ディフェンス

  経営がうまくいかない企業はただちに立ち去れ、というのが本来の資本主義のあり方なのですが、偉そうに資本主義のルールを押し付ける国に限って、「大き過ぎてつぶせない」という勝手な理屈を立てて、ゾンビのような企業を公的資金で支え、おかしなことがまかり通っています。
  サブプライムローン問題の元凶と言える、フレディマック、ファニーメイの二つの住宅公社はなんだかんだ言って生きながらえていますし、AIG、シティ・バンク、バンク・オブ・アメリカ、メリルリンチ、モルガンスタンレーといった巨大金融機関も実質的に破たんしているにもかかわらず、のうのうと経営を続けています。
  金融機関のみならず、ゼネラル・モーターズ、クライスラーだって、一度は死に、生き返ってもなお、つまらない無駄な車をつくっているのですが、国を挙げてトヨタバッシングをすることで浮上しました。
  民間企業のみならず、ギリシャやアイスランドなんていう国はもはや財政的にたちゆかず、国家としての体をなしていないのですが、デフォルトは起こしていないということにされています(2012年1月現在)。
  欧米の人たちは、日本が同じようなことをやれば、こぞってバッシングを加えるのですが、奇妙なことに自分たちがやる分には何も問題はないようです。1990年代後半から2000年代初頭にかけて、日本の金融機関が不良債権問題で苦境に陥った時、容赦なく批判したにもかかわらずです。
  ギリシャは一段落した感じですが(問題は何ら解決していないが)、ポルトガルやらスペインやらイタリアやら何やらで、いろいろと大きな壁が立ちはだかっていることに変わりはなく、現在の金融市場を見る限り、厚顔無恥にも、ユーロ圏の国家破綻は、まるで何事もないかのようにスルーするようですね。
  人類史上最悪の債務を抱え、欧州なんかよりもはるかにひどい状況にある米国も同様ですね。ずっと前から国家破綻状態にあるにもかかわらず、いまだに世界のリーダーのつもりで振る舞い、あろうことか、ヤクザのような因縁をつけて、また、外国に戦争を仕掛けるつもりのようです。
  腹立たしさを通り越して、あきれてしまいますが、連中が白旗を揚げるか、誰かが「ゲームオーバー」だと認定しない限り、一応は生きながらえることになります。
  今年は年初に、いろんな矛盾が覆い隠せなくなって、金融市場的に、あるいは政治経済的に、大きな動きが起きることを予想し、欧米は一層の苦境に陥ることとみていましたが、追加金融緩和という国家レベル、グローバルレベルでインチキをやり、一応、当面の底割れを回避させました。世界をぬかよろこびさせているにすぎないのですが、敗北を認めないということは、現体制をなんとか維持させようという腹積もりのようです。
  日経平均は2月中旬まで、大きくは暴落しないものの、半年ごとに500円ずつ値を切り下げる、ドル・円もしつこく値を維持しつつ、3カ月に1度、5円くらい円高が進行し、そのたびに、慌てた日本の当局が3~5兆円規模の介入に乗り出すみたいな状況が続いていました。
  1ドル=75円、1ユーロ=100円で、日本のほどんどの輸出企業は立ち行かなくなり、あのまま状況が続いていれば、今年半ばぐらいにおそらくゆでガエルのような状況になっていたことでしょう。
  円高、そして株安傾向がすでにこの3、4年ずっと続いていたので、久しぶりの明るい兆しに世の中全体が緩みつつありますが、政府や日銀は、このまま局面が変わるとでも考えているのでしょうか? 一部の人はうすうす気づいているでしょうけど、スケジュールが1、2年あるいは3~4年遅れるだけの話で、破滅的なシナリオは継続中です。
  このまま悪あがきを続けるようですが、欧米はもはやかつてのような状態には戻れないし、戻らないのです。政治家も官僚も財界も、シビアな認識を持つべきなのですが、米国に洗脳され、欧州にかぶれているのでそれができません。
  非常事態だし、ある意味、欧米との戦争状態にあると考えた方がいい。だから、せっかく破滅までに猶予を与えられたのだから、これをチャンスととらえ、日本は何を守るのか、守るべきなのか、なりふりかまわず考えるべきですね。
  特に、守りたいのはものづくりです。すでに中国の圧倒的な力で、根こそぎ吸引されようとしているのに、これ以上、技術やものづくりのノウハウ、生産管理を失うことはあってはいけません。大企業は海外生産の比率を拡大することなどでしのげる部分はあるでしょうが、中小企業はそうもいきません。
  だから、公的資金を使ってでも守るべき企業は守るという姿勢を示した方がいいですね。しかも資金を投入しても、貸した金は返ってこないぐらいの覚悟も必要です。
  欧米もそうはいつまでも悪あがきを続けられないとは思いますが、長期戦の構えは必要です。欧米が破綻し、世界は混乱するでしょうが、焼け野原になっても、種さえ残っていれば花を咲かせ、実を収穫することができます。
  自分たちでも存在意義や何をやっているのかわからない、米国の金融機関が生き残っているのです。まっとうに生きてきた中小企業を延命させることの何が悪いのでしょうか?
  あからさまに支援をすると、またバッシングを受けることになるので、何とか巧妙に目くらましをして、救済する方法を考えねばなりません。