ハイテク、ローテク

  2012年は波乱が予想される1年。金融恐慌に向かうのか、欧米が悪あがきをして、イランあるいは東アジアなど世界のどこかで戦争を起こして、景気を持ち上げようとして、混乱を引き起こそうとするのか、まだ、信念が始まったばかりで何が起きるか分かりませんが、覚悟しておいた方がいいでしょう。
  リーマン・ショックの時は、背筋がぞくっとするくらい、経済状況が一変し、一気にどん底に突き落とされたような感じがありましたが、今度、金融恐慌が起きれば一体、どのくらいのインパクトがあるのか、最悪の事態を想定はしていますが計り知れません。
  リーマン・ショックを経験して分かったのは、どんな状況にあれ、人々は衣食住が必要であるということ。着るものを着て、食べる物を食べて、住む所に住まないと人間は生きていけませんし、社会生活も営めません。だから、衣食住にかかわる分野は、それなりに売り上げや利益は落ち込んだものの、手堅く推移した印象があります。
  世界経済で、衣食住にかかわる部分は、オールドエコノミーに属し、株式市場なんかでも、金融資本と結託してライバルを駆逐し、マーケットシェア拡大を目指す、一部の企業を除いては、あまり注目されないセクターです。
  ただ、いくら時代が変わっても、高度情報化などで社会が進化しても、人間の生活に密着している分野というのは、時代や世の中の変化に合わせて形を変えることはあっても、決して欠くことはできません。
  ハイテク、ハイテクと言われながらも、日本の家電メーカーなんかは、テレビやスマートフォンなど注目のセクターでは精彩を欠き、冷蔵庫、洗濯機をはじめ、再び生活家電に注力しつつあります。やはり生活に密着した分野が手堅いということに気付いたのでしょうね。
  リーマン前までは、関西の(現在、落ちぶれつつある)某メーカーは、「白物家電(事業)はもういらない」なんて豪語する幹部がいたんですよ。日本企業の中枢にいる人たちなんて、所詮、そんなレベルなんですよ。偉そうに新卒採用なんかで「最近の大学生は・・・」なんて言って、採用予定数を下回っても、厳選採用する方向ですが、こういう人たちこそ真っ先にリストラされるべき不要な人材ですね。
  日本のハイテク(とされる)メーカーは、世界的な工業製品の過剰生産に加えて、グローバル化に完全に出遅れたこと、さらに円高が追い打ちをかけて、ピンチですが、いずれ今は調子のいい海外メーカーも、似たような状況に直面するでしょう。
  身の回りを見渡して、ハイテクを必要とするものってそんなにあるでしょうか? パソコンにしてもスマホにしても、中国の中小企業でも簡単に作れるくらい、すでにローテクと化していますし、テレビやブルーレイディスクレコーダーなんかにしても同様です。ハイテク、ハイテクといってもトータルでみて、儲かる分野ではありませんからね。半導体なんかが好例です。
  自動車はハイブリッド車なんかは、まだ多少ハイテク感がありますが、街乗りで使うタイプの乗用車なんかは、電気自動車が進出するでしょうし、そうなると、構造が簡素になるので、いずれ家電と同様、より大量生産しやすくなり、価格下落が起こり、ローテク化(いわゆるコモディティ化ですかね)するでしょうね。
  新幹線だってそうですよね。私たちは日本人が自力で作り上げた、素晴らしい技術だと思い込んでいたわけですが、パクリとはいえ、中国なんかが簡単につくれるようになってしまった。原発やロケットにしても同様、多少構造は複雑だし、過酷な環境に耐えられる素材なんかが要求される以外は、その気になれば、発展途上国でもつくれるでしょう。北朝鮮だって一応、原子炉やミサイルを持っているわけですから。
  今やその気になれば、素人でも何だって作れる時代です。だからちょっと先端を進んでいる技術があるからといって、アドバンテージが長続きするとは限りません。また、どんな素晴らしい技術でも人の役に立たなければ、売れなければ意味がないのです。
  これからの時代は、今までローテクとして、あまり見向きもされなかった分野が再び見直されることになるでしょう。
  ローテク、ローテクといっても、日本の白物家電なんかは、ハイテクの要素が組み込まれていて非常に品質が高いですし、衣食住なんかもそうですね。衣料品だって、デザイン性、機能性に優れた、日本のメーカーがプロデュースした商品が世界を席巻するポテンシャルを秘めています。食の分野も日本の食は非常に手が込んでいて、細かいところまで行き届いているので、外食の海外進出は面白いですし、それをささえる農業も優秀です。
  住宅なんかも、バカみたいに広い家に住む、米国人からは見下されたりするのですが、奴らはただ単に田舎に住んでいるからであり、住宅本体の性能は、省エネ性をはじめ、極めて高いですね。
  だから、ローテクとされる分野であっても、ハイテクをうまく組み込めば、多くの人が欲しがる、広く受け入れられる商品をつくることが可能だと思います。
  これからは、ハイテクであれローテクであれ、いかに技術を使いこなすか、技術を組み込んで優れたものをつくり出せるか、アイデア勝負なんだろうと思います。技術を結集すれば、砂漠をオアシスに変えられる時代です。無理と思われていたことに挑戦するのもいいかもしれませんね。
  工夫とか、創造は日本人が得意とする分野であり、いろいろと広がる可能性があります。大変な時代に突入することになりますが、足元をしっかり見つめて、次につなげる努力も必要です。結構、明るい未来を描けると思いますが。