夏枯れ ドラマ批評

  民放のドラマを見ていると、だいたい世の中の流れとか、今一番勢いのある人やテーマについて、把握することができるのですが、今クールはどうも不毛っぽいですね。毎週楽しみにして見るようなドラマは今のところありません。夏枯れです。完全に。
◆落ち目◆
  どうしてもTBSに対して苦言を呈することが多いのですが、また今回も。「美男ですね」は韓国ドラマの日本版リメークということですが、リメークどころか「パチもの」ですよね。ドラマのTBSがまさかここまで落ちぶれるとは思いませんでした。初回視聴率は10.9%ということなので、斜陽のTBSとしてはまずまずなんでしょうけど、いちおう公正な評価をするため、あのひどいドラマの初回2時間SPを全部見るのは拷問に近いものがありました。
  韓国ドラマってやはり日本と比べて、金をかけ(られ)ないので、つくりが安っぽいんですよね。中にはそれなりに魅せるものもありますが、ほとんどは、チャチです。基本的には日本の昼ドラレベルなんですよ。ストーリーの内容といい。すべてが。だから、主婦層から韓流ブームに火が付いた。
  日本ではあのクラスのドラマはもう作れないんです。それなりに人件費がかかるし、ストーリーも視聴者をそれなりに納得させる目新しいものでないといけない。買えばいいんですよ。韓国から。低価格の日用品を中国から輸入するのと同じです。
  そもそもそんなものを日本版にリメークしようとするという時点で終わっています。さらにひどいのは、TBSがつくったものを見て、多分、韓国の人も「ひでぇ」と言うんじゃないかと思うんですよね。ストーリーもパクりだし、キャストも韓国人ぽい顔の人しかそろえていない。というか全員が韓国人に見えました。せりふも韓流ドラマっぽく米国かぶれのオーバー・リアクションが多く、日本版にした理由が全然わからない。
  作り手の魂みたいなものもこもっているので、原作の韓国版を見た方が絶対に迫力があると思います。これって、5回くらいで打ち切られるんじゃないかと思うほど、悲惨なドラマです。
◆黄門さま斬られる◆
  TBSといえば「水戸黄門」終了。まあ、マンネリだと思うのですが、視聴者層を考えるとどうなんでしょうねぇ。民放の雄として、時代劇をつくる体制は維持しておく必要があるのではないかと、老婆心ながら思ってしまう。最近は視聴率10%取れるかどうかの状態だったそうですが、じゃあ後継番組は10%以上は確実なのか? 今のTBSの実力じゃ無理でしょう。
  そもそも今のご時世、10%取れれば御の字と発想を変えないと。その中でどういう層をターゲットするのか、番組を続けることでTBSのイメージをどう構築するか、戦略が見えない。むしろ固定客を失うデメリットの方が大きいと思います。
  水戸黄門終了発表後の里見浩太朗さんの「後ろから斬りつけられた」という辛辣なコメントがすべてを物語っています。
  落ち目の会社って何をやっても裏目裏目ですよね。キラー・コンテンツは亀田兄弟くらいか? 以前は6チャンネルをつける時間は長かったですが、今は「情熱大陸」か「リンカーン」ぐらいですかね。あと「王様のブランチ」か。報道番組も偏向左翼が勢いがよかった時代はそれなりに面白かったのですが、今では体制に取り込まれてしまったって見る影もない。原発報道ではテレビ朝日の方が福島の事故後、割ときわどいところを突いていてTBSと明らかに差をつけている感じです。こんな会社が公共の電波を占有していていいのですかね。楽天・三木谷さんの言っていてことが正しかったのでは?
◆王者フジ失速◆
  テレビ業界をリードするフジテレビも、ライバル不在でゆるんで、失速気味です。月9「全開ガール」は、もう少し脚本を何とかできないのか。まあ、ターゲットが中学生とかやや知能が低い層なので仕方ない面がありますが。ストーリーはコミカル仕立てで面白い面もある。ヒロインに新垣結衣さんも悪くない選択。今回は北川景子さんかなと思ったのですが、実力不足か?
