ストイック

  米大リーグ、シアトルマリナーズのイチロー選手の年間200安打記録が10年連続で途切れました。日本では大きくニュースで取り上げられましたが、米国ではあまり注目されないというか、地元シアトル以外では、ほぼ黙殺されたような状態のようです。
  2004年に米大リーグ記録を84年ぶりに塗り替える262安打をマークした時も、日本では連日ニュースでカウント・ダウンが行われ、お祭り騒ぎでしたが、伝説的な記録を打ち立てたにもかかわらず、米国内では、それなりに大きなニュースにはなったものの、冷淡な反応でした。
  大リーグは力自慢のバッター、剛腕のピッチャーが集まり、今でもあこがれの的だし、レベルも高く、実力社会なのですが、外国人選手の活躍をあまり喜びませんよね。特に記録を更新されることについてはアレルギーがあるようです。まあ、日本でも王貞治氏の国内年間本塁打記録の55本を上回ろうとすると、足を引っ張ろうとする動きがあるので、こうした傾向を非難することはできませんが。
  でも、野球のワールド・カップではっきりしたことですが、米国自体はそれほど野球のレベルが高いというわけではない。英国のウィンブルドン大会同様、大リーグでも活躍するのは、米国人ではなく、ガイジンなんですよね。ハングリー精神を持った、ベネズエラやドミニカ、キューバといった中米からきた選手がかなり幅を利かせているし、最近はやはり繊細なコントロールを武器に投手を中心に日本、韓国、台湾人選手の活躍も目覚ましいです。
  イチロー選手に関しては、国籍、人種的に嫌悪感を持たれている部分以外に、ストイック過ぎて、優等生的な部分が、親しまれないということもあるでしょう。米国人の好感度も、松井秀喜選手の方がイチロー選手よりも高い。選手としての成績や存在感は圧倒的にイチロー選手の方が勝っているにもかかわらずです。
  私自身は、イチロー選手のひたむきな姿勢を全面的に支持しますね。身体能力や動体視力が飛び抜けていて、努力しなくてもある程度の成績は残せるはずなのに、現状に満足せず、常に己の技を磨き続ける、あり方はとてもまねできないし、尊敬の念をを通り越しますね。(中日の落合博満監督はイチロー選手よりもむしろ広島の前田智徳選手を“天才”だと評価していますが・・・)
  プロとして、野球に生きている以上、徹底的に技を極めるのが、あるべき基本姿勢だと思います。でも、それができている選手は日本だけでなく、世界を見回してもそれほどいませんね。東北楽天イーグルスの野村克也名誉監督が「本当に野球が好きな選手はおらんな・・・」とぼやくのもよくわかります。
  弱者がどうすれば強者を倒せるか、必死になって追求し続け、日本にデータ重視の野球を定着させた野村監督ならではの言葉でしょう。プロ選手も人間だし、(巨人や大リーグでプレーしたいという)名誉や金に目がくらむのも分かりますが、「何のために野球をしているのか」「自分は何になりたいのか」という、もっとしっかりした目的意識を持ってプレーしてほしいな、という気持ちはファンとしてあります。単に野球がうまいだけではプロにはなれないと思うし、野球が好きだという思いがあるからこそ続けてこられたのだと思うからです。
  何か一つ、これだけは極めたいというものを持ちたいですね。私の場合は、一応、兼業ではありますが、それはトレードだし、経済分析です。今では人生の一部になってしまっています。だから相場というものが存在する限り、どうやって勝ち残っていくかを、ストイックに追求したい。
  先日、仕事上でお世話になっている人から飲みに誘われたのですが、FOMCの直前で、マーケットから目が離せないし、ここで飲んでしまうと、この半年積み重ねてきたダイエットの努力も、つまずいてしまうので、泣く泣くことわってしまいました。他人には大したことではないと思われても、自分にとっては瀬戸際の選択で、それに報いるためにも、結果を出して応えと思うし、逆にそれがいいプレッシャーにもなります。ストイックに道を極めるというのは、こういうことでもあるのだなぁと、妙に納得してしまいました。
  来季、イチロー選手には、私たちをせひあっと言わせるような活躍を見せてほしいし、それを刺激にトレードの技術を高めることができればと思います。
  あっ! ちなみに、阪神タイガーズの川藤幸三さんはプロ通算18年で211安打。イチロー選手の一年分です。こういう生き方もあるんですね(笑)。