時間との闘い

  このところ金融市場を取り巻く緊張感がが緩んでいますが、世界情勢はまったく好転しておらず、あらためて、指摘しておきたいのは、「時間との闘い」であることを覚悟すべきだということです。
  日々、金融市場と対峙していると、どうしても細かい動きに一喜一憂してしまい、時間感覚を狂わせてしまいます。特に米国株が堅調なときは、「米国経済復活」「リーマン・ショックからの底打ち」「欧州金融危機に一筋の光」みたいな期待を抱いてしまいますが、中長期的には間違いなく欧米は没落する、ということです。
  ただ、没落するにしても、これまでに何度か経験したように金融市場の暴落で一気に堕ちていくのか、緩やかに衰退し、気づいたら中国が世界のトップになっていたみたいな形になるのかは分からない面があります。実際その時になってみないと分からないというのが正直なところです。
  内外の多くの識者、ジャーナリストが指摘するように、金融緩和だのなんだのやって、「時間を買っている」ような状況です。まだ時間を買える余裕がありますが、いずれ行き詰ることでしょう。どこでその兆候が表れるか注視する必要があります。
  まだ、大統領選までは半年以上ありますが、一時期、米国経済がどうしようもない状況に陥って、オバマ大統領が失脚するとの観測もあり、私自身、その可能性が高いとみていましたが、どうやら、そういう事態にはならない可能性があります。代わりに、クリントン対バイデンという水面下の暗闘が激化するのでしょう。オバマ大統領は辞任しないにしても、実質的にはもはや権力はないし、すでに操り人形状態です。だから失脚しているに等しく、予想は当たっているといっていいと思います。
  昨年夏、米国の財政問題がマーケットから注目され、金融市場に緊張が走って以降、これまでの動きを見る限り、手を変え品を変えていろいろと、小手先の対策を打ち、マーケットも迎合するので、簡単には暴落しないような形になりつつあります。
  短期売買をするトレーダーにとっては、ストレスがたまるし、短気を起こしかねませんが、ひたすら我慢して、動くときに乗るしかないですね。基本的には、長丁場であると覚悟しておいた方がいいでしょう。欧米の連中は、ろくに仕事もせずに一発逆転のようなことしか考えず、虫けらのような連中ですが、一寸の虫にも五分の魂、生存本能を発揮し、悪あがきをしている最中です。
  第2次世界大戦だって、ドイツがポーランドに侵攻し、日本が真珠湾を攻撃してから、決着がつくまで3年、4年という年月がかかっているのです。世界を支配してきた欧米から、新興国に主導権が移るという、500年に一度の歴史的瞬間、あるいは世界最終戦争(戦闘などは見えない形の)とも言えると思うのですが、勝敗がつくまでそれなりに時間がかかるとみていいでしょう。特に勝ち組でメーンプレーヤーである中国は、老獪であり、あわてて事を起こすよりは、機が熟すのをじっくり待っています。
  欧州と米国を合せて、範囲をどう設定するかにもよりますが、人口は5億とか、6億くらいでしょうか? 人口60億人のこの世界では少数派にもかかわらず、大してリスペクトされることもしないのに、偉そうに君臨してふんぞり返っているのです。
  豊かさを求めて、懸命に努力し、働いている人たちが中国、インドにそれぞれ10億人超、さらに中南米、アフリカなんかも続いています。ルワンダとかコロンビアとか、ついこの間まで内戦が続き、国土は荒廃し、どうしようもないと思われていた国々が目覚ましい発展を遂げています。
  新興国の人々の所得は、驚くべき勢いで伸びており、欧米の経済的な優位は明らかに崩れつつあります。それでもなお、金融ばくちと不動産ころがしだけで成り立っていて、何の新しい価値も生み出せない欧米が世界をリードできると考える根拠は何でしょうか? 局所的にはすぐれたビジネスモデルやアイデアが散見されるのは認めますが。
  とにかく、どっしりと腰を落ち着けて、世界情勢を分析しながら、過ごしていかないと、短期的に発生する、小さな渦に巻き込まれて、おぼれてしまいます。
  その一方で、個人レベルではやはり、あらゆる事態を想定して、準備しておかなければなりません。矛盾するようですが、いつ何が起きても迅速かつ的確に対応できる体制を築いておく必要があります。
  そういう意味では、昨年の東日本大震災はいい教訓になりました。私自身、有事に備えて、震災前から水とか必要な食料、手元の現金、常備薬など手厚く準備してきたつもりでしたが、いざ、未知の事態に直面すると、やはり右往左往してしまいましたからね。
  一般の人よりは、悠然と構えることができたし、米、麺類は2~3カ月分、ペットボトルの水なんかは50本ぐらい持っていたので、全然困りませんでしたが、それでも牛乳、卵とか生鮮食料品は備蓄できないし、スーパーから一斉に姿を消した時は恐怖でした。
  金融危機や派生して経済パニックになると、最悪の場合、金融や物流が震災の時以上に乱れることも予想されるので、さらにひどい状況を想定しておく必要がありますが、これも万全な準備というのは難しいでしょうね。でもやるべきことはやらなければなりません。
  あとは、財産の保全と、ショートでぼろ儲けする準備(笑)です。これに関しても、何があるかわからないので、それなりの心づもりはしておく必要があります。預金封鎖とか、金融商品の取引中止、利益の引き出し制限みたいなこともあるでしょうからね。単純に浮かれることはできません。
  このところ何度も強調していますが、身軽にしておくのが一番ですね。いざとなったら、大胆に動けるよう、持っている物はなるべく必要最小限に減らしておくべきだし、仕事や人間関係など身の回りの状況をしっかり把握し、シンプルにしておくべきだと思います。そうしておけば自分が持っているもの、足りないもの、長所、短所がはっきりと見え、次の行動がしやすくなるはずです。
  とにかく、大きな流れでは、長期戦に備えてどっしりと構えるべきだし、短期的には一日も早く、身辺の整理をして、いつ何が起きようと、あらゆる事態に対応できるよう、二段構えで準備しておくべきでしょうね。