何を目指すのか?

  何となく臭いなとは思っていましたが、10月31日の為替介入後も、小規模な覆面介入を行っていて、今月4日までに大規模介入を含めて、総額9兆円前後のドル買いを行っていたというニュースが、本日の朝刊各紙の報道で明らかになりました。
  安住淳財務相が「1ドル=76~77円の円高は行き過ぎ」旨の発言をしており、政府、日銀が78円を意識していることが改めて裏付けられた形です。
  東日本大震災からの復興のためのお金が必要だということで、臨時増税や将来的には消費税増税が話題になっているこの時期に、9兆円ですよ。大盤振る舞いですね。
  政府、当局の理屈としては、いずれ為替が安定した時点で、返ってくるカネであり、外貨準備に積み上げられる資産だということなんでしょうけど、今まで、介入に使ったカネは一体、どうなったのか? 米国がドル資産を手放すことを許すわけがないというのが普通の考え方だと思いますがね。
  介入は輸出産業の声を代弁した、経済界からの要望を受けてということなのでしょうけれど、代償はあまりにも大きいですね。現時点では、介入したカネがすべて価値を失ってパーというわけではないですが、返してもらえないカネはゼロに等しい。いわば死に金です。
  世界はすでに世界恐慌に突入していて、欧州の次は米国の債務問題や金融システム、基軸通貨の問題に波及するのは必至です。だから、1ドル=70円台などという“超円安”の水準で、介入するのは間違いです。マーケットメカニズムに任せて、下げるところまで下げるべきだし、それで採算の合わない企業は、米国以外に活路を求めるか、構造転換するしかないでしょう。
  円高以前に生産拠点のグローバル化はすでに進んでいて、低賃金で有利な条件でモノづくりができる国、地域へ工場が移転する流れには逆らえないわけで、その流れにあらがって、円安誘導したって、単なる延命策にすぎず、そんな産業が長続きするわけはないのです。
  また生産技術も向上していて、かつては高級品だったものも、今ではそこそこの値段で生産し、販売でき、コモディティー化が進んでいます。だから円高の問題ではなく、構造的な問題なのです。どうやって競争力のある仕事をつくりだしていくかが課題なわけであって、円高をどうかすれば解決する問題ではありません。
  そもそも、米国はすでに破たん状態なのですから、そこにカネをつぎ込むことがいかに不毛であるかということを考えた方がいい。
  環太平洋パートナーシップ協定(TPP)についても同様ですね。「自由貿易」は日本としては悲願ですが、政治力を使って、経済活動をゆがめているのは、米国にほかなりません。“自由”の名を借りて、金融ばくち、詐欺を世界規模で展開してきたのがこの国なのですから。
  金融のみならず、農業や医療、医薬品ほか幅広い分野で、インチキなルールを押し付けようというのが、TPPの趣旨であるのは言うまでもありません。
  そもそもフェアな貿易が行われたとしても、世界恐慌に向かいつつあるのに、貿易で金儲けをできる環境にあるとも思えませんけれどもね。
  少なくともこれから1~2年は世界恐慌の嵐が吹き荒れるので、別に交渉に乗り遅れようが、ディフェンスに徹するべきだし、安易な為替介入もやめた方がいい。金でも買い込んで、しっかり戸締りして家の中にこもっているのがベストでしょう。
  頭の悪い首相以下、民主党の皆さん、財務省、外務省のお役人の方々も、国を売るような無駄な努力はやめ、地道に生きていくことを考えるべきでしょうね。