新・投資立国論

  リーマン・ショック前に、竹中平蔵さんとか勝間和代さんなんかが「投資ブーム」をあおって、得体の知れない金融商品や、リスクが低いとされた投資信託に、多くの人が飛び付いた結果、世界的な株価低迷や歴史的な円高により、ほとんどの人が資産にダメージを受ける結果となりました。株価は小康状態にありますが、その前に投げさせられた人もいるでしょうから、結局、勝ち残ったのはたんす預金をしていた人たちや、コツコツと金を買った人たちくらいでしょうかね。
  投資をあおる人たちは、「お金がお金を産む」という虫の良い幻想に取りつかれているか、欧米の金融ばくちの片棒をかついでいるかのどちらかでしょう。竹中、勝間両氏はこの両方にあたりますね。2人とも確信犯というより、むしろ本当にだまされているフシがあるので余計にタチが悪いです。
  投資の原則としてまず確認しておきたいのは、お金にお金を産ませるというのは、とても難しいということです。あるいは極端な話、ほぼ不可能といってもいいかもしれません。
  現実には国は借金をする際、国債を発行し、利子を付けて返済するのですが、利子自体微々たるものである上、利益のほとんどは、無能な巨大金融機関の社員を養うために持っていかれます。住宅ローンや企業向け融資にしても同様です。
  では、どうしたら個人が投資をして、安定的に稼げることができるでしょうか? 継続して一定の配当が出る株を持つというのが一番理想的なんでしょうけど、そうめったにあるものではありません。少子高齢化で中長期ではじり貧で配当は得られても元本が目減りする恐れが大いにあります。
  また、東京電力のようにかつては「絶対的に安泰」の代名詞だったような銘柄でも、たった1回の事故で、配当はおろか元本もパーになってしまいました。横綱、トヨタ自動車なども同じようなことがあり得るということです。
  経済情勢が目まぐるしく変わる中、投資の王道なんてまずあり得ませんよね。私は中国株が本格的にブームになり、ブレイクする前に仕込んだので、元本は(時価ベースで)増え、しかも毎年、それなりに配当収入を得ていますが、これだっていつまで続くか分かりません。
  日々、金融市場と向き合い、皆さんも身をもって体感していると思いますが、お金を守る、あるいはお金を増やすというのはいかに難しいことか、それをあらためて認識しつつも、放っていると米国に搾取されるだけなので、手をこまねいているわけにもいかず、どうやってサバイバルしていくか考えなければなりません。
  一時期、子供の頃から、若いうちから投資教育をする必要があるみたいなことがいわれましたが、誰から、一体何を学ぶのでしょうか? 投資についてきちんと教えられる、伝えられる立派な先生がどこにいるのでしょうか? 投資について知らない人に胸を張って、投資でこんな結果を出したんだと言える人は一体、日本にどのくらいいるのでしょうか?
  誰もが投資について経済の仕組みについて知りたいとは思うものの、的確に教えてくれる人はいないし、ましてや英語や数学の成績が上がるように、確実に結果を出せると保証してくれる人はいません。投資のプロであるはずの証券マンはなぜ会社勤めをするのでしょうか? エコノミストやアナリストは、偉そうに講釈を垂れるのであれば自分で言っていることを自ら実践すれば、リッチになっているはずなのに、なぜ、おいしい話を惜しげもなく私たちに教えてくれるのでしょうか?
  明らかに矛盾だらけであるにもかかわらず、投資教育をしろみたいなことを政治家や学者、金融機関が無責任に言い出すのはまったくもって腹立たしいし、それを通り越して滑稽というかあきれてしまいます。そろいもそろって米国に国富を貢ぎ、搾取の片棒をかついでいる連中がどの口で「投資」なんてことを言うんでしょうかね。
  逆説的ですが、世間では、まっとうな人だと思われ、それなりの地位、役職にいる人が、からっきし世の中のことを知らないし、現在の世界システムの中では奪い取られる側にいるにもかかわらず、自覚していないので、各自、自らの身を守るために、本当の意味での「投資」について考え、研究する必要があります。
  世界経済は一貫してプラス成長が続いているので、収益の機会はあるはずなのですが、上述したように、おいしいところの大部分は金融機関や一部の利権集団にもっていかれるので、残りかすをめぐって激しい争奪戦が繰り広げられることになります。
  基本的には、まずすべてを徹底的に疑ってかかることでしょうね。サブプライムバブルの破裂で、世界経済がインチキの上で成り立っていたことが証明されたように、安全、確実なものは何もないということを肝に銘じないと、足元をすくわれかねません。
  その中で、相対的に価値のあるもの価値のないもの、強いもの弱いもの、世の中で必要とされているもの必要とされていないものなど、シビアに見抜く力をつけていければ、少しずつ投資力はつくでしょう。
  この十数年、金融市場をつぶさに見てきましたが、一般の人が誰でも儲けられるような投資のチャンスは、ほんの一時しかありません。だから、あまり欲をかかないことも大切ですね。ブームに踊らされるだけというのは最悪です。
  すべてを疑いまくって、いい奴、ダメな奴を冷徹に選別できるようになれば、一人前の投資家です。なかなか身に付けるのは難しい技術ですが、原理としてはスーパーで、いい商品を見極める、いわゆる目利きと同じです。
  それと、私たちにとって最大の武器は「空売り」ができるということですね。ダメな奴は売り倒してやればいいのです。常々、相場を撤退するのはショートで踏まれるパターンが多いということを言っていますが、時期がくれば、ショートに適した地合いもあるのです。状況に応じて、買いで儲けられるし、売りでも儲けられるのです。
  目利きと、流れを読む力さえあれば、大抵の場合、投資でそこそこの結果を出すことができるはずです。品質やサービスの質を見極める力を日本人は持っています。しかも世界でもずば抜けています。だから、平和ボケから目を覚まし、本質を見極める力を体得すれば、投資立国として十分やっていけるポテンシャルはあると思います。