報道バイアス

  先日、日本と米国、中国、韓国の4カ国の高校生の留学に対する意識調査結果が発表されました。海外留学を希望する日本の高校生は46%で4カ国中最も低く、韓国(82%)が際立ち、中国(58%)、米国(53%)が続きました。
  この数字を受けて「日本の高校生が最低」「内向き志向」「諸外国の若者と比べて消極性が目立つ」みたいな論調がいっせいに起きたのですが、果たしてそうか?
  日本の高校生だって2人に1人ができるものならば留学したいという意識を持っていることの方が驚きますけどね。それだけ留学が身近になっているのです。10年、20年も前だったら、3人に1人とか4人に1人だったかもしれません。それにしても多くの若い人が海外志向なのです。
  それと背景事情を考える必要がありますね。米国、中国と比べて、それほど留学したいと考える比率は変わりません。韓国が突出しているのは、4カ国中で国自体が「最も貧しい」し、「韓国にとどまっても将来の展望が開けない」ということです。
  日本での韓流ブームを受けて、韓国の若者が一攫千金を狙って、東京の新大久保あたりに居つく構図と変わらないでしょうね。もう一度、強調しておきますが、韓国の若者は国自体が貧しいので、自分で海外に出て活路を開く以外に選択肢がないのです。だから、進出先の国の人たちとの間の軋轢や、成金に対するやっかみとか、軽蔑の目を感じながらも、旅芸人をやらなければ食っていけないのです。そこは冷徹に見るべきでしょう。
  中国もそういう部分はありますが、経済成長の余地を残しているし、わざわざ海外に出なくても、むしろ中国にいた方がビジネスチャンスが増えているので、留学を希望する比率は韓国と比べるとかなり低いということでしょう。昔みたいに蛇頭に大金をつかませて密入国し、故郷に送金するみたいな時代ではないのです。もちろん今でもそういう部分は残ってはいますが。
  この調査結果をみて、私は、日本人の海外志向が意外と強かったこと、そして中国が予想以上に内向きで、韓国はやっぱりな、ということを読み取りました。それと、米国人も意外と海外志向が強いですね。しかも留学先として日本が人気なのだそうで、私が米国で高校生をやっていたときは、「日本なんて」と見下されていたのですが、隔世の感があります。
  新聞やテレビでの取り上げられ方がいかに表層的で、しかもそろいもそろって画一的か。横並びというのはいくらなんでもひどいですよね。しかもセンセーショナルに記事を書いた方が目を引き、読んでもらいやすいというのもあるのでしょうけど、自分たちの同胞である高校生をバッシングするような書き方をするのはどうなんでしょうね。
  今の大人たちは高校生より立派なのでしょうか? 積極的に海外に進出して、日本人の存在感を高めたのでしょうか?
  米国からの理不尽な要求に屈して金を搾り取られ、技術立国だとふんぞり返っていたら韓国にあっさりと追い抜かれ、中国を馬鹿にしていたら、いつの間にか世界の経済成長の波から取り残されていた。こんな日本をつくったのは記事を書いたり、記事を読んで「今の若者は」とか言っている大人たちではないでしょうかね。
  自分のことを棚に上げて、若者を不当に過小評価し、あろうことか、海外の事情を顧みることなく、自国の若者を責めるという、こんな国でも、日本の若者は「居心地がいい」と言ってくれているし、これから少子高齢化の中で、さっさと死ねばいいものを、人権とか既得権を主張して、醜く長生きしようとする老人の生活を支えなければならないのです。もっともっと若者に感謝すべきだし、いい思いをさせてあげていいと思いますが。
  日々、金融市場にかかわっている皆さんは、某経済新聞その他の報道を見て、うのみにすることはないと思います。欧米の経済が報道されているほどバラ色ではなく、というか、経済崩壊の寸前であるということを身を感じられていると思いますし、相対的に日本経済は健全であることもお分かりでしょう。もちろん日本には様々な問題があるのですが。
  世間一般の人たちが、プロの金融マンも含めて、情報分析を誤り、図らずも逆張りをしてくれるおかげで、私たちにトレードで稼げるチャンスを与えてくれていて、この「情報ギャップ」こそがトレードにかぎらず、さまざまなビジネスに結びつくわけですが、それにしても、表層的な情報に右往左往させられる、現在の日本人のバカさ加減にはあきれさせられますよ。本当に。
  高校生は馬鹿な大人の評価など気にせず、自分らしく生きてください。そして一番大切なのは、「世界に一つだけの花」を咲かせることです。私もちょっと前まで馬鹿にしていましたが、自分らしく生きること、あるいは理想通りにいかなくても、何が自分にとって大切かということを見失わないことが大切だと思います。心からエールを送りたいと思います。