テクニカルの教祖

  2月に東京都内で個人投資家を対象にした投資に関するシンポジウムみたいなのが開かれて、その目玉があの「ボリンジャー・バンド」を考案した、ジョン・ボリンジャーのセミナーでした。参加費用は6万円とのことで、どれだけの人が集まったのか知りませんが、それだけの費用を払ってでも見たいという人がいるのでしょう。投資界では超有名な人なので、2~3千円なら私も参加してみたいですが、6万円は高すぎます。
  一時期、ボリンジャー・バンドについて研究したことはありますが、結論としては「クソ」です。使えません。いまどき、ボリンジャーバンドなんて使っている人いるんでしょうかね? 
  確かに一時期はそこそこ機能した時期もありました。分足レベルの移動平均線と同じです。以前は、適度にボラティリティーがあったので、時間調整や値幅調整のために、それなりの値幅を行ったり来たりするひつよがあり、移動平均線やボリンジャー・バンドが意識された時期がありました。日中足のみならず、日足、週足レベルでもです。
  今は相場に流入する資金も参加者も限られているので、ゆったりとした動きはなくなりました。動かないときは狭い値幅で停滞するし、動くときは一気にそれなりのレベルまで上下します。だから、ボリンジャー・バンドの何を根拠にトレードしようというのか?
  だから、ボリンジャー・バンドにいろいろとオプションをつけて、トレードの根拠を探すのだそうです。曰く、ボリンジャーバンドに「ボリンジャーバー」「スクイーズ/ポージ」「BBインパルス」「BBモメンタム」「BBトレンド」「バンド幅デルタチャート」「HIP LOP」を統合することで、「勝率を高めタイミングロスを最小化した効率的なトレーディングが可能となる」のだそうです。
  それぞれ何を意味する指標、ツールか私には全く分かりません。一つ言えるのは、いろいろと屁理屈をこねないとボリンジャー・バンドというものは使い物にならないということです。要するに「役立たず」ということでしょう。
  こんなものにすがらなければトレードができないなんて、日本や世界の投資家ってよほどのお馬鹿さんですよね。6万円も払って話を聞きたい人たちですから、資金を持て余しているんでしょうけど、はっきり言って、カジノやパチンコのレベルですよ。
  もう少しシンプルで、説得力のあるシステムを示さないと、投資の際の判断材料としては、はなはだ心もとないですが、システム・トレードの人と同様、やたらと小難しいことを並べ立てることで、悦に入ってしまうんでしょうね。トレーダーの目的はただ一つ、できるだけ安全、確実に稼ぐことにあるのに、これでは完全に目的と手段を取り違えています。
  それにしてもこのボリンジャーさんという人も商売がうまいですよね。ボリンジャー・バンドだけでは不十分だからといって、次々と新しい指標を生み出して、そのたびに高い金を取って講演をしたり、ノウハウを教えたり、本を出したりすれば、息の長いビジネスになります。家電メーカーが部品やオプションで利幅を稼いだり、マクドナルドがハンバーガーは単独では赤字でもポテトで回収したりするのと同じですよね。
  誰か、本人の目の前ではっきり「インチキ」「詐欺師」と言ってやる人はいないものでしょうか? それとももしかすると、オプションをフル装備すれば実はものすごい力を発揮するツールだったりして(笑)。