冷徹に

  個人投資家としてマーケットに関わって、もう10年以上になります。何とかこれまで生き残ってこれたのは、常に冷徹な目を捨てないようにしてきたからだと思っています。感情を排してトレードするのはとても難しいことだし、今でも、感情の起伏に駆られて誤った判断、トレードをすることがままありますが、これを克服しない限り、勝ちを積み重ねることは難しいでしょう。
  株式、先物をはじめ、最近ではFXや商品先物など、さまざまな金融取引が可能ですが、本格的に広まったのは、2005年ごろでしょうかね。私はそれよりもやや早い段階からトレードに関心を持ちました。
  この6月からブログを再開して思ったのですが、こうした金融取引に関心を持つ個人投資家はかなり減ったのではないでしょうかね。人数はそれほど減っていないにしても、取引に使える資金は相当減っているのではないでしょうか。それが、相場全体の活力のなさにもつながっているよういに感じます。
  まあ、2007年に18000台だった、日経平均株価が一時7000近くまで下げ、現在も低位で推移しているわけですから、それだけ市場から資金が吹き飛んだわけで、エネルギーが減衰するのは仕方がないと思います。
  株価指数は半減したわけですから、平均的に考えて、投資家も自己資金を半分近く、あるいはそれ以上失っていることでしょう。
  バフェット流の長期投資という考え方もあるでしょうし、私は中国株など一部の資産は、あまり動かさないようにしていますが、今のご時世、どのようなセクターでも、安定した成長というのは考えづらく、バフェット氏の投資手法は高度成長期の、今となっては時代遅れの考えといえるでしょう。私のような者がいうのもおこがましいですが、投資の世界はそんなに甘くはないと思います。
  大手金融機関なども、こうしたマーケットの状況に鑑みて、短期取引を活発化されているでしょうから、一部の荒くれ者の仕掛け、罠、インチキを見極めながら、短期的な視点での投資がますます増えるでしょうし、わたしたちも、それに合わせて武装しなければなりません。
  こうなると、すべてのプレーヤーが、短期で利ザヤを稼ぐことに熱中するので、値動きがトリッキーになりますね。頻繁に相場の潮目が変わるので、それを的確に見極める必要があります。
  今まで見てきた中で、個人投資家がマーケットから退場するパターンで一番多いのが、「踏み上げ」です。6月から7月にかけて日経平均先物が10200まで上昇したときに、このブログのコメントに、わざわざ「7800を目指してショートに懸けています」みたいなことを寄せてくださった方もいました。
  もちろん、常々強調している通り、全体的な流れは、金融恐慌と常に背中合わせで、暴落の危険性を頭に入れておかないと、足をすくわれることになりかねないのですが、根拠がない限り、一方向に身をゆだねるのは極めて危険です。
  最近の8600台から9000台回復の動きもそうですね。かなりの上値抵抗があったわけですが、上向きのベクトルを抑え込むことはできず、結局、上昇するべきところまで上昇しています。
  確かに、相場を見ている限り、何となく下げそうだし、「下がったららいいな」みたいな気持ちになってしまうのですが、やはり、チャートや細かい値動き、板の食われ方、経済指標、政治の動きなど、さまざまな小さなヒントから、積み上げていって、投資判断をしなければなりません。
  私自身も、国家破綻状態にある米国のNYダウが、いまだこの期に及んでも、相対的に高い水準にあり、米国債も買われ、こんな国が幅を利かせていることに対して、歯がゆい思いですし、その米国に政治、経済面で日本が支配されることに対しては激しい憤りを感じます。
  ただ、だからと言って、安易に米国売りに走るわけにもいかない。どのタイミングで崩壊するのか、じっくりと待つわけです。もしかすると、明日崩壊するかもしれないし、永久にしないかもしれない。しかし、どこかでその兆候はあるわけで、慎重に読み解いていくしかない。
  それには日々の鍛錬が必要だし、その努力を惜しんで、安易に稼げると思うのであれば、その考えは大間違いです。逆に合理的に考えることで、感情を排することもできるでしょう。
  私は野球をはじめ、スポーツ観戦が好きで、よく見るようにしていますが、その一番の目的は、勝負勘を養うことにあります。
  どちらの戦力が格上で、どうなればどちらが勝つかということを分析するのは面白いです。もちろん、自分の考えた通りに試合が運ぶわけではないし、そうならないことの方が多いです。ただ、一試合一試合では予想は困難ですが、長期的にはチームの総合力が表れ、それが結果につながります。
  私が東京ヤクルトや東北楽天に関心を持っているのは、緻密なチーム作りやゲーム運びができる野村克也氏がチームの基礎を固めた球団だからです。もちろん、ヤクルトは野村氏がチームを離れてかなり時間がたち、かなりチームの風土は変わっているし、楽天はそもそもの基礎力が弱く、まだ、野村イズムが浸透しているとは言い難いので、私が考える理想の状態とは程遠いのですが、それでも、何か他チームとは違う魅力があります。
  ただ、その反面、感情面での愛着もありますね。東京に住んでいて、ヤクルトは非常に愛すべき球団だし、私は東北が好きでなので、東日本大震災という苦難を経た今、楽天を強く応援したくなる。
  そういうわけで、ヤクルトが連敗中で、非常に精神衛生上よろしくなく、悔しい思いをしているのですが、まあ、普段のゲームを見ていて、「こうなるだろうなぁ」という予想はついており、冷徹な視点を持っていれば、何とか耐えられます。内心おだやかではありませんが・・・。
  トレードもそれと同じで、熱い感情を持ちつつも、時にはそれを押し殺して、相場の指し示す方向に追従する必要があるし、基本的にはすべてはその作業に集約されるといっていいでしょう。