水商売化する経済

  先日、東京駅の八重洲口地下の有名店が集まる「東京ラーメンストリート」を通りがかったら、夜の10時前で、人通りが減り、周辺のほとんどの飲食店は閉店しているにもかかわらず、ラーメンストリートの一角だけ、大行列ができていました。
  今から4、5年ほど前でしょうかね。東京や名古屋、新大阪の新幹線の駅の入り口付近や、駅構内に名の知れた店を集めてラーメン店街ができたのは。
  狙いとしては大変いいと思います。新幹線に乗る前に手っ取り早く食事をしたり、降りてから何を食べるか考える手間をはぶけますからね。
  新幹線の駅周辺というのは、案外適当な飲食店がなくて、夜の遅い時間に駅に着くと、飲食店を探すのに苦労することがありますし、最終に近い新幹線に乗るときは、すでに売店が閉まっていたり、開いていても、弁当とかサンドイッチは売り切れていたりで、ラーメン店があるのは非常に重宝します(あとカレーショップも)。
  テレビとか雑誌で頻繁に特集なんかをやるので、ラーメン・ブームというのも衰えないので、人気店はどこでも行列が絶えないですね。私が通りがかった時も、新幹線の乗降客というよりは、普通にラーメンを目当てに訪れた人が多いようでした。
  東京ラーメンストリートには、つけ麺で今一番注目を集めている「六厘舎」なんかがあるんですけれど、正直、有名で人気もあるんだけれども、本当に行列の最後尾に並んで、長時間待ってまで食べる価値があるかというと、疑問符がつくお店も少なくありません(全8店舗なのでどのあたりのお店かはお察しください)。
  にもかかわらず、どの店もそこそこの混雑ぶりなんですよね。人が並んでいるので気になるという、人間の心理をくすぐる部分なんかもあるんでしょうけど、そこまで熱狂する理由がわかりません。
  このブログでもラーメン店を紹介していますが、たかがラーメンですよ。よほどの思い入れがない限り、無理して並ぶ必要があるのか疑問です。私なんか、並ぶのがいやなので、行列のできるお店は、平日にしかもお昼どきを外して行くようにしています。
  以前、ビートたけしさんが「食べ物がほしくて行列するなんて、昔ははしたないとされていた。そんなの文化か?」と疑問を呈していましたが、共感できる部分は少なからずあります。
  最近は若くて意欲的で研究熱心な人が、ラーメン店を“起業”するケースが多く、ちょっとスープにこだわりがあったり、その辺の中華そば店にないような、凝ったつくりのラーメンを提供すると、それがネットやメディアで話題になり、客が集まります。こんな現象は4、5年前くらいまでは見られなかったことで、情報化社会の進展、深化を実感させられます。
  ただ、たしかにおいしいことはおいしいんだけれど、人気が先行して、本当に並んでまで食べる価値があるのかというお店も多いですね。並んでいる側も本当に、おいしいと思って並んでいるのでしょうかね? 以外とあっさり見捨てられる店は見捨てられると思います。
  これも、先般の「家政婦のミタ」のような、いやな現象ですよね。「人が見るから自分も見る」「人が並ぶから、とりあえず並んどけ」みたいな。
  売り手も買い手も、よく考えないと、あまりいい結果をもたらさないのではないかということを考える必要があります。
  かつてはブームになったものの、飽きられたり、新興店の勢いに押されたり、地の利が悪かったりで、今はすっかり見る影もないという、お店もたくさん知っています。
  今はものすごい客足を誇っていてもいつまで続くかなぁという。生き残っていけるのは、3割もあればいい方ではないでしょうか。
  飲食店なんて、まさに水商売なんですよね。景気の浮き沈みや、ブームなど一過性の要因に大きく左右されるビジネスです。
  でも、そんな水商売を馬鹿にできるかというと、そうでもないんですよね。これから将来にわたって安定した起業とか団体ってどのくらい、あるでしょうかね。
  テレビやパソコン、携帯電話といった電気製品なんて、しっかりしたビジネスと思われていましたが、すっかり水商売になってしまいましたし、自動車だっていつどうなるか分かりません。
  銀行だってお堅い商売の代表格のようなものでしたが、落ちぶれてしまいましたし、これからのご時世、公務員なんていう商売も風当たりがきついでしょう。
  時々、ブームなどで一過性の当たりはあっても、ヒットを打ち続けるのは難しい時代になりつつあります。それはトレードでも同じですね。
  一時の好調に気を良くして、二匹目のどじょうをねらおうとすると大けがをすることもあります。よほど心してかからないといけないでしょうね。それだけに、根拠の薄い高視聴率や、ラーメン店の行列には不気味なものを感じさせられます。