『強く生きるために読む古典』(集英社新書)(※集英社さんのサイトはこちら。各ネット書店へのリンクがあります)
この連載「人生の諸問題」の主役のひとり、岡康道さんの弟さん、岡敦さんの連載「生きるための古典」がこの度、『強く生きるために読む古典』(集英社新書)のタイトルで刊行されました。
刊行を記念して、岡兄弟、そして『小説の設計図(メカニクス)』(青土社)、『芥川賞はなぜ村上春樹に与えられなかったか—擬態するニッポンの小説』(幻冬舎新書)などの著作、そして「王様のブランチ」(TBS)などでもご活躍の、「早稲田文学」ディレクターの市川真人さんをお迎えした、変化球編をお送りしています。
JR東日本の東京駅で、颯爽と新幹線の車内を掃除していく赤い集団が気になった人はいませんか? あれよあれよという間にテーブルを磨き上げ、座席カバーを取り替えていく。千手観音の如く流れる手さばきは、取材で撮影しようとしたプロのカメラマンですら追いきれないほど。彼らこそ、視察した米運輸長官をして、「エブリバディ・グッジョブ!」と言わしめた世界最強の清掃チームなんです。
与えられた時間は7分。列車の遅れに直結するため、時間内に仕上げることが至上命令。個人のスキルはもとより、トラブル時のカバーなど、チームワークなくしてミッションを遂行することはかなわないでしょう。彼らはJR東日本のグループ会社に属するメンバー。
出張でよく香港を訪れる。仕事が終わり東京に戻る飛行機に搭乗する前に、時間があれば空港の中にある本屋に必ず立ち寄るのが楽しみの1つだ。極めて狭く小さい土地という意味の『弾丸の地』と言われる香港で、数百人が同時に飲茶できる大型レストランは珍しくないが、本屋を探すのは至難の業である。
10年前、石を投げれば本屋に当たるほど書店が沢山あった東京で長く生活していた私は、香港に駐在した当初、香港人がいかに本を読まないかと憤慨したことがある。しかし、空港は違う。売り場面積の広さはともかく、本屋(正確にいえば、本が置いてある店舗)の数は「本屋王国」の成田空港や羽田空港より多いような気がする。
乗降客数が世界有数の香港空港では、時計やバッグなど世界のブランド品を扱う免税店やお土産店が林立し、テナント料は恐らく安くないはずだが、なぜ、儲けの少ないと思われる本屋が意外に多いのか。