最近の若い人を見ていて、「かわいそうだなぁ」と思うのは、失敗することを許されていないことです。全く失敗できないというのは、言い過ぎかもしれませんが、日本全体が余裕をなくしていて、失敗に対して怒りつつも「若い人がやることだから仕方がないか」とか「次は頑張れよ」みたいな雰囲気はすっかり失われてしまいました。
それどころか、一度の失敗でその人のキャリアが全否定されてしまうというか、ネガティブな評価がつきまとってしまうという、非常に窮屈な時代になってしまいました。若い人に対してだけでなく、年長の人にも、仕事に対して厳しい目が向けられてはいますが、ある程度、経験や実績がある人と比べると、それがない分、圧倒的に若い人の方が不利ですね。
若い人の間でも格差が起きていて、器用な人、要領がいい人、人当たりがいい人は、就職活動でも、入社してからもうまく行きますが、そうでない人は、あらゆるところで壁にぶつかります。失敗が重なると、すっかり委縮してしまうし、ひどい場合には、引きこもってしまう人もいます。
10年くらい前は、まだ寛容さが残っていて、私なんかも結構、若気の至りで、偉そうなことを言ったり、上司にたてついたりしましたが、若者の横暴を温かく見守ってくれましたね。周りの人が忍耐強く付き合ってくれたことに本当に心から感謝したいと思います。
今の若い人が、そういう言動をしようものなら、「協調性がない奴」「使えない奴」「ダメな奴」というレッテルを即座に張られてしまい、まあ、おそらく、十中八九、干されてしまうでしょう。それでも使い続けてくれるならば、その会社は懐の深い会社だと思っていいでしょう。
問題なのは、若者の横暴を、制御したり、いなせる人がいないことです。今も昔も、どんなに偉そうなことを言っても、仕事ができない奴は評価されません。だから上の人間が、「これが仕事のやり方だ」みたいなお手本を示して、生意気な若い奴をぎゃふんと言わせればいいわけですが、そういう人はまずいませんからね。
前任者から引き継いだことを粛粛とこなし、前と同じようにやっていれば、それだけで満足してしまうという人がいかに多いことか。自分に自信や余裕がないから、いつも不満を持つ若い連中を引っ張れないし、ちょっと扱いにくい奴がいれば、持て余してしまうから、外してしまえ、無視してしまえ、みたいなことになってしまいます。
ゆとり世代の若い人たちのことですから、基礎学力はないし、考える力もないし、人とのコミュニケーション能力もない。そういう事情もあるのですが、会社が長期的な視点に立って粘り強く育ててあげる部分はあるべきだと思います。
じゃないと、単に頭も要領もよいだけの人間しか存在できなくなってしまいます。そういう会社や社会って、ある目的を達成するだけなら強いですが、所詮はカネだけ、利益だけの関係でしか結びつかないので、弱いですよね。欧米がいよいよ限界に達し、中国や韓国の成長モデルにもいまひとつ信頼が置けないのはそういうところにあります。
多少仕事で失敗しても、横暴が過ぎても、それでも受け止めてくれ、少しずつ一人前の社会人として磨かれていくというのが日本のモデルであり、社会全体の安定感を醸成してきました。
もっと若い人に対して、幼いころから厳しく教育、しつけをするべきだとは思いますが、それと並行して、年長者はもっと若者に対して寛容さをもってきちんと向き合うべきだし、リスペクトされるよう自分を磨かなければならないでしょうね。
人間ができることなんて知れているんですけど、それでも年上が若い世代に範を示せるくらい実力をつけ、自信を持たないといけないですよね。ただ、私の周りの上の世代は、右肩上がりで何の苦労も努力もせず、おかしな権利意識、世界観に取りつかれた人が多く、あまりリスペクトはできませんでしたけどね。
それでも、しかるべき関係を年長者と年下が持てなければ、結局、年下の人たちも、同じように年長者になった時に、年下からリスペクトされないという、悪循環に陥るわけで。
全体的に感じるのは、日本人は自分より若い人とのコミュニケーションを取るのが下手だし、無関心すぎます。いずれは若い人に支えてもらうことになるのだから、もっともっと若い人のことを考えてあげるべきだし、ときには気兼ねせず、摩擦を恐れずに言うべきことは言うべきだと思います。
日本人は長期的視点に立って物を考えるのが下手だから、こういうところはもろに弱点がですよね。でも、いい国、住みやすい社会を継承していくには、その辺の努力をしていく必要があるでしょうね。