時間は買えるか?

  2月のバレンタインデーを境に金融市場の風景は一変しました。ギリシャの債務問題に端を発するソブリンリスクをめぐる状況は何も改善しておらず、ポルトガル、スペイン、イタリア、さらにはフランスと予備軍が待ち構えているのですが、当面は触らないでおこうということにしたみたいです。
  ただ、月足をウォッチしていると、ドル・円、日経平均、そして香港ハンセン、上海あたりは、下に抜けないので(一応、底固めといえる)、煮詰まりつつありました。75日線、200日線と、絶好の材料もありました。
  金融経済は相変わらず、粉飾に次ぐ粉飾で、何一つ明るい材料はないのですが、実体経済は、新興国の底堅い成長により下支えされ、一貫して堅調を維持しています。過剰生産や価格下落の問題はあるのですが、物の清算は拡大しています。
  今回の上昇相場は、テクニカル面や政治的な思惑による部分が大きいのですが、ファンダメンタル的にもそれほど違和感はないのです。堅実な経済を維持している日本や中国の株価は不当に低く抑えつけられていました。
  欧米人は仕事もせずぶらぶらし、他人の労働の果実を収奪することしか考えない、どうしようもない連中ですが、日銀に追加緩和を迫ったり、ギリシャ問題を動かした(実質的には何も動いていないのですが)タイミングは絶妙で、「さすがは錬金術師」と、思わずうなってしまいました。
  日経平均は直近ピークの18000円、ドル・円は1ドル=120円台から一貫して下落してきたわけですが、ショートで稼ぐのは難しいんですよね。もちろん、うまくはまる局面もあるのですが、基本的にはショートは張りづらい。なぜか?
  大手金融機関、ファンドは空売りに対して規制がかけられているからです。だからどんな局面でもショートで稼ぐというよりは、暴落したところを底値で拾うとか、踏み上げも利用して上昇相場を演出するとか、ロングでいかに利益を上げるかという視点にならざるをえない。
  相場格言に「3日上昇、1日下落」みたいなのがありますが、圧倒的に上昇する日の方が多いはずです。下落する日が多いように見えるのは、下げる時は一気に値幅を伴って下げるからです。システムトレードの人なんかはその辺のロジックを利用しているのでしょうね。あまりかしこい投資方法ではありませんが。
  年初から、「暴落」だの「恐慌」と言い立ててきて、現時点では、予想に反する方向に事態は進行しているのですが、上昇相場でロングで稼ぐのが投資の王道であり、ロングで利益を上げられるのは、とても気分がいいです。
  とはいえ、現実に目を向けると、大手金融機関の人たちや、アナリストさん、エコノミストさんたちが浮き足立つほど、世の中すべてがいい方向に向かっているわけではありません。
  欧米、日本ともに、金融緩和という、しかもただの金融緩和ではなく、紙幣を刷りまくるという(実際には銀行の預金口座間のやりとりなのですが)、かなり踏み込んだ対策をとって、目くらましをしているにすぎないのです。普通はお金を借りると金利が生じるというのが、経済の常識なのですが、無理やり金利を抑えるわけですから、非常手段といっていいでしょうね。
  為替介入に対して批判がありましたが、これだって金融当局が自由な市場をゆがめる不当な政策介入なのです。
  市中にあふれた(実際は金融機関に滞留している)、じゃぶじゃぶの資金が金融市場に流れて、株価を押し上げ、金利差を利用した通貨取引が活発化しているにすぎないのです。
  金融緩和をした当初は、それなりの効果が出るのですが、いずれ、インフレや通貨安といった副作用に直面しなければなりません。しかも、クスリの効果が切れたら、元々の金融恐慌、経済荒廃の現実に引き戻されるわけです。
  たから、金融緩和は、目先の苦境を緩和するための時間稼ぎにすぎません。中には辛辣なコメントをするアナリストやエコノミストもいて、「時間を買った」と揶揄しますが、まさにその通りです。
  さまざまな不都合な現実を見るにつけ、金融緩和ごときで、何か変わるのだろうかと、私は半信半疑な部分がありましたが、ドル、日経平均が上昇しているのを見ると、結果として出ているので、「時間は買えた」のだということになります。
  偽りの上昇ということも言えますが、せっかく、大きな犠牲を払ってまで、上昇相場を演出してくれたのだから、これには乗るしかありません。ただ、買うだけで大儲けできるんですから、こんなおいしい話はありませんよね。
  考えておかなければならないのはその先のこと。しばらくはいいムードが続くんでしょうけど、クスリが切れるまでに、体質が改善し、病気が完治しているかどうかです。
  私は症状は緩和しても、完治は難しく、クスリが切れて、さらにクスリを投与しても、いずれ効果が出なくなるのではないかと予測しています。だから、ベースは欧米連鎖破綻、金融恐慌入りという、見立ては変わっていません。
  目先に関しては、3月にも大崩れがあると予想していましたが、大幅な修正が必要のようです。クスリの効果が半年持つか、1年持つか分かりませんが、その間は、状況に応じた対応をするべきでしょうね。
  米国がもうしばらくのさばることになると思うと、憂鬱極まりないのですが、時間的、経済的に余裕ができるのもいいかなとも思っています。どんな状況にも適応し、うまく波に乗るのが、プロ個人トレーダー(私は兼業ですが)のあるべき姿ではないでしょうかね。乗れるものには何でも乗って、うまく利用しましょう。
  根拠もなくショートにこだわったり、ユダ金だの、世界の終末だのとうじうじと陰謀論を信奉している連中は、バカです。