前回は、原子力発電所事故の影響と、日本のエネルギー政策のあり方について話を聞いた。今回は、復興計画のあり方についてまとめる。
震災前に、国土交通省がまとめたデータに、東北圏の人口は、2050年には現在の3分の2に減っているという予測がありました。老年化指数 (15歳未満人口100人に対する65歳以上人口の比)は、現在の24、25%から44%に増加します。
つまり、今後40年で過疎化と高齢化が極端に進む地域だとみなされていたのです。
この過疎化、高齢化の流れは、3・11を境に、急激に加速しました。
このままでは、現在、全国に散らばって避難生活を余儀なくされている被災者の人たちは、将来、ふるさとに戻ろうにも戻れなくなってしまいます。
シェア型経済の台頭を示唆して話題になった『メッシュ』著者のリサ・ガンスキー氏。インターネット黎明期に商用ウェブサイトGNN(のちにAOLが買収)や写真共有サイトのOfoto(オフォト)といった複数の先駆的なインターネット関連ビジネスを立ち上げたことでも知られる同氏にシェアビジネスを生かした日本再生への提案をしてもらった。
リサ・ガンスキー氏(Lisa Gansky)シリコンバレーの名物起業家。1990年代前半に米国で最初の商用ウェブサイトGNN(のちにAOLが買収)や写真共有サイトのOfoto(オフォト)といった複数の先駆的なインターネット関連ビジネスを立ち上げる。オフォトはイーストマン・コダックへの売却により4500万人以上の顧客を誇るサービス「コダックギャラリー」として発展した。
3月11日に起きたことは、地震と津波という自然災害と、原子力発電所の事故とに分けて考える必要があります。
もし、起きたことが地震と津波までであればどうだったか。それだけでも大変悲惨な出来事ではありますが、おそらく日本は3年以内に復旧したでしょう。底力を、世界に見せつけたに違いありません。GDP(国内総生産)は、今年はもしかしたらプラスになるかもしれないという声も出始めているほどです。来年には、復興需要も含め、リバウンドをしていたと思います。
ところが、原発の事故が、自然災害とは次元の違う話として、世界を凍りつかせています。
これにどう対応していくのか。
これが、将来の、世界における日本のあり方を大きく左右することになるでしょう。
東日本大震災やその直後の大津波そして福島第1原発の事故に関して、想定外という言葉をよく聞く。確かに、地震や津波は記録破りの大きさで、被害も史上最大または最大級に達するようである。しかしながら、それだからと言って、すべての原発を直ちに廃炉にするわけにはいかない現在、想定外というひとくくりの言葉で放免することはできない。想定外を想定し、最悪時の対策を講じることが肝要である。企業の危機管理においても同様のことが言える。
電源喪失は回避できたのではないか
今回の事故では、電源が失われた事が事故の規模を大きくした最大の要因であったように思われる。福島第1原発の場合、高さ14メートル以上の津波に襲われたため、非常用のディーゼル発電機13台のうち12台が停止し、炉心の冷却機能が失われた。
世界景気は米国と中国が牽引役となり、回復局面に入った。しかし、今回の回復過程は、各国ごとに受ける恩恵にばらつきが生じそうだ。
新興国市場が拡大して価格、品質など「需要の質」が変わり、同時に新興国企業が製造業を中心に実力をつけ、先進国企業が君臨していた分野をも侵食する勢いだからだ。
最も危惧されるのは東日本震災で傷つき、「出遅れ景気」の中であえぐ日本企業。日本電産の永守重信社長は、日本企業には「血みどろのシェア争い」を戦う覚悟が必要と説く。
(聞き手は、日経ビジネス編集委員 田村 賢司)
日本電産の永守重信社長(写真:小倉政嗣、以下同じ)
これからの世界経済は「先進国vs新興国」という構図になるのだろう。