節制

  東京電力福島第1原発事故を受けて、各地の原発が定期点検に合わせて相次いで停止されたことで、この夏はピーク時に電力が大幅に不足し、停電が起きるのではないかと、大騒動になりましたが、結局、一番暑い時期は乗り切り、しかも、昨年比で15~20%の節電が達成できたということです。
  目標に向かって、一丸となって努力するという点で、日本人の強みを見せつけたのではないでしょうか。欧米だったら絶対パニックになっていただろうし、醜い争いが起きていたことでしょう。限界や困難があった方が日本人は生き生きとしますよね。
  歴史的に、日本が大国ではなく、小国であったという点も大きいと思います。私たちは周囲からさまざまな圧力、脅威を受けながら、うまく乗り越え、立ち向かってきたのです。ダイナミックな発想は苦手ですが、与えられた条件でつつましく暮らし、しかもそれを最大限エンジョイできるという点では、世界のだれも追随できないでしょう。
  日本のすごいところはそういうところなんですよね。夜郎自大、米国の虎の威を借りる事大主義の保守主義者とか、一生懸命おかしな「新しい歴史教科書」を広めようとしている人たちが主張する、「偉大な日本」とか「美しい日本」とは全く違います。
  大国というのは、宗教や言語、価値観、政治制度、経済システムを他国に受け入れさせる力のある国のことを指しますが、日本は歴史的に、そんなことのできる能力のある国ではありません。古くは、中国の影響をかいくぐって(鎖国して)、列島に引きこもり、「小中華帝国」を国内に造っただけですし、大日本帝国の時代ですら、欧米のまねをして、ちょっと周辺に進出したにすぎない。
  中国が漢字を発明し、政治制度を確立し、アジア全体に影響を与えたように、スペイン・ポルトガルが異民族を殲滅あるいは服従させるためにカトリックを布教したように、米国が経済システムを世界中に広めたように、日本が主流にいわゆるグローバル・スタンダードになったことは歴史的に皆無です。
  保守と言われる人たちはその辺をどのようにとらえているのか? たまたま米国の庇護を受け、米国が気前よく日本製品の輸入を許してくれたことでビジネス・モデルがうまくいき、「経済大国」になれただけなのに、身の丈以上にいばりくさろうとする根性は卑しいですね。
  日本は、メインストリームにはなれない、「サブカルチャー」の国なのです。でも、とても優れた、洗練されたサブカルチャーを持っている。そういう国なんです。そして、サブカルチャーのソフトパワーはあなどれないレベルに達しているのです。
  冷静に謙虚に自己分析すること。そして、そうすることで、日本の強み、勝ちパターンが見えてくるはずです。実力以上に強く見せようとしても、どこかで破綻するでしょう。
  1970年代のオイルショックの時もそうですが、危機になると、自分たちでも気づいていなかった能力を発揮できるところは日本人の長所でしょう。今回の節電は再びそれを証明しました。
  しかし、一番びびったのは、電力会社でしょうね。日本人を甘く見過ぎていた。彼らの思惑としては、「やっぱり原発だね」と言わせたかったことでしょう。節電で、不自由な生活だったことは否めませんが、全然暮らせないということはなかった。これで火力発電所の増設、一層の省エネ、原子力や化石燃料に頼らないエネルギーの導入を推進すれば、今後も何とかやっていけるはずです。
  それと、なぜこれを取り上げないのか、不思議ですが、節電によりCO2の削減もかなり図れたはずです。原発停止との相殺分もあるでしょうけれども、省エネや節電がかなり効果を上げているはずです。このペースで推移すれば、京都議定書はおろか、鳩山由紀夫首相の掲げた1990年比温室効果ガス25%削減の目標も、手に届く範囲にあるのではないでしょうか?
  どうしてそのことをもっとアピールしないのか? 温室効果ガスマフィアは欧州の連中なので、米国の汚らしい連中と比べるとへたれなはずです。これだけの証拠を突きつければ、日本に対してはぐうの音も出ないと思うんですけどね。
  昨日、TBSラジオの「キラ☆キラ」を聴いていたら、「揚げ物」をテーマにしたエピソードを募集していて、米国で、にわかにブレイクしている、新しい揚げ物が紹介され、ぶっ飛んでしまいました。なんと、バターにシナモンとはちみつをコーティングして、それを揚げて、さらに砂糖をまぶすというもの。
  米国行きの飛行機に乗ると、その体でエコノミークラスに座るなよという体型の人が多いですが、そんなカロリーの塊みたいな揚げ物を食べていたら、まあ、そうなりますわねぇ。ちょっとおいしそうな感じもしますが。
  米国人もそうですが、欧州人も醜くぶよぶよ太った人たちが非常に多い。大国に住んでいる人たちは、節制ができないのが弱点ですね。そして自ら身を滅ぼしてしまう。食べ物もそうですが、今問題になっている、金融危機の問題も、まったく同じですね。
  自分たちの欲望を抑えきれず、さんざん快楽、放蕩に走った結果が今の欧米の状況です。全然、同情心は持てないし、さっさと堕ちろよと思ってしまいます。
  次に台頭するであろう中国、ロシアも大国としての歴史を持ちますが、今後はどういう世界になるのやら。混沌としていますが、日本人はサブカルチャーに徹し、節制の心を忘れなければしぶとく、したたかに生き残っていけると思います。