。委員会メンバーはコマーシャルペーパー(CP)や社債の買い取りを含む同資産購入計画について協議した。

10.フォード(F)
フォード・モーターのビル・フォード執行会長は19日、以下の通り発言。

(発言要旨)
★同社が政府支援なしで経営を継続することは国益にかなう。米自動車メーカーで唯一政府支援を受けていない事実から同社が打撃を受けることがないよう、オバマ政権関係者と会談した。独立企業で公的資金を受け入れていないという事実が当社を不利にしないことが狙いだ。

11.プロクター&ギャンブル(PG)
  バークレイズが同社株の投資判断を“オーバー・ウェイト”に引き上げた。
  売上と利益が加速度的に好転する可能性があると言う。

12.アナログ・デバイセズ(ADI)
米半導体メーカー、アナログ・デバイセズが19日引け後に示した09年5-7月(第3四半期)の1株利益見通しは17-19セントと、予想(11セント)を上回った。


(米国株相場にとっての弱材料)

1.バンカメ(BAC)
バンク・オブ・アメリカのケネス・ルイスCEOは20日、ロンドンでの講演で
以下の通り発言。

(発言要旨)
★景気安定に伴い米銀行間の合併が今後増えると見込まれるものの、バンカメはこの業界再編の動きには参加しないつもりだ。当行は今のところ、手一杯だ。

★リセッションと信用危機で米国の銀行システムは過剰能力を抱えたとし、強者による弱者の吸収は不可避となった。

★米当局による大手19金融機関のストレステスト(資産査定)では、FRBが想定している結果は現時点で可能性が高いシナリオや予想されるシナリオのいずれに比べても格段に悪い。また、住宅ローン事業で貸倒率が
5.7%に達する可能性があるとのFRBの試算は同意できない。この試算結果が実現するためには、貸倒率が09年1-3月(第1四半期)の水準から2倍以上に上昇、極端に高いその水準にさらに7四半期とどまることが必要だ。

★景気については、今年7-12月には米国と欧州がプラス成長に転じ、緩やかだが持続的な回復となろう。最悪期は恐らく過ぎた。

2.ゼネラル・モーターズ(GM)
ゼネラル・モーターズ(GM)は19日、全米自動車労組(UAW)や米政府との債務削減交渉が難航し、期限になっている今月26日までの合意が難しい見通しだと表明した。期限を延ばすか、交渉を打ち切るかを27日に改めて発表するという。GMは、UAWの退職者向け医療基金への拠出金200億ドルと政府への債務200億ドルのそれぞれ半分を、GM株に転換する交渉を続けている。破産法申請の可能性が高まっている。

3.ヒューレット・パッカード(HPQ)
  19日引け後にヒューレットが決算発表。売上高が予想を下回った。また、第3、通期ベースの売上高も弱い。特にヒューレットの売上比率30%を占めるPC部門が不振であった。とりわけデスクトップ・コンピュータが不振であった。デルの攻勢も影響している。

第2四半期(2‐4月期)実績
○売上高…273億5,000万ドル(コンセンサス予想は274億8,000万ドル)
○1株当たり利益…0.86ドル(コンセンサス予想は0.86ドル)

第3四半期(5‐7月期)予想
○売上高…268億ドル‐273億5,000万ドル(コンセンサス予想は275億ドル)
○1株当たり利益…0.88ドル‐0.90ドル(コンセンサス予想は0.89ドル)

通期ベース予想
○売上高…4%-5%減少(2月のガイダンス時には2%-5%減少だった。コンセンサス予想は1,135億7,600万ドル)
○1株当たり利益… 3.76ドル~3.88ドル(コンセンサス予想3.71ドル)

4.アメックス(AXP)
  米上院は19日、クレジットカー ドの手数料を抑え、契約変更を制限する法案を賛成90、反対5で可決した。同法案は、先月同様の法案を通した下院に送付され、一本化された上で20日にも最終可決の見通し。クレジットカード会社に対し、利用者による別のカード会社への支払いが遅れたことを理由に同利用者の既存の借入残高に対する金利を引き上げることを禁じている。また、原則禁止とする事後的な金利引き上げを実施する場合は、利用者に45日
以上前に通知することを義務付ける。これに対し、米銀行協会は反対している。

個別銘柄編

投資判断変更

ノキア(NOK)
ドイチェ・セキュリティーズが、ノキアの投資判断を、“保有”から“買い”に引き上げた。

ホーム・デポ(HD)
FBRキャピタル・マーケットが、ホーム・デポの投資判断を、“アウトパフォーム”から“マーケットぱフォーム”へ引き下げた。また、株価の目標価格を、これまでの30ドルから25ドルへ下方修正した。

ビザ(V)
ワコビアが、ビザの投資判断を、“アウトパフォーム”に復活した。

マスターカード(MA)
ワコビアが、マスターカードの投資判断を、“アウトパフォーム”に復活した。

プロクター・アンド・ギャンブル(PG)
バークレイズ・キャピタルが、プロクター・アンド・ギャンブルの投資判断を、“イコールウェイト”から“オーバーウェイト”へ引き上げた。

タイム・ワーナー(TWX)
ベンチマークが、タイム・ワーナーの投資判断を、“保有”で新規格付けした。また、株価の目標価格を、25ドルとした。


個別銘柄編 

価格目標変更

ヒューレット・パッカード(HPQ)
●モルガン・スタンレーが、ヒューレット・パッカードの投資判断を、“オーバーウェイト”で据え置いた。また、株価の目標価格を、これまでの38ドルから40ドルへ上方修正した。

●バークレイズ・キャピタルが、ヒューレット・パッカードの投資判断を、“オーバーウェイト”で据え置いた。また、株価の目標価格を、これまでの41ドルから42ドルへ上方修正した。

●シティグループが、ヒューレット・パッカードの投資判断を、“買い”で据え置いた。 また、株価の目標価格を、これまでの51ドルから54ドルへ上方修正した。

●カリス・アンド・カンパニーがヒューレット・パッカードの投資判断を、 “平均”で据え置いた。また、株価の目標価格を、これまでの35ドルから40ドルへ上方修正した。

ネタップ(NTAP)
ジェフリーズが、ネタップの投資判断を、“保有”で据え置いた。また、株価の目標価格を、これまでの13ドルから18ドルへ上方修正した。


=以上=