このところ、とにかくがむしゃらにつけ麺を食べまくりましたが、皆さんもそろそろ飽きてきたと思いますので、つけ麺スペシャルは今回でいったん小休止してもいいかなと思います。何より私自身、さすがに豚骨魚介の濃厚つけ汁ばかり続くと、別の味付けのものを食べたくなりました。
どうしても一度、足を運んでおきたい店があったので、先日、江の島へ行った帰りしな、行ってみました。つけ麺好きにはよく知られている「TETSU」です。千駄木が本店なのですが、品川の「麺達七人衆」にある支店の方を訪れました。
TETSUも豚骨(鶏ガラも)と魚介を合わせた、濃厚なスープで知られる店です。東京のつけ麺店は豚骨魚介が主流で、店によって微妙に味が違い、東京駅八重洲口の「六厘舎」や、住吉の「中川會」など頭一つ、二つ他店より抜け出た存在もあるのですが、基本的な味の組み立ては同じです。
なので、豚骨、魚介の根底にあるものはどれも変わらないのか、それとも、同じ豚骨魚介でも、全然別物もあるのか確かめたくて、TETSUのつけ麺を試してみることにしました。
ゴールデンウイークの初日、江の島を訪れた帰り、鎌倉から横須賀線に乗り、品川で下車したのは午後6時半ごろでした。江の島でしらす丼を食べ、途中ソフトクリームやらコロッケやらを立ち食いしたので、それほど空腹ではなかったのですが、連休で人出が多く、しかも夕食時にさしかかっているので、混んでいるのかなと思い、すぐにお店へ向かいました。
そしたら、予想に反して、それほど混雑はしていませんでした。というより、麺達七人衆自体、なんとなく閑散としていて、あまり地の利がよくないのかなと思いました。前に麺達七人衆の「なんつっ亭」を取り上げた時も触れましたが、品川は新幹線が停車し、京浜急行のターミナルではあるのですが、通過客がほとんどで、百貨店や大型の商業施設も集積しておらず、あまり人が滞留する場所ではないので、条件としては不利ですね。
味玉つけめん(850円)の大盛(+100円)を選びました。私が訪れた時は、なんつっ亭なんかは、客の入りが悪かったのですが、TETSUはいま流行のつけ麺店で名前が知られているだけあって、麺達七人衆全体が客が少ない中、店内は8割ほど埋まっていて健闘していました。
5分ほどして“着丼”。平均的な待ち時間ですね。まずはレンゲで軽くつけ汁をすくって、いつもの“儀式”を。他店と比べると、ややあっさり目の味でした。豚骨魚介であるというベースはやはり同じでしたね。
つけ麺なので、麺にからむようにつけ汁は濃厚にしてあるのですが、何となくさらっとした感じもあって、後口も悪くないですね。週に何度も通っても飽きないような味でした。
麺は自家製麺だそうで、浅草・開花楼や、タピオカ入りの麺と比べると、もちもち感は抑え目ですが、つけ汁との相性がよく、とてもバランスが取れていました。弾力のあるもっちりとした麺が人気ですが、以前に指摘したように、これを好まない人もいるし、私自身、讃岐うどんのように、だしをはねかえしてしまう弾力感はあまり好みではありません。TETSUの麺は弾力を求める人、そうでない人双方から受け入れられやすいのではないでしょうか。
あちこちでつけ麺を食べて回っていたこともあり、江の島やら鎌倉やらを散策して疲れていたこともあり、こうした状況でつけ麺はややヘビーかなとも思ったのですが、取り越し苦労で、いったん口にすると、次から次へと後を引き、あっという間に完食してしまいました。
ちなみにつけ汁は食べ進むにつれて冷めるので、店員さんに頼めば焼き石を入れてくれます。これはユニークなサービスですね。私の隣の席の人が頼んでいましたが、私は勢いで焼き石で温めなおすことなく、食べきってしまいました。
最初は、客の入りが思ったほどでなく、思わず心配してしまいましたが、午後7時前になると、徐々に増えだして、店の前に列ができていました。それでも、列があるのはTETSUだけで、ほかのお店は、それほどの混雑ではありませんでした。
煮干しラーメンだとたまに、店によってこんなに味わいが変わるのかと、驚かされることがありますが、豚骨魚介のつけ麺は、これまで私が見てきた限りでは、それほど大きなばらつきはなさそうです。
今のままでも十分おいしいのですが、単なる豚骨魚介だけだと、横並びになってしまうでしょうから、激しい競争に生き残っていくためには、いろいろと新機軸を打ち出したり、他店との明らかな違いを感じさせる味付けが必要になるでしょうね。
どのお店も研究熱心だし、努力家が多いので、いずれ、私たちをあっと言わせるような新しい味が出てくることでしょう。それを楽しみにしたいと思います。