バビロン・システム



  先日、映画「インサイド・ジョブ」を紹介しました。現在の金融システムは、まさにponzi scheme=ねずみ講そのものであるという鋭い視点から描かれた作品ですが、キューバ革命の闘士チェ・ゲバラや、レゲエの神様ボブ・マーリーは半世紀以上も前から、強い者が弱い者から搾取する仕組みを見破り、これが“Babylon System”だと訴え続けていたのです。
  ボブ・マーリーの「Babylon System」という曲は「No Woman No Cry」、「I Shot the Sheriff」、「One Love」といった代表的作品と比べるとマイナーですが、彼の思想を体現した、名曲中の名曲で、体制を支配する側にとっては、非常に都合の悪い、刺激的な音楽です。
  歌詞には、「バビロン・システムは吸血鬼、子供や苦しんでいる人の血を吸って、教会や大学を建てる。人々をだまし続けながら・・・」(拙訳)と、ものすごい内容が含まれ、「子供たちに真実を教えよ」が曲のクライマックスです。
  資本主義は、持てる者と持たざる者の間に大きな格差や不公平を生みだしました(そしてそれは現在進行形であります)が、共産主義や社会民主主義は、カネやモノではなく、たとえば共産党書記長といった地位や権威、権力を持つか持たないかで人が差別されるようになりました。
  また、ボブ・マーリーが訴え続けた、「アフリカ解放」は実現されたものの、逆に貧困や独裁、内戦を誘引し、苦しむ人々を多数生みだした側面もあります。
  ある人が「資本主義と共産主義のどちらを選ぶかは、ヤクザの親分につくか貧乏人のリーダーのごろつきにつくかの違いだ」という名言をはきましたが、私たちは、資本主義的な考え方と、共産主義的な考え方の間で揺れているのだろうと思います。今の資本主義は明らかにおかしいと思う一方で、陰気くさい共産主義を選ぶのはどんなものか。
  ボブ・マーリーは人間の解放を求め、“We are what we are”(おれたちは自分らしくいたいだけなんだ)と歌いましたが、人よりいい生活をしたい、いい地位を得たい、お金がほしいという、あさましい考え方をするのもやはり私たち人間なわけです。
  求められるのは、やはりバランスでしょうか。ボブ・マーリーの曲を聴くと、彼はリバタリアン的な考え方を持っているんだなという気もしますね。