新グローバリゼーション論

  リーマン・ショックや、欧米発の金融不安で、現在の世界システム、グローバリゼーションに対して、懐疑的な見方が世界中を覆っています。米国でリバータリアニズムが存在感を示したり、ウォール街占拠運動が広がったり、昨年、イスラム諸国で民主化運動が起きたのも、根っこにはそうした動きがあるとみていいでしょうね。完全に欧米、イスラエルによって変質化させられてしまいましたけど。
  今後、金融恐慌に本格的に突入し、欧米が相次いで国家破綻すれば、さらに、現在のシステムに対する反省や、反動的な動きが活発化することと思います。そして、やはり自らの足元をしっかり見つめなおそうと、地域化、ブロック化の動きが強まるのではないでしょうか。
  日本では、国全体が貧しく、国内需要が弱い韓国なんかとは違って、平均的に所得が高く、国じゅうが豊かだったので、アンチ・グローバリゼーションというよりは(もちろんそういう側面がまったくないとはいえないですが)、国内の所得格差を是正する目的で、地域志向、内発的な、悪い言葉でいうならば内向きな動きがかなり早い段階から活発化しました。
  「町おこし」「村おこし」なんてずっと前から各地で行われてきましたし、最近の「ご当地~」なんかもその流れですね。「B-1グランプリ」というのも、地域おこしの動きがさらに、進化、成熟した形だと思います。こうした努力の甲斐あって、日本の内需というのは、一般に考えられている以上にかなり強いです。
  米国が国内消費主導の経済といっても、マクドナルドやピザハットで飯を食い、ウォルマートで買い物をするという、地域にカネが落ちない、一部の大企業、巨大資本に搾取されるシステムに支配されているのに、脆弱なことこの上ありません。
  そもそも、日本は生まれた土地に執着が強い農耕型であるのに対し、やはり彼らは狩猟型ですよね。一つの土地にはあまりとどまらないず、仕事や人、金が集まる場所に移動してしまうので(もちろん土地にとどまる人も米国には少なからずいるのですが、全体としてはそういう傾向です)、長期的視点でその土地を良くしようというモティベーションはどうしても薄れますね。
  サブプライムローンのバブルがはじけて、全米各地の住宅街がゴーストタウンのようになっているのは、単に家を差し押さえられただけでなく、そうした事情も一つの要因になっていると考えられます。でなければもっとその土地にしがみついて何とかしようと思う人は多いはずです。
  結局、グローバリゼーションだ何だと、かっこいいことを言っても、足元の経済がしっかりしていないと、変調を起こした時に、巨大な渦に巻き込まれて、沈没してしまうわけで、まずは、身の回りをしっかり固めようということで、地域を大切にしようという動きは当然だと思います。
  消費地で物をつくるというのが最も分かりやすい動きだと思いますが、地元の雇用や税収に貢献するし、何より、身近で物を作ることで、作り手の顔が見えやすいというメリットがありますね。特に食に関する分野はそれが望ましいと思います。
  ただ、その一方で、人々とより広く、密にコミュニケーションをする手段が、ますます発展、充実していくので、優れた情報を共有するという面では、グローバリゼーションはもっともっと進むと思われます。
  ファッションとか文化とかは、誰もが関心を持つ分野なので、今後、もっともっと、情報が広く、迅速に伝わるようになるでしょう。
  この分野では、現在のところ韓国が先行していて、非常に強いですね。音楽やドラマなど韓流を積極的に売り込んでいて、賛否はありますが、アジアじゅうを席巻しつつあります。
  ハイテク(と言われる)分野も、そういう傾向があります。アップルのスマートフォン「iPhone」は新製品が世界の注目の的だし、発売日には世界中のショップで行列ができます。ソニーや任天堂のゲーム機なんかも関心がたかいでしょうし、日本のメーカーは完全に衰退してしまいましたが、テレビなんかも今後は、ネットワーク機能を充実させて、サムスン電子やLG電子がイメージ戦略なんかを積極的に行って、テレビの新製品がすぐに世界同時発売されるみたいな体制がそのうちできるでしょう。
  要は、世界の各地で同時に、ブームが起こるということですね。日本はハイテク分野では完全に後れを取り、もはや太刀打ちできないところまで来ていますが、ソフト面では攻勢の余地は大きそうです。若者のファッションなんか、アピール力があるし、アキバ文化みたいなのも根強いファンが世界にいますよね。食文化もまだまだ知られていないものでブレイクするポテンシャルのあるものは多そうです。
  原点回帰というか、基本的なものは地元で賄おうという動きがある一方で、地域では発信したり、作ったりできない、先端的な分野に関しては、グローバル化が進み、しかも、世界同時で流行が起きる、シンクロ化がますます進むことになると思います。
  そういう観点から、本当にグローバルに強い企業はどこなのか。興味深く見ていきたいですね。米国のような誤ったグローバル化(金融支配、農業支配)の押し付けでなく、本当に人々が自発的にほしいものを取り入れる(ある意味大がかりな洗脳の部分はあるのですが)、しかも同時発生的にブームが起きる、新しい形のグローバル化に注目したいと思います。株の銘柄選びでもそういう視点は重要になるのではないでしょうか。