トレーダーとして一番怖いのは、相場が動かないことです。投資の鉄則は(これはすべての経済活動にあてはまることでもありますが)、「安く買って高く売る」こと、空売りができる場合は「高く売って安く買い戻す」ことです。なので相場に値動きがなければ成り立ちません。
リーマン・ショック前のプチバブルの時代は、まだ、小金持ちの個人投資家がたくさんいて、ネット証券が出始めたことも後押しして、値動きが(恐ろしいほど)よい、新興株がもてはやされました。
東証マザーズの指数なんて、ジャスダックが台頭したこともありますが、2000ポイントくらいあったのが、今では300とか400とか、往時の5分の1、6分の1のレベルまで下がっています。
私自身、個別株に熱中していた時代もあって、値動きの良かったネット関連株や不動産、不動産投資ファンドを手掛ける会社の株を転がしたりしていましたけど、当時、取引した株は額面数十万円だったのが、数万円、数千円にまで落ち込んでいたり、会社そのものが存在しなくなったりしているものがほとんどです。
こうした株は値付けが全くでたらめだったので大きな修正を迫られたわけですが、それでもマーケットがまともに機能しているんだなと思ったのは、介護関連の株がやや下がってはいるものの、その当時とほとんど変わらない価格水準で推移していることですね。介護分野はこの日本で数少ない成長分野であり(ちょっとさびしいのですが)、それがきちんと評価されているということは、マーケットというのは捨てたもんじゃないなと、安心させられます。
正当に評価されるべきものが適正な価格を付けるというのが、正しいあるべき姿ですが、みんながみんな正しい評価、判断を下せるわけではありません。だから、かつての新興株同様、間違った価格を付けることが往々にしてあり、それもまた相場です。
人々の犯す過ちや錯覚はトレーダーにとって飯の種です。器用に相場の波に乗れる人もいれば、流れの反対ばかりを行ってしまう人もいる。いろんな人がいるのがマーケットです。参加者や資金が細ってしまうと、ダイナミズムはうまれません。
私が一番恐れているのは、相場が壊れてしまい、ボラティリティーや活力を失ってしまうことです。現に、昨年一年、そして今年の年初から1、2カ月を振り返ってみると、先物やドル・円は、行き場、目的を見失ってしまい、迷走状態になる時間帯が長くなってしまいました。
背景には、欧米主導の金融資本主義がいよいよ行き詰りつつあるということ、一部の人たちがやりたい放題やって、しかも失敗し、政府が市場に介入したことで、マーケットが機能不全を起こしてしまったことがあります。
2月中旬から、各国の金融緩和や、欧州問題を一区切りさせたことにしたことで、相場の動きにゆとりが出てきましたが、政府の介入があってのことであり、偽りの値動きであることは言うまでもありません。
やはり、トレーダーとして一番望ましいのは、自然な形で相場が動くことですね。本当の意味でのマーケットに対する理解度、投資の実力が試されます。
だから、このところ、私は真剣にドル・円、日経平均先物以外に、積極的に参加できるマーケットをさがしています。
金や原油なんか商品先物は研究する価値があり、やりがいもありそうなのですが、チャートの動きなどみているとやはり勝手が違いますね。金融市場の裏返しで値が動く部分も大きいので、結局は金融市場が政策介入により値動きすることで、それに反応する形で商品価格も動くので、結局は、金融市場を追っかけるのと同じことになってしまいます。
バレンタインデーを境に、ドル・円、日経先物がはっきりした動きに変わったときは、正直、長年取引し慣れているので、「やりやすいなぁ」と、しみじみ思ったものです。やはり、自分自身がよく知っている土俵で戦うのが一番戦いやすいのです。蛇の道は蛇ということです。
いつまでもドル・円、日経平均先物で稼がせてもらえればそれでいいのですが、いずれ、金融市場は崩壊し、今あるマーケットがマーケットとして機能しなくなる時がくるでしょうから、覚悟し、それに備えて準備しなければなりません。新興株が暴落し、さえない値動きになってしまったのと同じ道をたどるでしょう。
今の状況に安住せず、新しい土俵をさがす努力も必要です。市場を動かす原理というのは、根本的な部分では大きな違いはないでしょうから、慣れれば、対応できるはずです。そう信じて。