ピーク・アウト、底打ち

  常々、同じようなことを繰り返し述べていますが、世界経済は一部の人たちの都合で動かされている部分が非常に大きく、それに伴い、金融市場も動いています。
  欧米経済が瀕死の状態であることには変わりありませんが、追加金融緩和をすることで何とか命をつなぎ、あわよくば生き返りたいという思惑が顕著に見え隠れするようになりました。私なんかはとっとと欧米をつぶして、新しい世界をつくり直せばいいじゃないかと思っていますが、何しろ500年にわたって、いろいろと汚い手段の限りを尽くして世界を支配してきた人たちですから、そうやすやすと主導権や利権を手放したくはないということでしょう。
  こうした事情とは別に、ごくごく単純な発想ですが、世の中の物事は大体、常に一つの方向に向かっているわけではなく、ときには揺り戻しなんかがあるわけです。だから、大きな流れとしては衰退、没落の方向に向かってはいるのだけれども、生きている限りは、生存本能を発揮して、その流れに反発することもあるのです。
  1ドル=70円台、1ユーロ=100円割れとか、日経平均8000円台というのは、これまでの歴史的な経緯からすると見慣れない、明らかに“異常”(もちろん欧米経済の実態を考えるとそうとも言えないのですが)であり、いったん戻りを試してみようじゃないかという動きがあっても決して不自然ではありません。
  だから、一度くらいは、一つの流れに終止符を打ち、ピーク・アウトあるいは底打ちして、別の流れに変わるということもあっていいのではないでしょうか。バブルはいつか弾けるし、どんな大恐慌だっていつかは落ち着くでしょうし、強い者がいつも強いとは限らないし、しぶとく生き続けていれば弱い者、負け続けている者だって一度くらいはチャンスは訪れます。
  前に紹介しましたが、年初の元米国務長官のキッシンジャー博士の予言で、「円高は続かない」「ユーロは危機を脱する」旨の発言があり、半信半疑ながらも、「もしかすると、しばらくは株安、対円での欧米通貨安の流れは止まるのかな」と感じました。
  ただ、ご承知の通り、今年の年初の段階では、欧米の金融情勢は完全に手詰まりの状態で、私は年内に「深刻な(最悪の)事態に陥る」と予想していたので、完全に読みとは逆の流れになってしまい、先物、ドルのロングの取り組みには出遅れています。
  現在は、破竹の勢いの韓国の電機メーカーで、日本のエルピーダメモリが破綻したときは、「韓国が日本勢に完勝した」みたいな、韓国内ではお祭り騒ぎになったようですが、あれだって「韓国バブル」もそろそろピーク・アウトなのかなというサインかもしれません。サムスン電子やハイニックス半導体の株価が上昇したようですが、最後の売り場であった可能性もあります。いつまでも勢いが続くわけではないでしょうからね。
  そもそも、韓国が得意なテレビや半導体は、事業としては明るい展望があるわけではありません。生産能力が過剰なために価格がどんどん下がり、研究開発費の回収がどんどん厳しくなっているし、テレビにしてもパソコンにしても消費者に必要とされるスペックはそろそろ飽和点に達していて、よほど新しいコンセプトで臨まないと、付加価値を高められるような方向性を見いだしにくいのです。
  それに、台湾と組んだ中国の勢いはすさまじく、しかも巨大市場を抱えているので、テレビ、パソコン、スマートフォンから家電製品まで、ボリュームゾーンはいずれ、中国の電機メーカーが世界を席巻することでしょう。そうなると、今の日本の電機メーカー以上に韓国メーカーは苦しむのではないでしょうか。
  韓国を実質的に支配している米国も、次の世界帝国である中国も、韓国の独走を野放しにするほど、甘くはないでしょう。日本もこれまでさんざんいじめられ、痛めつけられてきました。
  日本だっていつまでもやられっぱなしというわけにはいかないでしょうし、付加価値の高い分野を中心に、売れる物づくりや、サービス業なんかで今後の飛躍が見込めます。そうなると円安傾向が追い風になるだろうし、円高が長く続いたことで企業の体質は相当引き締まっているので、いままで萎縮していた分、反発力は強いでしょうね。
  海外に出ると中国人や韓国人の活動が目立ちますが、彼らはカネでしか動きませんが、日本人はカネを度外視し、自分の理想を追求する人も多いので、一目置かれ、信頼を勝ち取って、長期的にビジネスをするとしたら、日本人の方が商売上手だったりもします。そういう日本の良いところが見直されつつありますね。
  プロ野球の近鉄バファローズは日本一になれなかった球団として知られますが、1989年の日本シリーズで巨人と対戦し、初戦から3連勝で王手としました。勢いがピークに達したところで、先発の一角の加藤哲郎投手が「シーズンの方がしんどかった」「打たれそうな気がしなかったので大したことなかった」(報道では加藤投手が「巨人がパリーグ最下位のロッテより弱い」と発言したとゆがめて伝えられました)と巨人を見下す発言をした後、4連敗し、日本一を逃すという悲劇がありました。
  大体、ビッグ・マウスが飛び出すときは、そろそろ頂点から転落するかなぁというタイミングです。韓国の状況なんかまさにそうですよね。バブル絶頂期の日本も「米国からもう学ぶことはない」「米国をすべて買い尽くしてやる」といった強気発言の連発でした。逆に金融市場などでは、「もうだめだ底割れする」とみんなが思ったところが、陰の極だったりします。
  大体、物事は行ったり来たりしながら動くものです。良いときもあれば悪いときもある。欧米の連中がのさばるのは正直、不快で仕方ないのですが、しばらくは上昇気流にお付き合いして、また、流れが変わるのを待つことにしましょう。