ラーメン道 若者でにぎわう店 新宿編4



  4月に東京中の有名なつけ麺店を駆け回ったので、しばらくは距離を置こうと思っていたのですが、どうやら“中毒”になってしまったようです。10日に1度くらい豚骨魚介の濃厚なスープに漬けた、弾力のある麺が無性に食べたくなるときがあるんですよね。
  豚骨ラーメンは“常習性”があるといわれますが(笑)、豚骨スープは一度はまると、やみつきになる何かがひそんでいるのでしょうかね。今まで豚骨ラーメンに情熱を燃やしたことはありませんでしたが、私が大好きな、荻窪「丸福」は豚骨と鶏ガラのダブルスープで、これも時々、懐かしくなります。


  まさに五月晴れというにふさわしい、きれいな青空が広がる日曜日。西新宿の「俺の麺 春道」を目指しました。5月も天候不順で温度差があったせいか、軽度の風邪をひいてしまい、その日は家で積ん読していた本を片付けてしまおうか悩んだのですが、せっかくいい天気になったのだからと、自分を奮い立たせました。
  豚骨魚介のつけ麺を食べたかったのですが、日曜日が休業の店が結構あり、長い行列ができそうなところも嫌だったので、なかなか適当なところが思い浮かばず逡巡。情報誌でやっとこさ見つけたのが、このお店でした。
  正直、新小岩の「一燈」、東京駅八重洲地下の「六厘舎」、住吉の「中川會」を上回るレベルのつけ麺店はそうそうなさそうなので、「新規開拓してやろう」というほどの意気込みはありませんでしたが、有名店が集まる西新宿で、開店したつけ麺店というものがどういうものなのか、興味がありました。
  久しぶりに西新宿を訪れたのですが、日曜日の午後2時ごろって、そんなにラーメン店は混まないものなのか? それとも、スカイツリータウンとか新しいスポットに人が集中している影響なのか? よく分かりませんが、「麺屋武蔵」「味噌屋八郎商店」「蒙古タンメン中本」など、小滝橋通り沿いに居並ぶ有名店はどこも盛況なのかと思いきや、行列は全くみられませんでした。
  今回の目的地の春道も多少の行列覚悟ではいたのですが、小滝橋通りから西寄りに少し入ったお店に着くと、店内にはわずか2人しかおらず、閑散としていました。


  外出は気乗りしなかったのですが、がっつり食べたい意欲だけは強かったので、特製つけ麺(1000円)の大盛(+100円)を注文しました。
  つけ麺を待っていると、ぽつぽつと客が入り始め、近くの専門学校生か、それとも大学生かとおぼしき、20代前後の男性6人組が入店し、一気に満員になりました。しかも、直後に来た、年配の夫婦と娘とみられる客は店外で待つという状況。つけ麺ブームといわれますが、やはり、人気があるんですね。
  西新宿という立地も有利に作用しているのでしょう。情報通信系の企業のオフィスや、大学、専門学校が集まるので、平日はサラリーマン、学生が中心、週末は買い物客なんかも足を運ぶでしょうから、それなりの集客が見込めます。若い世代が集まりやすい場所なので、つけ麺という選択肢は受け入れられやすいでしょう。
  多くの店で、麺を水でしめて冷ましてから提供するつけ麺と、熱々の状態で提供する「あつもり」は分かれていて、この店では「あつもり」がメニューに書かれていなかったので、つけ麺オンリーかと思っていたら、6人組の人たちは、店員さんに食券を出す際に「あつもり」と言って通な感じで注文していました。すっかり常連さんなんでしょうね。
  ちなみに春道では昼と夜とではスープの味を変えているらしいです。昼は「豚骨×鶏×魚介」で、夜は「豚骨×鶏×煮干し」なのだそうです。
  客がほとんどいなかった時に入店したので、やや時間がかかり5分強でつけ麺が出てきました。つけ汁に七味がちょこっとふりかけられているのが印象的です。チャーシューが低温調理とやらのハムのような食感のもので、新小岩・一燈と同じようなタイプですね。私は煮豚よりもこちらの方が好きなので、うれしいです。
  そして、つけ汁をひとすくいして口に入れた感想。「薄っ・・・」。一瞬、面食らいました。味が感じられず、濃厚なスープを期待していたのに、「もしかしたら大失敗」と、背中にひやりとしたものが走りましたが、「何かの間違いだろう」と思い直して、つけ汁をれんげで底の方から上へとかき回してみると、豚骨魚介の独特の味が感じられ、胸をなで下ろしました。


  味は、それなりのレベルのつけ麺店で比較すると、平均的な味でしたね。まさに私が食べたいと思っていた味であり、期待を裏切らない味でした。麺も程よい弾力と太さで、つけ汁にマッチしていました。このクラスの味のお店はもっと増えてほしいですね。いつでも好きなときに気軽に足を運べるようになればありがたいです。
  もっとも、さすがに一燈、六厘舎、中川會といった大御所をひっくり返すような実力があるかというと、そこまでのパワーは及ばず、そういう意味でも期待は裏切られなかったわけですが・・・。
  とはいえ、このクオリティーなら余裕で合格点をクリアできています。新宿に用事があってふと、「つけ麺が食べたい」と思ったときに、立ち寄ってみたいお店です。