ラーメン道 スープを味わう 西荻窪編2

  西荻窪駅すぐそばのそこか昭和のにおいが残る商店街の一角。木造の味のある店舗にできる、ささやかな行列。西荻窪(のラーメン店「丸福」)を訪れるたびにいつも気になっていました。私が尊敬する美食家の方も、好意的に評価していたので、いつか訪れようと思っていて、寒さがゆるんだ日に思い立って、行ってみました。西荻窪の「はつね」です。


  はつねはラーメンもやっていますが、たんめんで知られるお店です。これこそまさに人それぞれ好みがあると思いますが、たんめんって、何か味気なくて、私はあまり進んで食べたことはありません。塩ラーメンも同様です。たんめんの存在自体は知っていましたが、学生時代に友人が中華料理店で注文しているのを見て、初めて実物を目の当たりにして、その後、自分でも頼んでみたのですが、あまり興味を持てる味ではありませんでした。
  北海道にいた時、「浜ちゃんぽん」というのがあったのですが、これは長崎ちゃんぽんと、たんめんの中間ぐらいで、海鮮(といっても冷凍のエビとかイカとかを解凍したもの)が入っていて、ちゃんぽんの方は割と好きなので、何度かこの浜ちゃんぽんを食べたことがあります。




  丸福の目と鼻の先にあり、いつ行っても店の前に5、6人が並んでいて、「そんなにおいしいのかな」と、いつも興味深くみていたものの、「わざわざ西荻窪まで来てたんめんもなぁ」という意識もあって、はつねを素通りして丸福へ向かっていましたが、意を決して行列の最後尾に並びました。
  西荻窪に到着したのは午後2時前くらい。何の根拠もなく「並んでなければいいな」と期待したのですが、全くもって身勝手な期待で、店の前には5人ほど並んでいました。店内は6席なので、ちょうど1回転分の待ち時間ということになります。
  外回りの人でしょうかサラリーマン風の人や、学生っぽい若い男性、主婦だと思われる女性、常連とおぼしき年配の男性などさまざま。私がいたときは皆さん「おひとり様」でした。地味なファン層に支えられているんでしょうかね。新宿あたりの新興ラーメン店なんかは、カップルとか友人同士とか、連れ立って来る人がいますが、客層の違いなんでしょうね。
  私は行列嫌いなんですけど、このくらいの行列は期待感が高まるので、むしろ気持ちがいいですね。ただ、牛丼チェーンの「松屋」の真裏にあり、松屋の排気口からのにおいが漂い、「たんめんより焼き肉定食の気分なんだよな」と不覚にも思ってしまいました。
  店の外から店内を見ると、ちょっと気難しそうな感じのご主人と、奥さんらしい方が切り盛りしていました。以前に食べログの口コミを見たときに、「並んでいる間に注文をとればいいのに」みたいなことを書いていたのですが、改善されたようで、並んでいる間にたんめん大盛り(800円)を頼みました。


  かねてずっと気にかかっていた、たんめんです。もやしやキャベツがトッピングされていて、無造作なんですけどどこか整々としていて、本格的な中華料理店で出てくるような麺料理を思わせます。
  スープを一口。「これぞ、たんめん」という味でした。鶏ガラベースということですが、控えめであっさりしていました。私はやや脂が乗り、こくのある感じが好きなのですが、それではたんめんではなくなってしまう。たんめんは、やはり、たんめんなのです。
  テーブルにあったコショウをかけると、風味がつき、いい感じになりました。最初はちょっと物足りないかなと思ったスープも、神経を研ぎ澄ませて味わうと、奥深いなと思いました。
  何よりうれしいのは、野菜が多いことですね。肉類が一切入っていないので、ダイエットを気にする女性に好まれると思います。
  麺は細くて軟らかめです。これもオーソドックスなスタイルですね。あっさりとしたスープと相性がいいと思います。
  たんめんに詳しいというわけではないのですが、はつねのたんめんが一番たんめんらしいたんめんなんだろうと思います。それが人気が続いている理由でしょう。食べ始めは味がわかりにくかったですが、最後の方はとてもおいしく感じられました。


  これからもちょくちょく西荻窪を訪れるでしょうし、圧倒的に丸福に訪れる回数が多いと思います。ただ、ときどきは気分を変えるためにも、自分自身の行動にバリエーションを持たせるためにも、たんめんという選択肢もありかなと思いました。
  店を出るとき、ご主人と奥さんが「お忘れ物ないように」と気持ち良く送り出してくれました。
  ちなみに東陽町にもたんめんの有名な店があるので、訪れてみたいと思います。