わけあり相場

  日々のマーケットの動きをウォッチしていれば分かることで、あらためて指摘することもないと思いますが、相場は基本的には上昇局面と下落局面の2つの波で構成されます。
  日経平均にせよ、ドル・円にせよ、一応、おおむね数日周期で上昇したり、下落したりしていますが、1週間、1カ月、3カ月、半年、1年とといった、より長い時間軸でみると、方向性が見通せず、基本的には、狭いレンジでの動きに終始してしまっています。
  ひと昔前は、日経先物も1カ月の間に2000円下げて1000円戻すといったダイナミックな動きがみられたのですが、リーマン・ショック以降、特にこの1、2年は、上下の変動幅、すなわちボラティリティが小さくなり、意味不明な動きをすることが多くなりました。
  ある程度、上昇のめど、下落のめどが立っていれば、それに向けて市場参加者のエネルギーが集約され、わかりやすい動きになるのですが、最近では、ほんの少し上下するだけでも各参加者の思惑がからみ、動きが取れなくなってしまい、「毎日がメジャーSQ前」みたいな状況になってしまっています。
  相場が動きづらいというのは、大体わけありのことが多いですが、実際、裏があるからこそこういう動きしかできないのでしょう。
  ドル、ユーロがからむ為替にせよ、株にせよ、国債にせよ、方向性としては「下落」しかあり得ないわけで、一度、明確な方向づけをしてしまうと、ブレーキがかからなくなってしまう恐れがあります。投げ売りが投げ売りを呼んでおそらく、欧米の大手金融機関はほぼ軒並み、市場からの退場を余儀なくされるでしょう。
  金融機関どころか、米国やイタリア、スペイン、ギリシャなど、財政規律や経済の秩序を維持できなくなった国家は、世界から見放される運命にあります。
  最悪の事態を回避しようと、何やかやと画策しているようですが、錬金術はないわけで、破綻させるべきものはいったん破綻させないと、本当の意味で次の一歩を踏み出せないわけです。まあ、欧米の人たちは、本来ならば、20年でも、30年でもタダ働きをして、償うべきなんでしょうけれど、現実的にはそんなことができるわけもなく、健全な経済運営をしている国の人たちもとばっちりを食うわけです。
  リーマン・ショック後、2009年春あたりから、各国の景気刺激策や金融機関などに対する救済策がそれなりに効果を挙げ、ひとまずマーケットは落ち着きを取り戻したわけですが、問題を一時的に棚上げにしたにすぎず、メッキがはがれると、再び緊迫した状況に陥るのです。
  そこで、米国は2010年に金融緩和の第2弾をやるわけですが、これははっきり言ってやり過ぎだった。諸悪の根源である、米国の株式が意味もなく上昇し、しかも、指数だけでみると、リーマン・ショックの水準以上に戻してしまった。
  でも、そんなインチキをしても、簡単に見抜かれるわけで、米ドルは下落がとまらず、反転の見込みもまったくない。ギリシャ同様、実質デフォルト状態と判定されている状態です。ドルの価値の剥落に対して、エネルギーや金などの価格が上昇しており、米国の経済力が相当な勢いで落ちていることになります。
  それでも、米国はこの期に及んで、株価を維持することで、かろうじて、見せかけだけでも、破たんを回避し、小康状態を保っているように見せかけているわけですが、いつまで続くかが問題ですよね。
  本当に復活できるのであれば、さっさとセリング・クライマックスをやって、ダブル・ボトムでも何でも形成して、さっさと上昇基調に戻せばいいのですが、先述の通り、一度、下落すると斜面を転がり落ちてしまい、再び這い上がることはできないので、無理に下げ渋っているわけです。
  こんなわけありの状態が続けば続くほど、市場や経済にゆがみが大きくなり、矛盾が噴出したときの、影響が大きくなると思うのですが、もはやなりふりかまっていられないんでしょうね。一時は、手の付けられない栄華を誇った人たちが、どのように転落するか、私たちは興味深く傍観することにしましょう。