野田佳彦首相は、消費税率引き上げに「政治生命を懸ける」のだそうですが、見ていて哀れで仕方ありません。私が言うのも僭越なのですが、野田さんは自民党が圧倒的に強かった時代なら、陣笠議員(衆院採決の数合わせ要員)レベルで、小物です。
そんな人が首相の座にまで上り詰めるのですから、ある意味、サクセスストーリーだし、アメリカン・ドリームならぬジャパニーズ・ドリームですね。ニートや引きこもりの人たちを奮い立たせるような立志伝が書けるかもしれません。
冗談はさておき、米国の言いなりで、米国債を買い支える資金がさらに必要になるため、消費税率を引き上げざるを得ないというのが実情でしょう。本気になって特別会計とかを「仕分け」すれば、埋蔵金がザクザクと出てくるだろうし(あるいはもし埋蔵金が出ないということになればすでに米国債を買うために資金が流用されている)、為替介入をやめたり、米国債を売却すれば「老人天国」が実現するくらい、福祉にお金を回せることでしょう。
器の小さい人物が一国のリーダーになることほど、危険で国民にとって悲劇なことはありませんね。米国に脅されて、金を上納するために、鼻くそほどもない政治生命を懸けるというのですから、一般国民はどうすればいいのでしょうか? ヤクザに脅された、冴えないチンピラが「腎臓売ります」とか「指詰めてけじめつけます」と言っているようなもので、情けなくて仕方がありません。
野田という人にはプライドのかけらもないのか? それとも首相になってしまうとそういうことを考える余裕が与えられず、洗脳されてしまうのか? 確かに野田さんをけなすしたり、茶化したりすることは簡単なのですが、どうやってしっかりしたリーダーを選ぶのか、私たちも真剣に考えなければなりません。
あえて弁護するならば、日本のリーダーにとって厳しい時代になっています。長らく政権についてきた自民党は、右肩上がりの時代で、経済的にゆとりがのだったので、米国に難問を突き付けられても、何とかかわすことができました。何より米国自体にも余裕があったので、要求もそれほど苛烈ではありませんでした。
このところ、米国はなりふり構わぬ要求をするし、米国を貿易をしても利幅が少なくなりつつあり、しかも米国債を買わされるので、米国依存だった日本は、困窮する一方です。こんなときにリーダーに就いて、かじ取りをするのは容易ではありません。
前回の衆院選は2009年8月で、今選挙をやっても民主党に勝ち目はありませんから、4年間の任期いっぱいまっとうするのかと思っていましたが、もしかすると、野田政権では堪えられずに今年中に衆院選が行われるかもしれませんね。このところなんとなく政局がざわざわとしてきました。
ここへ来て、解散風、選挙風が吹き始めた背景には、昨年の大阪ダブル選に象徴されるように、愛知、大阪を中心とする、ローカルパーティーの台頭ですね。
一般の国民はB層がどうのとか、なんだかんだ言っても、本質的な変化を求めています。それは2005年の郵政解散選挙、2009年の政権交代にいたった選挙と一貫しています。「このままではだめだ」という危機感はあるのだと思います。
ただ、選挙でできた政権が行ったことは、有権者の期待に応えるものではありませんでした。昨年の大阪の選挙では、既成政治のシステムや、政党に対して、「ノー」を突き付けたということです。これは大阪地区限定の話ではなく、全国に広がる可能性を秘めています。
地方から国の変化を求める動きが出ることは、非常にいいことですね。米国が、財務省を中心とする官僚が、北海道から沖縄まで、隅々まで国民を支配するなんて現実的ではないですし、地域のことは地域で考える。それがあるべき姿ではないでしょうか。
橋下徹大阪市長の言説を見ると、竹中平蔵さんを礼賛したり、「あれっ?」と思わされることは少なくないのですが、地方に権限、財源を移譲し、地域のことにもっと、有権者が関心を持ち、意見を反映させる仕組みをつくろうという姿勢は正しいと思います。今は黒でも白でもネズミを捕る猫はいい猫であり、基本的には、大阪維新の会の動きを私は支持します。これは以前から表明している通りです。
公明党の動きに要注目ですね。選挙の出口調査なんかをみると、大阪ダブル選では、民主、自民に相乗りしたような感じでしたが、大阪維新に肩入れする姿勢を少しずつ強めています。既存政党の中では一番、支持基盤が安定し、情報収集もすごいですから、地方から国を改革しようという動きが強まるととらえているのではないでしょうか。
かつて自民党と連立政権を組んでいたので、ここで大阪維新ほか、ローカルパーティーと連携すれば、批判を浴びるでしょうが、時代の流れを読んだり、有権者の意向をくみつつ、最大限自らの主張を取り入れられる方向に動くというのは正しいと思いますけどね。単独では政権を取れないのですから。いずれにせよ政局に敏感な公明党が動き出したということは、近々大きな動きになるのでしょう。
欧米がバブル崩壊で、経済が崩壊し、社会が荒廃する状況にいたって、日本だけでなく、各国の政治の機能不全が明確になってきました。一番の元凶は、米国の世界支配が限界に達していて、そのとばっちりを受けているということにあるのですが、上から力で抑えつける時代というのは変わるのではないでしょうか。
もちろん、常々、このブログで書いている通り、人間社会の秩序を形成するには、力を背景とした序列が必要だとは思いますが、そういう露骨なものに支配されるのは、世界的に嫌悪感が広がりつつあると思います。
そういう意味では、自分たちの生活に密着した、身近な地方から国政を変えていこうよというのは、世界的にも興味深い動きではないでしょうか。
地方分権が実現したとして、さらにその先に何があるのかは分かりません。名古屋市議会などでは、河村たかし市長が率いる「減税日本」が最大会派になりましたが、素人集団にすぎず、批判も高まっています。大阪維新なんかでも、素行不良な議員がいるようです。
ただ、じゃあ既存政党がこのまま従来の延長上で政治を続けるのが果たしていいのか? 中央官庁はますます肥大化し、何のチェックも働かないまま、唯々諾々と為替介入させられたり、米国債を購入させられたりして、国富をどんどん失っていく体制が正しいのか?
民主党は選挙をしても一定の議席を取れると踏んでいるフシがあるし、自民党は民主党の敵失に乗じて、政権を再び握れるみたいな幻想を抱いていますが、果たしてそうか? 大阪市長選で民主、自民に相乗りして、ダメっぷりを見事に発揮した共産党も含め、既存政党はもはや支持されないでしょう。
永田町にいるとその辺の有権者の感覚をりかいできないのでしょうか。本当に頭が悪いですよね。与党も野党も。
今年選挙があるにしても、任期をまっとうするにしても、大きな流れは変わらないでしょう。既存政党に対して「ノー」が突き付けられ、地方から改革を訴える勢力が勝利するでしょう。
ただ、自民から民主に政権が移った時もそうだったように、実際には政権が代わっても、いろいろと抵抗があり、問題、トラブルも出てくるでしょうから、そんなにことはスムーズに運ばないでしょう。むしろ、それが当たり前として、困難を克服し、乗り越え、新しい形をつくっていく努力をしていけばいいのではないでしょうか。日本型の新しい政治のモデル、世界に誇りを持って示せる新潮流をつくっていく気概が欲しいものです。