私は世界恐慌が起きても、マーケットそのものは、たとえいくつかの市場(例えば国債、為替)は閉鎖されることはあっても、金とか穀物とか株式市場など伝統的に続いているものは存続するものとばかり思っていました。でも、最近の相場の動きを見ていると、果たしてそうなるか懐疑的になるようになりました。
陰謀論的になりますが、金融恐慌をあらかじめ予想したり、あるいはあおったりする勢力があって、市場は完全にコントロールされ、その勢力が次の世界の秩序づくりを主導するのではないかと思っていたのです。だから“奴ら”の動きをウォッチしていれば、ショートのビッグ・チャンスがあり、阿鼻叫喚の暴落が起きた後、絶好の買い場が訪れるものとばかり信じていました。だからある意味、楽観的に市場を見ていました。
しかし、最近の市場動向を見ている限り、その見方を修正、あるいは大幅に訂正しなければならないと感じるようになりました。
先を見越して相場を操っているのであれば、もう少し余裕ある動きがあってもいいと思います。奴らだって、次の一手を打つために資金が必要であり、上下にゆさぶりをかけることで、トロい連中から投資資金をむしり取り、一気に相場を暴落させていったんは、死んだふりをして底値で買い漁り、人々が大恐慌で苦しむ中、暴利をむさぼるのではないかと、考えていたわけです。
特にここ数週間の金融市場の動きを見る限り、余裕ある動きは感じられず、むしろ切羽つまった動きをしていますよね。今、世界中の視線が集中するユーロでさえ、たかだか3円とか5円とかしか動かない。かつてなら、平時でも1日でそのくらいの動きをする日があったわけですが、必要以上には値動きしませんね。ユーロやポンドなんて、1日に20円暴落した日もあったことからすると、抑制されていますね。
ユーロ危機は、リーマン・ショックなどはるかに上回るインパクトがあると言われる割には、現在のところはこの程度の動きしかしません。
下に行けないなら、それなりに戻りを入れて時間稼ぎでもすればいいと思うのですが、それをすると、戻り売りを浴びせられるので、仕掛ける方が出血する恐れがあるので、できないのでしょうね。
欧米の金融機関は、細かいところでいろいろと対立しながらも、一枚岩だという認識だったのですが、決してそうではないようです。実名を挙げると支障があるので伏せますが、大体の想像はつくと思います。新興国に積極的に関与する金融機関と、オーソドックスなメガバンクの間で大きな対立、断絶のようなものがあるようです。
当然、新興国に積極的に関与する金融機関は、覇権が米国から、中国やインド、ロシアなど新興国側に移るので、欧米、そして日本も含めて先進国は没落すると予想している。だから基本的にはショート・ポジションですよね。
一方、オーソドックスなメガバンクの方は、英国や米国の覇権があったからこそ、大きくなったわけで、現在のFRBの詐欺金融システムの恩恵を最も受けているわけです。だから、どちらかというとロング・ポジションの方ですね。
力関係としては、やはり覇権国を背景にしている分、オーソドックスな方が強い。さすがにやばいと思って、一生懸命、必死になって破綻を回避しようとしているわけです。一方、新興国勢力を背景にする方は、虎視眈々と来たるべき時を見据えている。
まあ、新興国に近い金融機関の方が部はいいとは思いますが、彼らにしても欧州や米国に寄生して生きていたのですが、中国やインドやロシアに本拠地を移して、本当に生きていけるのか? 新興国政府も、そうした事情を見抜いているので、郵便貯金を売り渡してしまったどこかの国のように、簡単に寄生虫をのさばらせるとも思えません。
また、自由で個人でもアクセスしやすいマーケットなど、世界的には先進国や一部新興国にしかないわけですが、欧米が混乱状態に陥れば、マーケットはさすがに存続できないでしょうね。残ったとしても、いろいろと規制がかかり、今までのように短気で利ザヤを稼いだりすることに対して、規制がかかる可能性が高そうです。
リーマン・ショック前まで存在していたような、平時のマーケットは、純粋な情報戦なので、個人でもそれなりに武装していれば、太刀打ちでき、知的ゲームを楽しめるのですが、もはや、とてもそんな状況ではないですからね。
個人投資家にとって、大きな楽しみが減ってしまいますが、これもまた相場、人生です。ちょっと前までは、私も危機感を抱き、いろいろ考えるところもありましたが、もはや達観しつつあります。なるようになる。そしてなるようになったで、また、次の展開を考えればいいのではないでしょうか。これが今の心境です。