粉飾相場

  米国経済はすでに破綻状態で、終わっていると思いますし、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)や米軍普天間飛行場移設問題で、いろいろちょっかいをかけてくるのはうざいし、まともに取り合う必要もないと思いますが、政治家や官僚は選挙、人事にまで介入されるので、この期に及んでも米国が怖いんでしょうね。
  このところの米国への追従は常軌を逸しています。ハワイで開かれているアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席する野田佳彦首相が乗った飛行機がホノルルのヒッカム米空軍基地ですよ。ハワイに行ったことがある方はご存知だと思いますが、ホノルルには民間航空機の旅客が乗降できる国際水準の立派なゲートがあります。
  おそらく空軍の施設の貴賓室か何かに拉致されるような形で連れて行かれ、米政府関係者から、いろいろと、APECやTPPに関して、レクチャーを受け、振り付けもされたことでしょう。
  60年以上前、日本が太平洋戦争敗戦後、正式に国際社会に復帰するため、サンフランシスコで講和会議が行われた際、当時の吉田茂首相が同じように連行され、日米安全保障条約を強制的に締結された状況と一緒ですね。相変らず同じことをさせられているわけです。
   近々、米国経済の自転車操業が行き詰って、米国の金融詐欺が発覚する運命にあるわけです。落ちぶれつつある米国のことを、もう少し、クールに分析すれば、今は表面上追従する形をとったとしても、陰で舌を出すという「面従腹背」でいいことが分かるはずなのですが、政治家や官僚は完全に飼いならされているのでしょうね。分かってはいたことですが、悲しい現実です。
  米国の凋落はドルの下落で裏付けられていると思います。「米国はわざとドルを安くして、輸出主導の経済に転換しようとしているんだ」という解釈もあります。事実、そういう面もあると思いますが、米国が金融ばくちと不動産ころがしに失敗して積み上げた借金は、輸出で稼いで返せる額ではありません。それに、ドルの価値がここまで下がっても、貿易赤字がわずかに減ったにすぎず、日本やアジア各国のように勤勉に働き、競争力のある商品、サービスを生み出せるとは思えません。
  それでも、欧州のパニック状況に比べて、米国が比較的平穏のように見えるのは、株価が異常に高いからにほかなりません。日経平均は既に1万円を大きく下回る水準が続いていますが、NYダウは12000ドル前後と、表面上の数字だけ見ると、リーマン・ショック前の水準を維持しているのです。
  株価指数に採用されるような米国の主要企業は、競争力もあり収益性も高いので、しかるべき評価を受けて当然な面もありますが、それでも、破綻状態の米国経済に少なからず依存しているわけで、将来の国家破綻を織り込むなら、この水準は高すぎると言わざるを得ません。
  金融緩和で、じゃぶじゃぶになったカネが株式市場に回って、値がつり上ったというのが、大方の見方でしょうし、実際にそうでしょうね。失業者が各地にあふれ、長引く不況で、勤労意欲を失ってしまい、経済はずたずたの状態ですが、株式市場が堅調を維持している限りは、それがあまりクローズアップされることはありません。
  株価を粉飾することで、経済が健全であるということを装っているにほかなりません。量的緩和第3弾が近々実施されるという観測が市場を飛び交っていますが、それも、経済をテコ入れするのではなく、とりあえず、株価を下支えすることで、目をそらすことが目的なのでしょう。
  オリンパス云々がいわれていますが、もちろんあれはあれで、業績を粉飾して、株式市場を欺いてきたわけですから、犯罪的な行為であることは間違いないのですが、今、米国がやっている国家ぐるみの金融詐欺なんかと比べると、はるかにスケールが小さいです。
  そんな細かいことを批判するよりも、やはり、積極果敢に巨悪を追及するべきではないでしょうか。米国の株価の粉飾を知らんふりして放っておいても、いずれは爆弾が炸裂するのです。
  であるならば、そういう事態を想定した上で、来たるべき巨大な津波に対して、可能な限りの準備をしておくべきでしょう。おそらく、次の金融恐慌では、多くの人が失業し、自殺に追い込まれる人も少なくないと思われます。すべてを防ぐことは無理でしょうけれど、影響をなるべく食い止めることはできるはずです。
  そして日本人の利益を守るのが、政治家や官僚の仕事です。