ラーメン道 残念な店主 神田編1

  ラーメンの好みは本当に人それぞれで、私の場合は、「煮干し」「担々麺」をいうワードに敏感に反応します。冬場は「味噌」ですかね。
  今回は「担々麺」に反応したわけですが、このワードとは奇妙な出逢いでした。ツイッターを何気なく見ていると、「食べログ」での客の評価が低かったことに逆ギレした、担々麺屋の店主がいるという、リツイートがあり、興味がわきました。


  冷やかし半分とやじうま精神で訪れた、その店は、神田・小川町にある「辣椒漢」(らしょうはん)。店主の逆切れはブログ(http://lashowhan.exblog.jp/14462803/)をご参照ください。記事の表題「品悪くてすみません!」の通り、人柄がにじみ出るような文章です(笑)。客商売としては失格でしょうね。間違いなく。担々麺にかける情熱があるなら、文章で客を納得させる努力をしてほしいと思います。


  特に気になるのは「普段何食ってんの?あなたそんなにご立派な人なの?何を根拠に言ってんの?ちゃんと四川省まで食いに行った?」のくだりですね。
  私は辛い物好きで、担々麺好きですが、さすがに四川省にまでは食べに行ったことはありません。そもそも、今日本で流行っている担々麺は日本人向けにアレンジしたものです。ラーメンだってそうですよね。中国で庶民が食べていたものを、日本人が独自の味付けをして売り出したら、国民食になってしまった。今ではそれを中国が逆輸入しているわけです。ラーメン好きは中国に行って本場の味を確かめてからでないと、ラーメンについて語る資格はないのでしょうか? もちろん、そうした上でラーメンを語る方がより説得力は増すでしょうけれど。
  人の味覚なんて、育ってきた環境や、体質、その時の健康状態に左右されるものなので、100%好まれる食べ物なんてありません。
  でも、できる限り多くの人に味を伝えたい、説得したい、納得してもらいたいというのが料理人、食べ物を商売としている人の理想的な姿だと私は考えます。
  ブログでは「本当、今の世の中腐ってるよ!日本人の美徳は一体どこに行ったんだよ!」と書いてありますが、そっくり、そのまま返したいですね。ダメ元でも誠心誠意対応するのが、日本の商売人の心意気ではないでしょうか? 悔しい思いを押し殺して、自分をさらに高めるのが武士道にも通じる気高さではないでしょうかね、店主さん?


  店のたたずまいは、担々麺で勝負していくという、力強さが感じられました。店主はスキンヘッドの海老蔵さん風の人でした。真面目な人だという印象ですね。でも、ブログでの発言で、どうしても先入観を持ってしまいます。余計なことを言わなければ、間違いなく“名店”の評価につながっていると思うのですが、画竜点睛を欠き、残念。
  本場の担々麺は汁なしなのですが、私は赤坂・四川飯店がルーツの日本風の担々麺が好きなので、日式担々麺(850円)を注文。
  笑ってしまったのが、私より先に入店した常連と思われる人との会話で、例のブログの話題が。問題の食べログの評価は、汁なし担々麺に対するもので、辛さを問題にしているのですが、店主曰く「この辛さは普通だと思うんですけどねぇ」。やはり気になるんでしょうねぇ。
  さて、私がたのんだ汁ありの日本風担々麺ですが、それぞれの素材の味に深みがあって、調和が取れていておいしかったです。しかも店主がこだわっているだけあって、かなりレベルの高い方だと思います。
  オーソドックスなスタイルで、汁あり担々麺好きな人が求める味に完全にマッチしていると思います。私はいつも担々麺を食べるときはライスを頼むのですが、メニューにライス(100円、半ライスは50円)もばっちり用意されており、ご飯が進む味でした。この辺は担々麺好きの心をつかむ要素ですね。
  辛さを気にしているようですが、私の場合は、むしろもう少し、抜けるような辛さを際立たせてもいいなと思いますね。それとほのかな酸味をきかせるのもいいかもしれません。味にアクセントがつき、より引き付けると思います。
  ラーメンのおいしい店は各地で増殖していますが、担々麺でこのレベルの店は、ありそうでなかなかないので、身近にあるとうれしいですね。もっともっと広まってほしいです。
  ただ、あえて苦言を呈するなら、店主がブログで威張り散らすほど、他店の追随を許さないようなものかなという気はします。汁あり、汁なしを含めて、飛び抜けておいしい店はほかに何店もあります。これも人それぞれの好みによるとは思いますが、見ていて気の毒になるくらいストイックに謙虚に味に磨きをかけている店主もおられます。


  商売人とはいえ、店主だって人間。言いたいことをすべてこらえろというのは酷かもしれません。ただ、ラーメンや担々麺に対して、客は非日常や幻想をいだいています。だから、本当においしいと感じられるときの満足感、達成感は計り知れないし、逆に期待が外れると、その分落胆は大きい。そういう心理をぜひ理解してほしいですね。
  どんなビジネス、商売でもそうですが、究極的には人と人とのコミュニケーションが大事ですよね。今回の場合は、店主と客の心が通じ合えなかったのが、騒動の原因でしょう。それを逆ギレして、口汚くののしるというのはやはりどう考えても言語道断です。商売人の道に反する行為だと思います。
  問題の発端となった食べログの星2つ(最高は星5つ)のコメントを掲載しておきます。別にクレーマーでもなく、こんな感想を持つ人もいるだろうなという感じです。そこまで逆ギレするのは、よほど腹に据えかねるところがあるのか、店主の気性のせいなのか、それとも、健康あるいは精神面に問題があるのか。
  公正を期すため、近い将来、汁なしの担々麺も食してみたいと思います。その上でもう一度、本件について論じたいと思います。
  現時点では、この程度で、ここまでもめるなんて、ちょっとおかしいんじゃない? というのが率直な感想です。


(問題となった食べログの口コミ・評価)
  この店のある本郷通りの美土代町交差点辺りは、元々の「神田」(古神田)に当たる地域である。かんだ山(駿河台)と神田橋の間であることからして、その証明になる。(江戸の大火で集団移転したのが今の神田駅周辺) 今では、すっかりビル街になってしまって、面影は残っていないが。
 閑話休題。担々麺の専門店とのこととて、正宗担々麺(汁なし)と日式担々麺(汁あり)の2種類が基本。汁なしの方を食す。100円プラスして、酒粕漬けの味付玉子も。会計950円。食べる前に、よく混ぜるとのことだが、なんとしても辛い。唐辛子ではなく、中国山椒のしびれるような辛さ。おそらくピーナッツも大量に入っているようなのだが、いかんせん、辛さが先にたって、その風味を味わうところには至らなかった。汁ありだと、また別の評価になったのかもしれないので、暫定評価として欲しい。
 店内は、カウンター席のみ。オレンジ色の壁は、なんだかカレー屋っぽい印象を受ける。(気のせい?) トイレは、ビル地下1階に店専用のがあるが、一度、ビルの外に出てから入りなおすことになるので、いささか不便かな。
(以上、転載終了)