ここ数営業日の金融市場の豹変ぶりに驚いている人は多いのではないでしょうか。私自身、「感謝祭明け」「クリスマス相場」と、この1か月か、1カ月半くらい、ずっと言い続けてきており、その見立てはほぼ当たっているし、潮目が変わる直前のタイミングで、動きは把握できているので、相場勘は冴えてはいるのですが、最近の動きは非常に気味が悪いです。
毎度指摘していますが、長期的に見て、積極的に「買う」理由がまったく見当たらないんですよね。IMFによるイタリア支援が材料視されているんですが、具体的に決まっていることは全くないんですよね。おそらく、マーケットが催促する形で、当局は動かざるを得ないんでしょうけれども、かなりのボリュームの金融支援が行われるにもかかわらず、誰が資金をねん出するのか、金融不安の抜本的な解決につながるのか、何も示されていません。
欧米は暦年ベースで、決算や会計が動く企業がほとんどなので、決算期に向けて、「お化粧」(まさに粉飾ですね)しておく必要があります。金融問題が表ざたになっている以上に深刻な状況であるにもかかわらず、目先の決算書やバランスシートを取り繕うために、株価を吊り上げよう、債券を安定させようという、コンセンサスができているものと考えられます。
これは、今年に限らず、例年のことですからね。感謝祭からクリスマスにかけて、非キリスト教国である日本も含めて、世間は何となく浮かれたムードに包まれますが、せめてこの時期だけでも気分よく、楽しく過ごしたいというのは人情でしょう。
それを重々理解しているからこそ、本来の経済状況を反映して下落が続いてきましたが、「相場が反転するかも知れませんよ」的なことをこれまで言い続けてきたわけです。
でも、世界の経済状況を考えると、こんなに安易に相場が“好転”してもいいんでしょうかね? というような思いもあるわけです。日本人に限らず、マーケット関係者って、「空気」に弱いですからね。いったん弱気になるとずるずるとしつこく売り続けるし、逆に上昇基調に転じると、たとえ根拠がなくても、「バスに乗り遅れるな」的な雰囲気になって、イケイケになってしまう。
米国の住宅バブルなんてまさにそうですよね。日本経済の動きを見ていて、ちょっと賢い人なら、バブルがはじけたらどうなるか、頭が働いたはずなんですけど、不動産価格、株価は永遠に上がり続けるような錯覚を持ってしまい、その結果、米国は二度と世界帝国として這い上がれないような破綻状況にまで陥りました。
まさに「根拠なき熱狂」だった、バブルに比べると、最近の株価上昇、ドルの堅調ぶりなんて、かわいいものなのですが、先週後半に日経平均8100円台でしつこく売られ続けたのが、週が明けてがらりと雰囲気が変わり、強気に転じた、この豹変ぶりは一体何なんだろうかと思わざるを得ないですね。
今年の米国のクリスマス商戦は、節約疲れの反動なんかも大きいんでしょうけど、例年にない盛り上がりのようですが、このところ発表される経済指標を見る限りは、決して楽観はできませんよね。先週発表された7~9月期のGDPは年率換算で前期比+2.0%で、速報段階から0.5ポイントも下方修正されましたし、今週末は月一度のビッグイベントである雇用統計がありますが、週間の新規失業保険申請件数の推移をみる限り、決して楽観視できない。
さらに、本日なんかは、フィッチという地味な会社ですけど、米国の格付け見通しを引き下げですよ。強い下押し圧力は今のところ見られないにしても、上に向けて爆発するような要因は何一つ見つかりません。強いて言うなら、エコノミストやアナリストの皆さんが大好きな「自律反発」にすぎないですよね。
盲目的に人の流れに安易に追従することこそ、恐ろしいことはないですね。まだ底値圏は脱していないし、クリスマスまでまだ日にちがあるので、上昇局面といっても、一筋縄ではいかないでしょうけども、今回の「強気相場」に怖さを感じるのはそういうところですよね。
日本や世界の起業家、一流経営者の「武勇伝」で多くみられるのは、「人のすることの逆のことをした(あるいは人のすることに追従しない)」からこそ成功したというケースですが、現在の状況はまさにそんな感じですよね。
もちろん、相場の流れに乗らないと、値幅は稼げないわけですが、果たして、いつまでその流れが続くのか、クールで冷徹な感覚を持っていないと、痛い目に遭います。先週後半はショートを確定した後、スタンスを転換し、「しつこく売ってんじゃねぇよ」と悪態をついていましたが、今度は、ある程度上昇し達成感が出たら、「しつこく買ってんじゃねぇよ」という局面が訪れると思います。そこは日々の売買動向、チャートの細かい機微をみながら判断していかないといけないですね。
めったにないボーナス相場だとは思いますが、常に冷静な視点を忘れないようにする必要があります。相場や人の動きって本当に怖いですから。