投資事情

  先日、とある集まりがあり、中国・北京出身の30代の女性と話す機会がありました。彼女は、日本の大学を卒業し、システム関係の技術者をやっているそうで、日本語は堪能、かなり微妙なニュアンスの言葉も話すことができ、それだけでも優秀な人だと評価できました。
  で、お話しをしていると、ひょんなきっかけで、彼女がFXをやっているという話になり、皆さんもそうだと思いますが、とても興味がわきました。あまり一般の人と話していて、FXの話にはならないですからね。しかもFXをやっているのが中国の人という。
  彼女はこのまま日本に住み、仕事を続けることを希望しているようですが、おそらく中国籍のままだと思うし、各社が口座開設をさかんに勧めてはいるものの、さすがに外国人が口座開設をする場合は、ハードルが高いのかなぁなどという野暮な質問もしたかったのですが、それは措いておいて、最も聞きたいことを単刀直入に「どの通貨を取引しているの?」「かなり儲かってるでしょう?」と、大阪のおばちゃんばりにぶつけてみました。
  彼女は屈託なく、「豪ドルです」「全然儲かってませんよ、あはは」と答えてくれました。一応、こちらは素人のふりをして話しましたが、経済指標が発表されると値動きが激しいことなど、私たち日本の一般の個人投資家と変わらない認識で、「ドル・円は全然動かないし、ユーロは値幅は大きいけど、動きが読めないのでリスクが大きい」ということまで話してくれました。
  また、「中国は金利が高いから銀行に預けた方がいいんじゃないの? 人民元強くなりそうだし、うらやましいよ」と聞くと、「インフレだから誰も銀行に預けたらがないですよ(笑)」との答え。中国人の経済感覚も何となくわからいました。
  「中国人は私たち日本人が考えも及ばないような特別な奥義を持っているだろう」という私の偏見に基づく、勝手な期待は打ち砕かれ、よくFXブログなんかで目にするような話がほとんどでした。もしかすると、本当は秘密のトレード手法があるのかもしれませんけどね(笑)。
  儲かっているかどうかも、言葉を額面通りに受け取ると、収支トントンか、ややマイナスかみたいな感じでしたけど、中国の人がこういう時にどういう答え方をするかわからないので、これもひょっとすると、アキバにビルが買えるくらい儲かっているかもしれないのですが、判断の根拠がないので、素直に受け止めておきましょう。
  本当は、「ドル・円が一番、安全に稼げるんだよ」とか、「チャートはこう読み解けばいいんだよ」といった話をしたくて仕方がなかったのですが、いったん素人を装ってしまった以上、貫くことにしました。
  中国人のFXトレーダーと話してみての感想としては、投資の手法はあまり変わらないんだなぁというのが率直な印象です。私がお話をした人は、割と温厚でおっとりとしたタイプだったので(ただ、間違って「上海出身」といってしまった時は、対抗意識があるようで「北京ですよ!」ときっぱり言われました)、がつがつしていないんでしょうね。
  本気でチャートから何から研究している人がいれば、おそらく、その熱意は日本人の比ではないと思うし、テクニカル面に加え、欧米金融機関の仕掛け方みたいな、ちょっと込み入った事情なんかも詳しく分析するでしょうから、技術的にはものすごいレベルに達するんではないかと思います。
  私の知っている限りでは、日本の個人トレーダーは、何か一つ偏っているんですよね。フィボナッチとかエリオット波動を駆使してそれなりにテクニカルの理解は高いんだけれども、ファンダメンタルに対する理解がなくて、介入相場とか、最近のようなレンジ相場には十分対応できないとか、職人技みたいに10分足とボリンジャーバンドにこだわる人とか(マネックス証券の10分足チャートで解説している御仁)、経済ニュース(指標)ばかり気にするとか、システムトレードにこだわり続けるとか、知識の幅広さや、柔軟性がないケースが多すぎます。それにトレード好きといいつつも、どん欲に研究する人は見たことがないです。いたら紹介してほしい。
  お金が好きで、向上心が強く、基礎学力が高い中国の人が、本格的に投資について学んだら、すごい人が出てきそうですけどね。欧米金融機関のインチキがまかり通っている、現在の金融市場なんて、簡単に化けの皮をはがしてしまうでしょう。その時は、欧米が本当に終わってしまうときなのでしょうけれども。