映画「ブエナビスタ・ソシアルクラブ」は、ギタリストのライ・クーダーがキューバの老音楽家を探し出して、キューバ音楽のバンドを結成し、ニューヨークのカーネギー・ホールで演奏するという、ドキュメンタリー映画です。
イブラヒム・フェレール、ルーベン・ゴンザレス、エリアデス・オチョアといった、ほとんど知られていなかった、音楽家たちのセンス、才能は超一級で、キューバ音楽の実力を世界に知らしめました。
私も映画がきっかけでキューバにはまった一人で、実際にキューバに旅行し、さらに感動を深めました。カリブ海に浮かぶ宝石のような国ですね。
アルバムのリリースが1997年、映画の公開がたしか2000年で、9・11テロの直前。敵国である米国の文化の中心、カーネギーホールに掲げられたキューバ国旗が印象的でした。その頃はまだ、米国も敵国の文化にも寛容な大国としての余裕が感じられました。
キューバはご存知の通り、社会主義国で、米国の経済封鎖が続いているため、物資が不足し、庶民の暮らしは質素というか貧困そのものです。現状に不満を持ち亡命したり、海外に出稼ぎに出る人たちも少なくありません。
でも実際にキューバを訪れると、人々は陽気だし、楽しそうに生きている。社会主義ということもあって治安もいいし、中国のように観光客にたかるということもない(ただ、やはりたまに詐欺師まがいの人はいる)。なにより映画同様、音楽を愛する人たちで、夜な夜な街中のあちこちにあるクラブで夜通し、演奏とダンスが繰り広げられます。
米国などは人をだましてまで資源や富を搾取し、見せかけの豊かさを謳歌したわけですが、没落寸前で、それを支えてきた日本も、どうやら抱き着き心中ということになりそうです。
こうなると、何が幸せなのかということを考えるべきでしょうね。利口ぶって小賢しく立ち回って、必死にスマートなふりをするのか、自然や感性に逆らわずに必要以上に無理をせずに生きるのか。
世界はそう単純ではないとは思いますが、もう一度、何に重きを置くか考えてみるのもいいかもしれません。