ラーメン道 時代の流れ 荻窪編2

  新年初のラーメン店紹介はどこにしようかと思案していたのですが、久しぶりに煮干しの味が懐かしくなり、荻窪「二葉」を訪れることにしました。独特の香ばしさの中に、ゆずの香りがほんのりとただよう、東京ラーメンらしいオーソドックスなスタイルで、私は勝手に「荻窪御三家」の一つに位置付けているのですが、近々閉店するらしいという衝撃的な事実を知ってしまいました。


  虫の知らせみたいなもんでしょうかね。飲食店も競争が激しいし、だらだらと続く不景気で、東京のそこそこ人が集まる地域に開店しても経営が厳しいであろうことは推察できましたが、まさか、あの二葉までもが・・・、という思いでいっぱいです。
  二葉に似た系統の煮干しラーメンの店は東京のあちこちにあるので、しばらく足が遠のいていたのですが、ラーメン店に関しても「いつまでもあると思うな」ということなんですね。




  二葉はJR荻窪駅北側の「教会通」というちょっとひなびた感じの商店街の奥の方にあります。春木屋や丸福が駅から歩いてすぐの青梅街道沿いにあるのとは対照的で、ちょっと足を伸ばさなければなりません。
  お店の周辺は昭和な感じが残っているところがいいのですが、商店街の入り口付近には近年、新しいラーメン店が何店かできていて激戦区の上、地の利が悪いというハンディキャップを抱えていました。
  昔は醤油ラーメン一本勝負だったのですが、最近ではつけ麺や塩ラーメンなんかもやっていて、バラエティに富んではいるのですが、ややピントがぶれているのではないかという感は否めず、ここにも苦しさが見て取れます。


  ここでは、やはりラーメン(700円)を注文したいですね。冬は醤油ラーメンより、味噌ラーメンの方がおいしく感じられますが、ここのラーメンは冬に食べてもおいしいと思えます。トッピングのゆずの皮が感覚を研ぎ澄ませてくれ、食べた後に体が温まります。
  ただ、このラーメンも以前と比べると、味が変わりました。以前はスープに透明感があるのが特徴でしたが、最近はにごりがあり、煮干しを前面に押し出そうとしている様子がうかがえます。かつての日本そば感覚のさっぱりスープが好きだったんですけどね。
  こってり感をださないと受けないのでしょうか。いろいろとお店の側でも試行錯誤している様子がうかがえます。
  スープは煮干し、さば節を中心に北海道産野菜も一緒に煮込み、お店のホームページでも紹介されていますが、厳選素材です。麺もスープと相性がいいですね。
  チャーシューも変わりました。他店でも割とよく見かける軟らかい角煮タイプのものです。以前は硬いタイプで、私はどちらかというと昔のものの方が好きですが、これも顧客の好みに合わせたんでしょうね。
  味は変わっていますが、作り方のベースは受け継がれているので、かつての面影は感じられます。


  で、スープを飲み終えて、店内に張り紙があるのをふと発見。「閉店のお知らせ」・・・。えっ!という感じ。なかなか事実をのみ込むまでに時間がかかりました。
  5年ほど前に開店した駅前の支店(?)で今までの味を受け継ぐとのことでちょっと安心しました。そして商店街の方にある、この店は「らーめん ねいろ屋」として、塩ラーメン主体で際スタートするようです。
  二葉の味は、東京ラーメンの原点の味なので、なくなってしまうわけではないということで、胸をなで下ろしていますが、この味だけでは勝負できないというのは、ちょっと寂しいというか、「厳しい時代なんだなぁ」と感じさせられました。
  商店街のこの地にあってこそ二葉とは思うのですが、一人の客の思いだけではどうにもならないということでしょう。栄枯盛衰はつきものであり、ラーメン界でも、この先いろいろとドラマがあることでしょう。
  東京ラーメンといえば醤油なので、塩ラーメンは正直、どうなのかと思いますが、二葉のスープをベースにしたものならどんな味になるのか、興味が湧くところではあります。2月上旬オープン予定とのことですが、開店したら一度試してみたいと思います。