米国株相場レポート

6月8日

森   崇

株式市場は引けにかけまちまちに。ヘルスケア関連株と素材株を中心に売りを浴び、ほぼ終日軟調に推移したが、午後3時20分過ぎににノーベル経済学賞受賞者、プリンストン大学のポール・クルーグマン教授の景気発言(米国景気は9月までにリセッションを脱却するだろう)を好感し、ここから全般反発した。

ファストフード世界最大手のマクドナルドが8日発表した5月の既存店売上高は前年同月比5.1%増加と、市場予想(4.4%増)を上回った。しかし、米国内の既存店売上げが2.8%増と、予想(3.8%増)を下回ったことが嫌気され、株価は下落。

また、AT&T(T)株が安い。ゴールドマン・が同社株を“アメリカン・コンビクション・バイ・リスト”から除外した。ワイヤレス業界の競争激化と、3月以来の同社株のアンダー・パフォーマンスが背景。更に、ドメイン認証局ベリサイン(VRSN)の株価が急落。カウエンがネガティブ・コメント。6月5日の裁判所判決により、同社のドメイン認証料金引き上げ能力に疑義が生じていると言う。また、デュポン(DD)株が続落。バンカメが同社株の投資判断を“中立”から“アンダー・パフォーム”に引き下げた。次年度の利益の伸びがフラットの見通しに加え、株価が既に高いと言う。保険会社のシグナ、エトナはいずれも大幅安。この日のヘルスケ ア関連株はS&P500種株価指数の産業別10指数の中で値下がり率最大だった。ゴールドマン・サックス・グループが、政府による医療保険改革は業界の収益性に打撃を与えるとの見方を示したのが背景。鉄鋼メーカーのUSスチールはじめ商品株は下落。金属相場の値下がりが売り材料となった。

一方、銀行株には上昇組が多かった。米政府が、銀行9行の公的支援返済を容認する可能性があるとCNBCが報じた為。また、今週号バロンズ紙に強気記事が掲載されたホーム・デポ(HD)株が買われた。更に、食品大手ゼネラル・ミルズ(GIS)が通期ベース予想EPS(一部項目を除く)ガイダンスを引き上げたことから急伸。3.87ドルから3.89ドルになると言う。当初ガイダンスより数セント引き上げられた。

ダウ指数は前日比1.36ドル高の8,764.49ドル、S&P500指数は同0.95ポイント安の939.14、ナスダック指数は同7.02ポイント安い1,842.40で引けた。

引け後、テキサス・インスツルメンツがガイダンスを引き上げたことから、OTC取引で上昇している。

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(米国株相場にとっての強材料)
1.CNBCは8日、問題債権購入計画(TARP)を通して米銀に注入された公的資金のうち、米財務省が当初推計していた250億ドルを上回る金額が返済される可能性があると報じた。また、米政府、銀行9行の公的支援返済を容認する可能性もあるとした。

2.オバマ大統領は8日、今後3か月間に公共事業を集中発注し、60万人以上の雇用を創出すると発表。 国立公園や空港、高速道路の改良工事のほか、下水道の新規整備などを実施。 2月に成立した7870億ドルの景気対策で2年間に350万人の雇用創出を見込んでいるが、雇用創出効果に疑問が出ている為。

3.米最大の公的年金基金であるカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)は、プライベートエクイティやベンチャーキャピタル向け投資を最大40%拡大する計画だ。カルパースは総額1690億ドルの投資資金のうち、PEおよびベンチャーキャピタルへの投資配分をこれまでの10%から14%に引き上げる計画で、来週の取締役会で投票を実施し、最終的に決定する。

現在のカルパースの分散投資は株式・ヘッジファンドに56%、債券に10%、不動産に10%、インフレ連動債に5%、PEに10%を目標としているが、新たな投資配分では、株式・ヘッジファンドに49%、債券に20%、PEに14%、さらに初めて現金資産に2%を振り向ける計画だという。

4.ゼネラル・ミルズ(GIS)
食品大手が通期ベース予想EPS(一部項目を除く)ガイダンスを引き上げた。3.87ドルから3.89ドルになると言う。当初ガイダンスより数セント引き上げられた。


(米国株相場にとっての弱材料)
1.マクドナルド(MCD)
ファストフード世界最大手のマクドナルドが8日発表した5月の既存店売上高は前年同月比5.1%増加と、市場予想(4.4%増)を上回った。全米規模のコーヒー飲料の広告キャンペーンが奏功した。

   (内訳)
米既存店売上高は2.8%増。欧州は7.6%、アジア・中東アフリカは6.4%のプラスだった。予想は、米国が同3.8%増加、欧州が4.4%増、アジア・中東アフリカは同5.2%増加だった。米国の既存店売上げが予想を下回ったことから、株価は下落。

2.ゼネラル・モーターズ(GM)
破産法下で経営再建を目指しているゼネラル・モーターズは8日、中型トラック事業からの撤退を決めたと発表。同社の主力ブランド「シボレー」と「GMC」それぞれの車種の中型トラックの生産を7月末までにやめるという。

3.格付け会社スタンダード・アンド・プアーズは8日 、アイルランド国債の長期信用格付けを「ダブルAプラス」から「ダブルA」に引き下げた。見通しはさらに格下げの可能性がある「ネガティブ」とした。政府による銀行支援の規模が3月時点に比べて著しく増加、中期的な政府の債務が増える見通しとなったため、3月30日の格下げから2カ月余りで再格下げとした。

