21世紀の東アジア

  台湾総統選は、国民党の馬英九・現総統が野党・民進党の蔡英文主席を破って、再選を果たしました。中国との関係重視か、台湾の独立志向を強めるかが、大きな争点でしたから、今回の選挙結果で、より中国と台湾は接近することになることが予想され、東アジアにおける勢力図がほぼ確定することでしょう。
  21世紀はやはり中国の世紀であることがはっきりしました。私はこの結果は非常に妥当なものだと考えます。最近になって米国がいろいろと「アジア重視」などといろいろとちょっかいをかけますが、対共産圏に対する防御の砦の一角と考えられていた台湾にすら影響を及ぼせないということがはっきりしました。
  もし、台湾が経済的に米国に依存していれば結果は逆だったでしょうね。米国の直接、間接の後ろ盾を得て、民進党が僅差でも勝利していたでしょう。もはや米国に台湾を守る力はないのです。そのことがはっきりしました。
  普天間飛行場をめぐって、台湾と目と鼻の先にある沖縄が揺れているのも、米国のアジア支配がもはや行き届かなくなっているということです。台湾にせよ沖縄にせよ住民はうすうすと気づいているのです。「米国はもはや役に立たない」と。現実的な選択だと思いますけどね。
  日本の各種報道やツイッターなどを見ていると、女性候補だということもあったのでしょうが、民進党に対してシンパシーが強かったですね。いまだに米国依存の意識から脱却できていないということです。時代は確実に変わりつつあるというのに、頭が切り替えることができないという、本当に心もとない限りです。
  このブログでは、電機産業について話題にしますが、先般、書評として取り上げた「中国モノマネ工場」(日経BP社、阿甘著、1800円)でも余すところなく触れられている通り、スマートホンにせよ、ノートパソコンにせよ台湾企業と中国企業がタッグを組み、世界を席巻しつつあるというのが、現在の潮流です。
  今は、薄型テレビ、スマホを中心に韓国メーカーが強いですが、それもいずれ時間の問題で、巨大な市場を抱え、しかも安価な労働力をフル活用できる中国、台湾のコラボがいずれあっさりと抜き去ってしまうでしょう。韓国メーカーなど所詮は米国の金融資本の言いなりでしか動いていないわけですから。
  それほどに中国と台湾の結びつきは強いのです。そんな台湾がわざわざ中国との関係を後退させてまで、独立を志向するでしょうかね?
  選挙結果自体は、かなりの接戦で、ほんの一部が寝返っただけで、勝敗が逆転していた可能性もありました。また、中国とのビジネスはうまくいっているものの、台湾全体としては景気が低迷しており、貧富の格差なども深刻化しつつあり、与党の国民党に対する批判も強まっていることも事実です。
  ただ、独立性を強めたところでどうなるものでもありません。それに米国に台湾を養っていくほどの経済力ももはやないのです。
  中国と台湾は、地理的、経済的にも関係が強まっているし、中国自体、アジアの盟主、そして米国に代わる世界のトップに交代することが、もはや既定路線になりつつあり、東アジアに影響力が強い、中国との関係が深まる方向に動くのは当然でしょう。
  あらためて米国が凋落し、中国が勢いを増していることを実感させられる、選挙結果となりました。もはや中国が好きとか、嫌いとかそういうレベルではなくて、歴史の大きな流れとして認識しなければなりません。
  もちろん、東アジア全体が「中国に呑み込まれる」ということでもあります。ただ、それが果たして、すべて悪いことなのでしょうかね? 今まで米国に呑み込まれていただけの話で、再び、近代(日本だと江戸時代)以前のアジアに戻るということにすぎないわけです。
  今まで米国を中心に東アジアの秩序も成り立っていたので、中国とどう付き合っていくか、私たちは真剣に考えなければならないし、中国自身、どうすればいいのか、手探りの部分もあるでしょう。経済的にメリットを享受できる部分もあれば、摩擦や緊張感を感じることもあるでしょう。
  ただ、何千キロも離れた米国がわざわざアジアにやってきて影響を及ぼすという時代はもはや終わりだし、後戻りはできないのです。もともと地理的、歴史的に関係が強かった中国と、周辺の国々が再び密接な関係を構築するというのは自然な流れでしょうね。むしろ、米国に妨害されて、没交渉に近かった今までの方が異常な状態だったといえるのです。
  はっきりさせなければならないのは、ゲームはすでに新しいルールで展開しているということです。そして、このルールは少なくとも私たちが生きている間は、揺るがないでしょう。米国の顔色を窺って、新しい時代への対応が遅れることがいかに愚かで、馬鹿らしいか、いいかげんに目を覚ますべきでしょうね。