自動車の未来~東京モーターショー2011② 国内メーカー・トヨタ自動車

  リーマン・ショック後、せっかく立ち直りかけた国内自動車メーカー各社の業績でしたが、東日本大震災でサプライ・チェーンが寸断し、数カ月にわたり生産に支障が出ました。さらに追い打ちを掛けるようにタイ洪水。欧州財政問題に端を発する金融恐慌も間近に迫り、まさに試練の時を迎えています。
  日本のものづくりをリードし、輸出の稼ぎ頭である自動車産業ですが、二重苦、三重苦を乗り越えられるか、真価が問われます。


  こういう時だからこそ、夢や希望など、前を向いた展示を期待したいところですが、トップ・メーカーのトヨタ自動車のスローガンは「Re BORN」。再生、とか新しく生まれ変わるという意思を込めたのでしょうが、後ろ向きなイメージを持つのは私だけでしょうか?
  「ドラえもん」をテーマにした実写版コマーシャルが話題になっていますし、それなりに面白いと思いますが、業界をリードする会社が、パロディーに走るというのは、国内自動車産業の苦境ぶりがうかがえます。
  ストレートに、新しい価値を打ち出し、心を動かすような車を見せてほしかったですが、トヨタという会社自体が保守的な会社なので、難しいでしょうかね。




  でもさすがは堅実な社風のトヨタです。要所はきちんと押さえた展示でした。プラグイン・ハイブリッドと、コンパクトカーのヴィッツクラスのハイブリッドタイプ戦略車「アクア」がまず目を引きます。さらには今後、販売が本格化するプラグイン・ハイブリッドの「プリウス」。さすがにハイブリッドの先駆メーカーだけあります。
  まあ、アクアにせよ、PHV型プリウスにせよ、すでに知られているので、目新しさはないのですが、モーターショーで大々的に展示することで、トヨタの戦略と本気度が分かります。


  脱ハイブリッドということになるのでしょうか、都市での移動をコンセプトにした、電気自動車のコンセプトカーもありました。
  内燃機関を動力とする自動車は今後も主流となるのか、それとも、モーターと電池の比重が高まるのか、メーカー自身も見極めがついていないのではないかと思います。
  ただ、現在のモーター、電池の性能だと、電気自動車はママチャリ感覚ですよね。電動アシスト自転車の延長上みたいな。高速道路を走ったり、信号の少ない郊外、起伏のある道を走るには、まだまだ物足りないのではないでしょうか。
  ハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車のいずれにも対応できるのが、トヨタの強みですね。技術の厚みもあるし、市場のニーズや、技術のブレークスルーに合わせて、機動的に展開できるでしょうね。
  米ビッグスリーが巻き返し、欧州勢も環境対応に力を入れ、韓国勢、さらには中国勢も気になりますが、今すぐ商品化できるメーカーは、トヨタのほかにまだないのではないかと思います。


  各社とも思い切った、コンセプトの提案が乏しい中、チャレンジとして評価したいのは、車体の色が変化する「Fun-Vii」です。
  車の色は、買う時に一度しか選べませんが、これだとボディーカラーの可能性は無限に広がりますね。海のものとも山のものとも、分からないアイデアな感じもしますが、若い世代には受ける可能性があります。
  ハイブリッドとか、低燃費車とか、ローエミッションとか、車の性質がどんどんおとなしく、優等生化する中、何に楽しさを見出すかという意味では、重要な提案かも知れません。


  トヨタが久しぶりに出したスポーツカー「86」もばっちり展示されていました。かつては「スープラ」「セリカ」など、人気を博しましたが、今や売れ筋はミニバンやSUV、コンパクトカー。時代の変化を感じさせます。
  今後は、スバルとの共同開発による第2弾、第3弾のスポーツカー開発も予定されているようですが、固定ファン層はいるにしても、どれだけ新たな顧客の心をつかみ、売れるかは未知数ですね。
  余裕のあるトヨタだからこそできることでしょうけど、金融恐慌に突入すれば、真っ先に割を食うセグメントでもあります。






  レクサスはあまり細かく見ませんでしたが、歴史的な円高が続き、まだまだこの勢いはとどまりませんが、日本から輸出して売れる車はレクサスしかありませんね。
  恐慌だろうがなんだろうが、金持ちの富裕層は車にカネをかけます。円高もなんのそのです。日本経済を考えると、一番重要なのは、利幅の薄いハイブリッドやら電気自動車ではなく、レクサスのような高級車部門ですね。
  日本の技術力がいかんなく発揮できる分野でもあり、欧州勢に負けず、存在感を示してほしいです。