破滅までの道

  このところ、米国国家破綻あるいは世界恐慌まで、ずっと「長丁場」「長丁場」と言っているので、「もう聞き飽きた」と思われるでしょうし、そろそろオオカミ少年化しつつあります。もちろん、米国のデフォルトは回避されるかもしれないし、恐慌など今の時代にありえないかもしれません。そういう考え方もありだと思います。あくまでも未来予想は個々人の判断だし、「そういう考えもあるよね」程度に話半分に聞いていただければと思います。
  ただ、昨日、ドル・円が一時1ドル=75円70銭台と、戦後最高値を一瞬、更新し、あらためてドルの問題がクローズアップされるところとなりましたが、大渋滞中にちょっとだけ車の流れがよくなったような感じで、ひと心地ついたような気になりますね。私もちょっとだけホッとしました。どうせなら75円割れまで行ってほしかったですが。
  現時点では、私自身はやはり、流通しているお金の量や各国、各金融機関が抱える債務、金など価値あるものの裏付けを持たない不換紙幣の抱える矛盾、(真の意味での)勤勉さを捨てた欧米人の状況などから、破滅的な状況は回避できないと考えてますし、金融市場がどうとか、国家財政がどうかという小さなレベルを超えて、100年、200年、500年あるいは1000年のサイクルの歴史のサイクルからみて、大きな転換点を迎えており、その際に大きな乱気流のようなことが起きるんだろうと予想しています。
  最近は、エコノミストやアナリストといった職業の方からも、現在の状況はリーマン・ショックの前哨となった、2008年3月のベア・スターンズ危機の段階にあるみたいなコメントがよく見られるようになりました。この法則を単純にあてはめると今から半年後くらい、来年前半に大きな動きがあるということになりますね。
  このところ、欧州の要人からは、結構過激な発言が相次いでいます。「ギリシャは破たん処理すべきだ」「欧州は破滅的な状況を回避できない」みたいな。ついこの間までは「ギリシャが破綻すれば世界の金融システムが混乱する」とか「欧州発の世界恐慌は回避しなければならない」といった控えめで、しかも危機にしっかり対処しますというようなニュアンスが込められていたので、かなり状況は煮詰まっていることがうかがえます。
  ちょっと前なら、こんなヤバい発言をすれば、金融市場は敏感に反応していたと思いますが、あまり重要視されていませんね。ドルは下落しましたが、ユーロは一時期の軟調から比べると、「安全圏」といってもいいくらいのレベルです。油断は禁物なのですが。
  欧州金融安定化基金(EFSF)の基金拡充や拠出方法をめぐってフランスとドイツが対立していて、一見、不透明感が強まっていますが、おそらく、米国あたりが脅しをかけて、何とかまとめあげることになるのではないでしょうか。結局、何らかの形で基金拡充することは既定路線であって、不利な条件を押し付けられる側のドイツサイドから「ギリシャ破綻させちゃえよ」みたいな、恨み節が出たような感じでしょうね。基金拡充はほぼ決まっているので、だれもその発言をまともに取り合わないということなのでしょう。
  あくまでも個人的な感覚なのですが、前にもマーケットの動きを受けた、簡単なコメントの中で、「クリスマス、正月は楽しく過ごしたいなぁ」みたいなことを言ったと思います。皆さんそのように考えているのではないのでしょうかね。
  リーマン・ショックの際も、米国の金融機関の危機が表面化したのは、約1年前の2007年秋でした。ベアー・スターンズの半年くらい前ですよね。シンガポールや中東のSWFがシティの株を引き受けるみたいな話が次々と出てきて、金融市場は小康状態になりました。
  ただ、その時は、たしかクリスマスはぎりぎり乗り切ったと思いますが、年の瀬に崩れて、年末の大納会、年初の大発会ともに、暴落だったと記憶しています。
  私は現状は、ベアー・スターンズ危機というよりは、さらにその前の段階なのではないだろうかと考えています。ベアー・スターンズ危機は、本当にギリシャが破綻した時でしょうね。今はまだ破綻させないという印象です。こればっかりは急転直下何があるか分からないので、安易な予断は徹底的に排除すべきだとは思いますが。
  ギリシャ破綻で、いったん、金融市場が小崩落して、また、あらためて危機回避のスキームを練り直す、しばらくだらだらとやって、ポルトガルだ、スペインだ、イタリアだみたいな話になって、さらにはGSE問題などが導火線になって米国にも火がつく。
  現段階では、オオカミ少年はこのように予想します。東日本大震災やタイの洪水みたいな、不可抗力もあるので、何かあればその都度予想は修正していかないといけない思っています。予想に固執して意固地になって、柔軟さを失うのもだめですね。あくまでも一つの尺度であって絶対ではありません。
  そういったことを肝に銘じつつ、もし、世界経済の破滅があるとすれば、どういう道筋を進んでいくか、頭を悩ませながらも、ヘボ予想をするわけです。