  「マルモ」の後の「花ざかりの君たちへ」はTBSの「美男ですね」よりも、ある意味むごい。熱狂的ファンの人には悪いが、前田敦子さんて、堀北真希さんのパチもんですよね。完全に。ドラマ自体も前回の「花ざかり-」よりレベル・ダウンしている。リーマン・ショック前と後の経済的な問題も背景にあるのでしょうか。それでも初回視聴率10.1%と大台をいじできたのはマルモ効果? 第2話は6.0%でさもありなんという感じ。
  火曜日は無難にまとめましたね。「絶対零度」「チームバチスタ3」は以前放送されたものの続編で、キャストも見覚えがあるので、安定していると思います。キャストも上戸彩さんはまあまあだと思うし、伊藤淳史さんと仲村トオルさんもこなれている。
  ただ、火曜日なんて捨て石でいいと思うんですけどね。せめてどちらか一方は冒険してもよかった。トップランナーにも余裕がなくなっているんでしょうね。
  木曜日の「それでも、生きていく」は、地味に注目株かもしれません。ただ、演技を見ているとやや私は臭さが目立つんですよね。満島ひかりさんは、あれ地でやってるのか? ああいう人って身の回りにいますよね。もし、あれとは正反対のキャラをこなせるなら、ものすごい実力です。瑛太さんはまあまあですが、ややくどいんですよね。
  満島ひかりさんはこれまであまり目立っていないので、謎めいた感じで売ればいいと思います。前クール(火曜日)の「名前をなくした女神」の尾野真千子さんも河瀬直美監督の映画には欠かせない人ですが、あまりテレビでは見かけなかったので、ちょっと目を引きました。NHKの次の連続ドラマを楽しみにしています。こういう人たちがもっと出てくれば面白いですね。
◆社会派◆
  日本テレビの「ブルドクター」は、「死因不明社会」といわれる日本の検死(監察医)制度の問題を取り扱っている社会派ドラマです。江角マキコさんははまり役ですね。ただ、米倉涼子さんや天海祐希さんあたりでも面白かったような気がします。篠原涼子さんもありか? かっこいい女優さんたちですが、マーケットの限られたパイをめぐって熾烈な競争が今後も予想され、楽しみです。
  石原さとみさんは、脱皮して次のステージに行けるかどうか。今のキャラはそこそこ人気があると思いますが、若い人もどんどん出てくるので、キャラをチェンジしないと、いずれフェード・アウトしてしまうでしょう。
  ストーリーはやや平板な感じですね。警察庁か法務省の広報番組みたいな感じです。これまでも2時間ドラマとかで似たようなものはありましたからね。問題提起はいいと思いますが、普通の人は畳の上で死ぬんです。なぜ監察医制度を拡充しなければならないか、もう少し説得力がないと。
  奇しくもフジテレビの「チームバチスタ3」も、司法解剖、行政解剖の問題をテーマにしています。海堂尊さんの作品が原作なので、独特なミステリアスな展開が期待でき、こちらの方がエンタテインメント性はありますね。
◆成長株◆
  深夜のドラマ枠は、肩の力が抜けているせいかゴールデンタイムよりも面白い、掘り出し物があります。でも、前クールのテレビ朝日「ハガネの女」は脚本か何かでもめたんですかね? ゴールデンに移って、ストーリーがだるくなってしまい、わざわざ「BOSS」を外れた吉瀬美智子さんの魅力を引き出せんでした。
  日本テレビの「名探偵コナン」は、お子様向けミステリーアニメのドラマ版で、ストーリーはそれ相応のものなのですが、30分ドラマなので、軽い感じで見れますよね。
  原作はお子様向けなのですが、忽那汐里さんは、「こんな人だったっけ」というくらい、大人びた感じに成長しましたね。演技ははっきり言って下手ですが、忽那さんをもっと見たいなという気にさせられます。ぜひゴールデンのドラマに挑戦してほしいです。
  テレビ朝日は金曜深夜のドラマはまだ始まっていないんでしょうかね。割といいドラマが多いんですよね。最近では「犬を飼うということ」。低所得層の一家の描き方がリアルで、主婦役の水川あさみさん、錦戸亮さんの夫婦(やや無理があったものの)が割と面白かった。
  この時間帯は、「ハガネの女」もそうだし、「特命係長 只野仁」とか「サラリーマン金太郎」とかもあったし、東野圭吾さん原作の「秘密」も、佐々木蔵之介さんと石田ひかりさん、志田未来さんのキャストがよかった。1時間ドラマで長いのですが、見せる内容が多いので、次作も楽しみにしています。