私は「欧米のインチキにだまされない」と自負してきたつもりですが、どうやらだまされていたと認めざるを得ません。要は「すでに欧米は国家破綻している」のだということです。目の前の金融市場の状況から、その事実は明々白々なのに、全く気付きませんでした。
欧米が国家破綻する前後に、金融市場が暴落、クラッシュするだろうと当たり前のように想定してきました。しかし、どうもその前提は間違っていたようです。この期に及んで、もちろん、企業収益が好調であるという事情もあるのですが、ダウが10000ドルを超える高水準を維持しています。その気になれば、経済が荒廃状態にあろうと、金融市場を高値につりあげることなんて、ドルを刷り散らかして、投入すれば簡単にできるわけです。見せ掛けだけをとりつくろうことなんていくらでも可能なわけです。
ただ、その粉飾のとばっちりを誰かが受けることになります。日本は2010年秋以降、「行き過ぎた円高を修正する」などの目的で、為替介入や金融緩和を繰り返してきました。総額は表ざたになった分だけでも20兆円を超えていますが、何か効果はあったでしょうか? 実態は米国債を買わされただけのことです。
もちろん2月14日の金融緩和発表後、1ドル=77円台から84円台まで上昇したのは事実だし、3月の決算期末で、輸出企業の円転などに効果があった点は評価すべきでしょう。それに、放置していたら、ずるずると円高が進行していたでしょうから、激変緩和とか時間稼ぎの意味合いはあったでしょう。
ただ、これだけの大金を投じておいて、株価も為替も株高、円安は長続きせず腰折れ状態です。せめて半年、1年と効果があればいいのですが、欧米の金融、経済情勢があまりにもひどい状態にあることや、インターネット環境の整備で、情報が即座に隅々に流れ、すぐに相場材料として消化されることから、見せ掛けだけとりつくろっても簡単には相場は反転しないということです。
すなわち、みんな意識するしないにかかわらず、少なくとも「異変」としては感じ取っているし、公言しないにしても、かなり相場について知り尽くし、影響力を持つ立場の人も少なからず「欧米経済はもうとっくに終わっているよ」とみているはずです。
ネット時代でなければ、政策介入を受けて、もっと余裕のある、能天気な動きがみられたかもしれないですが、先々のことまで考えて、早々と次に何が起こるかを織り込んでしまったわけです。
ユーロに関しては、ドイツ経済が健全であることもあり、簡単には崩壊しないこと、ドルについては、曲がりなりにも米国は現在でも覇権国であり、さすがに“真実”を喧伝したり、ドルを空売りしたりしようものなら、どういうリベンジを受けるか分からないですから、積極的には売り崩せないだけの話です。
また、米国はもはやよれよれの状態ですが、自分たちの延命を図るため、手下の日本やドイツ、韓国あたりを捨て駒にして、最後の最後まで搾取し続けることもできなくはない。そこはさすがに世界帝国だっただけはあり、“国力”といえなくもない。
ただ、ドル・円相場をウオッチしていると、ドルはもはやゲームオーバーだといっていいでしょう。わずか数年の間に何十兆円を投入しているにもかかわらず、1ドル=70円台から抜け出せないのです。本来の価値が40円とか50円でしかないのだから、あるいはすでに紙切れと化しているのだから、むしろ健闘しているといえるでしょう。
ちょっと下げると、金融緩和や為替介入をちらつかせられ、そこから売り込む動きが止まってしまうし、いまだに頭の弱い人たちは、大手金融機関の金融マン、一般投資家ともに、2月から3月にかけての残像が残っていて、「絶好の買い場」だと勘違いしている向きも多いので、「こんなところで買うかな?」というような変な価格帯でそれなりに買いが入り、下支えされます。
ドルや株を買っている人たちは、つっかえ棒にされているにすぎません。リーマン・ショック前までならば、あるいはつい最近までならば、「はしごを外された」というような程度で済むでしょうけれども、「いつか米国経済は復活する」みたいな幻影を植え付けられ、ロスカットのタイミングを逸したら、地獄の底まで一蓮托生です。
そして認識を改めなければならないのは、すでに欧米の経済が荒廃、国家破綻しているからこそ、こういう動きをするのです。自分たちが延命するためには、最後まで世界を欺き通し、権力を握る一部の人たちが有利な条件を勝ち取る。そのためには、見せ掛けだけでもかろうじて金融市場が機能していることを示しておく必要があります。
実際には、こういう金融経済の実態を織り込めば、ドルやユーロ、株価は現在の数分の一であれば良い方なのですから、今の価格帯は、相当上滑っているということになります。だから、こんなところで「割安だ」と思って、下がったところで買うのは愚行です。下手すれば、紙切れ、ゼロに近いものを中途半端な価格帯で、買わされているにすぎないのです。それでも、買って夢を持ちたい人、幸せが感じる人がいるならば、無理に止めることはしませんが。
時々、相場の雰囲気や、不可解なタイミングで政策介入、さらには格付け会社も動員して、上下することがあります。だから、そこは十分気を付けなければならないのですが、基本的には「欧米はすでに破綻している」ということで間違っていないと思います。それを前提に値動きを予測していく必要があります。