何がやりたいのか?

  米国が国家破綻すると、間違いなく世界の経済システムは変革を余儀なくされることと思います。次の時代はどういうシステムになるのか? 今の派手な金融資本主義と比べると、地味で地道な努力を求められると思います。
  現在のシステムは、中央銀行(その大本はもちろんFRB)が紙切れ(紙幣)を発行して、その取り合いをさせる。金を持っているか、多く稼げたか、稼ぐ能力があるかで、その人の社会的な立場、地位、資源を支配できる能力(所得)が決まっていました。
  日本人は真面目なので、正攻法でものづくりをこつこつとやることで、紙切れをゲットし、エコノミック・スーパー・パワー(経済大国)の地位に上り詰めたわけです。まあ、日本の台頭を大目に見てきた米国の国策によるところも大きいのですが、日本の技術力、繊細なものづくりのセンス、勤勉さが大きく貢献したことは間違いないでしょう。
  米国は現在の世界の経済システムを築き、それを支配する元締めなのですが、真っ当なやり方では、競争力を維持できず、紙切れを稼ぐ能力を失ってしまった。そこでインチキを考えたわけです。金融を支配して、アンフェアなルールを押し付けることで、優位な立場を築こうとした。
  彼らのもくろみは見事に成功し、日本の経済はかなり弱体化させられてしまった。1990年代後半から始まった北海道拓殖銀行や山一證券の破たんに象徴される、金融不況は、まさに彼らの思うツボでした。
  そして、小泉、竹中といった手下を使って、「構造改革」とか、「郵政民営化」を実行させることで、金融力による日本支配を完成させたわけです。
  また、並行して、日本のハイテク技術を韓国や台湾に流出させるように仕向け、日本人が得意としていたものづくりの面からも丸腰にさせようとした。
  ただ、ものづくりに関しては、生産効率が日々劇的に向上し、価格競争も激化しているので、米国が介入しようが、しまいが、消耗戦に入ることは目に見えていました。そこは、見誤らないようにしたい。
  日本市場のニーズにこたえるには、例えば自動車ならば、トヨタ自動車だけでいい。トヨタの足りない分をホンダがやる程度でしょうか。電機ならばパナソニック1社で十分だし、残りを東芝がやるくらい。投入する労力に対し、高い生産を挙げられるわけですから、どんどん仕事がなくなっていくわけです。
  これが世界規模で起きるなら、どうなるか? 電機の分野では、サムスン1社で用は足りるし、中国市場があるのでハイアールが生き残るぐらいでしょうか。自動車なら現時点で一応、トヨタが優位ですが、新興市場で強いフォルクス・ワーゲンあたりが世界を席巻し、ほかのメーカーは不要になってしまう可能性があります。
  金融資本主義の論理とあいまって、世の中、どんどん効率化が進み、仕事がなくなっていくわけです。そこで、格差社会や貧困といった悲劇が起きる。
  来たるべき金融恐慌の後、考え直すべきなのは、いかに生産効率化の恩恵を広く分け与えるかでしょうね。それと、金融カジノのルールを支配している一部のインサイダーがもうけを独占する、イカサマも是正しなければならない。
  世の中、ほとんど仕事しなくても、物を生産できるようになっていく、その動きは今後も止まらなくなるでしょうね。その事実を広く知らせるべきで、一部のインサイダーがそうした情報を独占して、他人を不幸に陥れることで暴利をむさぼる時代には終止符を打つべきです。
  そして私たちも発想を変えなければならない。人間の人生なんて、地味なものですよ。1000年前、1万年前と大して違うわけではない。
  退屈な世の中で、何をすべきか? あるいは何がしたいのか? それを一生考え続けること。そして、何かを見つけ出すことが大切になるのではないでしょうか。