4.クエスト・コミュニケーションズ・インターナショナル(Q)
米通信会社のクエスト・コミュニケーションズ・インターナショナルは長距離通信網の入札プロセスを終えた結果、同資産売却を断念した。

5.米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)で世界最大の債券ファンド「PIMCOトータル・リターン・ファンド」を運用するビル・グロス氏は5月に、同ファンドの保有資産中の住宅ローン証券の比率を2008年6月以来、1年ぶりの低水準としたと言う。グロス氏は2月に、住宅ローン証券の保有を86%まで高めていた。米政府が5000億ドル相当の住宅ローン担保証券(MBS)購入計画を発表したことを受け、政府と手を携えることを投資家に勧めていた。

6.国際通貨基金(IMF)のストロスカーン専務理事は8日、世界的なリセッション終息の後には急速なインフレ進行という現実的なリスクが待ち構えていると語った。また、景気回復は恐らく来年になるだろうが、景気回復の実現はあくまでも金融機関がいかにバランスシートから不良債権を取り除けるかにかかっていると強調。

7.米企業が過去最大規模の株式発行や1938年以来最大の減配を実施するなか、利益が希薄化する恐れが出ている。銀行大手ウェルズ・ファーゴなど150を超える米企業が今四半期(4-6月)に合計822億ドルを調達した。これは過去最高だった2000年のハイテクバブルのピーク時を上回るペース。またデータによると、株式発行と配当削減が相まって、年間の株式リターン(投資収益率)は最大で4.1%低下する見通しだ。

8.米連邦準備制度理事会(FRB)のタルーロ理事は8日、以下の通り発言。

   (発言要旨)
★景気は年内に回復し始めるかもしれないが、うんざりするほど遅いペースになる可能性がある。
★最近のデータから判断すると、経済活動は底に近づいており、年内に再び成長し始めるとの希望が持てる。
★金融市場については緊張状態にある様子が引き続き見られる。政府の債務保証や流動性供給のみで動いている市場もある。現実に即して可能な限り早期に金融業界の包括的な規制改革に取り組む必要がある。
★具体的には、リスク発見の責務を負う包括的な規制当局を設置し、その当局の主導の下で金融システムの広範かつシステミックな見直しを進めることが大切だ。

9.米上院の共和党議員9人はオバマ大統領に書簡を送り、ヘルスケア改革の一環として、政府が運営する医療保険制度などに反対する姿勢を表明。新たな政府プログラムを創設すれば、長期的な財政見通しが悪化するだけでなく、民間の医療制度を選び、満足している国民に悪影響を与えると指摘した。

10.欧州中央銀行(ECB)の政策委員会メンバー、ウェーバー独連銀総裁は8日、景気全体が回復を示したら、ユーロシステムはできるだけ早急に過剰流動性を吸収するだろうと語った。一部の通貨地域で、過度の拡張的な金融政策を長期間にわたって実施したことが、世界金融危機を招いた要因の一つだろう。われわれは早い段階から物価安定性に対する潜在リスクに対応し、同時に今後の金融危機を防ぐために尽力すると語った。

11.AT&T(T)
ゴールドマン・サックスが同社株を“アメリカン・コンビクション・バイ・リスト”から除外した。ワイヤレス業界の競争激化と、3月以来の同社株のアンダー・パフォーマンスが背景。

12.ベリサイン(VRSN)
ドメイン認証局の株価が急落。カウエンがネガティブ・コメント。6月5日の裁判所判決により、同社のドメイン認証料金引き上げ能力に疑義が生じていると言う。

13.デュポン(DD)
バンカメが同社株の投資判断を“中立”から“アンダー・パフォーム”に引き下げた。次年度の利益の伸びがフラットの見通しに加え、株価が既に高いと言う。

14.クライスラーの資産売却を米連邦最高裁が差し止め。


個別銘柄編

投資判断変更

ナイキ(NKE)
●ロバート・ベアードが、ナイキの投資判断を、“中立”から“アウトパフォーム”に引き上げた。また、株価の目標価格を、これまでの61ドルから69ドルへ上方修正し 
た。

●BB&Tキャピタルマーケッツが、ナイキの投資判断を“買い”で、新規格付けした。


個別銘柄編
 
価格目標変更

ゴールドマン・サックス(GS)
バークレイズキャピタルが、ゴールドマン・サックスの投資判断を、“イコールウェイト”で据え置いた。また、株価の目標価格を、これまでの105ドルから165ドルで上方修正した。

ビザ(V)
スティフェル・ニコラスが、ビザの投資判断を、“買い”で据え置いた。また、株価の目標価格を、これまでの74ドルから78ドルへ上方修正した。

アメリカン・エキスプレス(AXP)
クレディスイスが、アメリカン・エキスプレスの投資判断を、“アンダーパフォーム”で据え置いた。また、株価の目標価格を、17ドルから20ドルへ上方修正した。

ジョンソン・アンド・ジョンソン(JNJ)
クレディスイスが、ジョンソン・アンド・ジョンソンの投資判断を、“中立”で据え置いた。また、株価の目標価格を、55ドルから57ドルへ上方修正した。



=以上=