自動車の未来~東京モーターショー2011① 海外メーカー編



  東京・有明のビッグサイトで開催中の「東京モーターショー2011」に行ってきました。日本最大の自動車関連のイベントということで、平日にもかかわらず多くの観客が詰めかけ、金融恐慌などどこ吹く風という感じで、熱気が感じられました。
  リーマン・ショックの余韻を引きずった前回(2009年)は9社9ブランドにとどまった輸入車ブランドも、今回は21社25ブランドと大幅に増え、特にメルセデスベンツ、BMW、フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェといったドイツ勢がそれなりに充実した展示をしていて、モーターショーを盛り上げました。
  ドイツだけでなく欧州勢は総じて力が入っていました。歴史的な円高ユーロ安や、欧州金融不安を受けて日本市場での攻勢を強めようとの思惑があるのでしょう。
  それでも、北京や上海でモーターショーを開けば、地元のメーカーを含め、巨大市場にアピールすべく、各社気合を入れてこぞって参入するでしょうから、韓国メディアがいみじくも酷評したように「しょぼい」印象は否めないでしょうね。
  ただ、日本のユーザーの車に対する要求は群を抜いて高いので、自動車メーカーはこの市場で鍛えられているという面は無視できないです。日本で認知されれば、世界に出しても恥ずかしくない車であることは間違いないでしょう。そのことは素直に誇っていいと思います。




  反面、環太平洋パートナーシップ協定とからめて、自動車市場の“開放”を日本に対して要求している、米ビッグスリーの出展はゼロ。「非関税障壁」うんぬんより、市場のニーズに合った自動車の投入や、きめ細かなマーケティング、顧客へのPRをしようという、商売人としてあるべき精神が根本から抜け落ちており、「さすが凋落する落ち目の国の自動車メーカーは一味違う!」と感心してしまいました。
  韓国も、格安長距離バス事業者向けのセールスでしょうかね。現代自動車が大型観光バスを展示していましたが、それ以外は出展はありませんでした。最近はタクシーなんかで現代の車をたまに見ますが、日本では定着しませんね。
  北米市場では、デザインがひと昔前のトヨタ・カムリや、ホンダ・アコードをほうふつとさせる、精悍でアメリカ人好みのセダンを相次いで投入し、じわじわとシェアを上げていますが、ウォン安で値ごろ感から、日本車を買う余裕がなくなった貧乏な米国人に支持されているという面は否めませんね。
  日本車を研究し尽くしているので、細かいところまで行き届いているのかと思いきや、雨漏りするケースが多いんだそうです。笑っちゃうしかないですね。ははは。


  残念ながら、モーターショーを見る限り、あまり目新しいものはありませんでした。というより、優れたものはすでに発表されたり、すでにコンセプトとして知られているので、モーターショーではあらためてそのことを確認するということの意味合いの方が強いのでしょう。
  「環境対応」(低燃費)というのが、やはり今回もメーンテーマになりました。年初の米デトロイトのモーターショーなんかだと、華やかさとかあこがれみたいなものを前面に打ち出してくるのでしょうけど、これは成熟した日本市場ならではですよね。
  乗り心地とか、楽しさとかはもちろん大切ですが、だからと言って、応接間のようなごてごてしたソファーを積んだり、いかつく重いボディーを乗せ、ガソリンをがぶ飲みする馬鹿みたいに出力の大きいエンジンを積めばいいというものではありません。米国のメーカーが凋落したのはまさにこの点を無視したからにほかなりません。
  やはり、少ない燃料でいかに効率よく、スマートに車を動かすかというのは、車にとって生命線だし、開発競争の主戦場ですよね。






  低燃費の流れとしては、主に三つあると思います。①ハイブリッド、プラグインハイブリッド②電気自動車③クリーンディーゼル---ですね。これらの開発から脱落したメーカーはスポーツカーとか、「走りの楽しさ」を強調せざるを得ず、苦しいですね。ランドローバーとか、ミニとか英国勢がそうです。
  一方、ドイツ、フランス勢は、クリーンディーゼルを主軸に、ハイブリッドでも構成を強めつつあります。ガソリン車でも、エンジンの排気量も1.5リッター、1.8リッタークラスのものを投入し、マイレージもリッター12~13キロと、やぼったいイメージだった欧州車のイメージが変わりつつあります。




  面白かったのは、シトロエン。世界初の「ディーゼル・ハイブリッド車」を発表していました。ディーゼル・ハイブリッドというのは厳密に言えば、トラックやなんかですでに実用化されています。
  乗用車では初めてということでしょう。今まで、燃費のいいディーゼル車にハイブリッドシステムを積まなかったのはなぜか? 車が重くなるからです。ディーゼルエンジンは、効率よく燃料を噴射するために「コモンレール」という部品が必要で、モーターとバッテリーを組み合わせると、それだけでかなりの重量になり、ディーゼル、ハイブリッド双方の長所が失われてしまいます。
  だから、ハイブリッドのパイオニアのトヨタも、ディーゼルハイブリッドを出していなかったのですが、さすがディーゼルが主流の欧州メーカーですね。やってくれました。
  ただ、単に「世界初」ということを強調したかっただけなのか、本当に優れたシステムなのかは分かりません。


  私が知っている(経済ニュースやマーケット情報を見る)限り、フランス人は「アホ」なので、半信半疑ではありますが(笑)。やるべき価値のある技術なら、とっくに日本メーカー(特にトヨタ)が開発してますって。




  全体的に見て思ったのは、環境技術は日本メーカーがかなり先行しているイメージで、実際にそうだと思いますが、欧州メーカーも元々意識の高い地域なので、かなり善戦しているなぁと思いました。
  ただ、今後、ハイブリッドや電気自動車なんかが主流になった場合、基礎的な技術の積み重ねが十分なのか疑問は残りますし、大量に電池やモーターをどこから調達するのか(やはり日本? それとも韓国? もしかして中国? まさか自前?)という問題はあります。
  それとも、クリーンディーゼルと推すのか? 徹底的に低燃費エンジンの開発に注力するのか? ハイブリッドを確立してしまった日本メーカーと比べると、軸が見えないですね。
  とても勉強になりました。