成熟? 衰退?





  連休中にものすごい混雑で足を踏み入れることができなかった、渋谷「ヒカリエ」の内部に“初潜入”してきました。びっくりしたり、新たな発見があったりということはなかったのですが、同時期に開業したお台場の「ダイバーシティ」や押上の「東京スカイツリータウン」などと合わせて、最近の時流というか、経済情勢、消費事情というのが垣間見られたと思います。
  商業施設の側としては、やはりどうやってお金を落とさせるか、という問題と向き合わざるを得ないわけですが、三つの施設ともに、人が集まりやすい場所にあり、地の利がいいということは言えるでしょう。渋谷はターミナルで若者の街だし、お台場も若い世代に人気があり、観光、行楽スポットで、東京スカイツリータウンは交通が不便ですが、東京スカイツリーというまたとない存在があり、浅草からも至近です。


  新丸の内ビル、六本木ヒルズ、東京ミッドタウンといったリーマン・ショック前にできた(オフィスとの複合)商業施設は、外資ファンドなんかが席巻していた時代なので、バブリーですが、最近の施設は、メディアなんかで取り上げられて、話題性はあるのですが、あまり浮いたところがありません。赤坂サカスなんかは、メディアが事業主体にもかかわらず、宣伝は下手だし、施設自体もぱっとしませんが・・・。




  ヒカリエを一通り見渡しての感想は、「社会人1、2年目のデートスポット」という感じですかね。そこそこ洗練されていて、質もしっかりしているんだけれども、その割には価格が低めで値頃感があって、しかも「ヒカリエで買いました」ということでハクも(思い出)つくので、長く使おうかなという気になるでしょうね。
  最近の商業施設は保守的というか、いろいろと考えた末に結果的にそういうスタイルに収斂されるのか分かりませんけど、だいたいどこも似たようなレイアウト、体裁で、ヒカリエ内部は「ルミネ」か「パルコ」か、既視感がありました。
  ただ、その考えは古いかもしれません。ちょっと前まで商業施設は、30代後半から40代のいわゆる「団塊ジュニア」を主なターゲットにしていて、バブルを経験し、消費生活を謳歌した経験のある人たちでもあるので、購買力が高いと目されており、百貨店もショッピングモールもその他の大型商業施設も取り込みを狙っていたのですが、リーマン・ショックで状況は一変してしまいます。






  消費の鍵を握る層であることに変わりはないのですが、さすがにリストラや賃金カットなどが続き、先行き不安から、支出を絞り込んでいることは間違いありません。どんな状況下にあっても売れる物は売れるし、経済的に余裕のある層の消費行動は変化しづらいのですが、「今度の不況はいつもとは違う」ことを察知しているともいえるでしょう。
  ちょっとしたバブルでヒルズやミッドタウンができた頃と比べると、ヒカリエ、ダイバーシティ、スカイツリータウンは、話題性こそはあるものの、売っている物、買った物を見る限り、消費する金額や華やかさではかなり見劣りします。実際に行ってみると、物を買ったり、ショッピングバッグを持っている人の姿はそれほど見かけません。
  スカイツリータウンの開業初日にもちょっとだけ書きましたが、東京に新しい商業施設ができて、日本人あるいは首都圏に住んでいる人たちのみが内輪で受けているだけで、世界で最も購買力が高い、中国人から見ると、「しょぼい!」し、「魅力ない」というのが実感でしょうね。




  中国よりも日本の方が30年も50年も先を行っているので、成熟した洗練されたライフスタイルであるとはいえるのですが、それが「うらやましい」とか「まねしたい」ということになるかどうか? もっとわかりやすく、色気のある(金のにおいがする)ものの方が心をつかむでしょうね。先進性とか華やかさというものが打ち出されないと、中国だけでなく新興国の富裕層の気を引くことはできないでしょう。
  日本人はすっかりおとなしく、行儀よくなってしまいましたが、ある程度、お金が動かないと、文化だってファッションだって勢いづかないし、何よりデフレから脱却できず経済が盛り上がりません。



  もちろん、近々訪れるであろう、世界恐慌を考えると、派手に目立つことばかりを考えてやるよりも、手堅く、確実に儲かるやり方をした方が得策でしょう。そう考えると、時流にかなっているし、先のことまでしっかり見据えた展開であるともいえるわけです。こういうご時世なので、現時点ではこのやり方が最善かもしれないですね。巨費を投じて失敗した場合、取り返しのつかないリスクをこうむるわけですから。




  ヒカリエで売っている衣料品や、アクセサリー、小物、雑貨、家具、調度品はそれほど値は張りませんが、レストラン街の単価はちょっと高いんですよね。ダイバーシティ、スカイツリータウンも同様。もちろん、その辺の百貨店でも同じことがいえるのですが。
  平均的なランチをいただこうとするならば、1500円は必要ですね。ちょっと気合を入れるなら、もう1000円は上積みしたいところです。この辺は、商売人の鋭さというか、取れそうなところ、取るべきところ、取らねばならないところは、しっかり押さえています。当たり前といえば当たり前なのですが、それがしっかりできるところは、さすがと言わざるを得ません。
  ちなみに私は、ヒカリエに訪れた日、前から行きたかった、韓国食堂で1000円でご飯おかわり自由、韓国流のおかず(総菜)食べ放題のサムギョプサル定食を食べてから、行ったのですが、ヒカリエの韓国レストランでは、ランチメニューは余裕で1500円はしていました。おそらく食べ放題はないでしょうしね。




  高級感を味わいたい、ヒカリエを訪れた達成感を満喫したい、ちょっといい格好がしたいとかない限りは、わざわざヒカリエに上るよりも、地上で食べた方が何かとお得です。 
  あと、これも前に書きましたが、ヒカリエはフロアが驚くほど狭いです。開業初日のスカイツリータウンは、開業時間前に行列ができたものの、営業開始してからは列はありませんでしたが、ヒカリエに大行列ができたのは、そういう事情もあるということです。
  何かを買う目的があるのなら、ヒカリエではなく、ほかへ行くか、最近はネット販売も充実しているので、そっちの方がお勧めですね。スペースの都合上、品ぞろえがいいとは決していえないです。だからあまり過度な期待を抱くと裏切られます。
  ぶらぶら歩いていて何かをいいものが見つかるかなぁ、ぐらいの感覚でないと、徒労に終わってしまう可能性があります。その辺が、コンセプトがぼやけた、もやもやした印象につながっているのでしょうね。
  最後に蛇足ですが、ヒカリエはフロアが小さい分、お手洗いのスペースも小さいです。女性の方を広めにしていますが、男性、女性用とも常に人が並んでいます。もし、緊急の用があるときは、あまり期待せず、すみやかに周辺の別の施設へ移動することをお勧めします。