レンジ相場の傾向と対策



  月1回のビッグ・イベント米雇用統計(9月)は、非農業部門雇用者数が前月比+10万3000人で、市場予想(6万人程度)を上回りました。先日も簡単にしておきましたが、このところ米国の経済指標は総じて小康状態にあり、売り材料というよりは、むしろ、目先底を打っても、それなりの理由づけをできる状況です。
  雇用統計については、すでに職探しをあきらめた人についてはカウントされず、実態を反映していないという批判があります。また、これは私見ですが、相場操縦に利用されている感があります。雇用統計に先だって発表されるADP雇用報告の内容と整合性が取れないケースが多く、ADPで景気回復期待をあおっておいて、雇用統計で落とすというのがこの1、2年のパターン(稀にではあるがADPがネガティブで、雇用統計が良いケースもあります)です。
  雇用統計前のもそもそとした動きから、何となく、どの方向に相場を動かそうかというのが分かるんですよね。だから雇用統計は月1回のボーナス・ステージなのですが、この1年ほど、気持ちよく取れることはほとんどなくなりました。
  昨日もそうでしたね。今週の売買動向から、日経先物もドル・円もバイアスは上にかかっているような感じだったので、雇用統計を利用して、上に持っていこうとしているのかなということは予想できましたが、上昇前に安値圏で本気になって売っている場面もあったので、まともに買おうという気にはなれませんでした。
  むしろ、万一ネガティブな内容だった場合のリスクを考えてしまいます。たかだか8600から8650前後まで50円そこそこの値幅ですよ。1ドル76.60から76.90まで30銭しか上がらないんですよ。こんな相場をまともに相手にするんだったら、十分上昇した、あるいは下落したところで、ショートなりロングなりをかけた方が安全に設けられます。
  先物だと8300円台で買えば、下げ渋るので、それなりに獲れますし、逆に8600以上だと、ショート目線でいい。ドル・円はこのところ76.50が防衛ラインで、76.10くらいまでの下落は許容範囲ですよね。上は8月の介入ポイントである77.10を超えれば、そろそろ売ってみてもいいかなという感じです。
  どこにも価格の持っていき場がないから、狭いレンジで行ったり来たりするしかないので、こういう相場つきにしかならざるを得ないわけです。下手に価格を動かせないので、雇用統計のようなビッグ・イベントを利用して、ジャンプ・アップしたり、大暴落したりということも、できなくなってしまった。
  そもそも、今の価格帯にいるのも、ビミョーなバランスで成り立っているのです。米国は金融緩和というインチキをしないと株価を維持できないし、中毒症状の一歩手前まで陥っています。昨年来3度の為替介入をして、かろうじて価格を保っているドル・円も同様です。
  だから、好材料が出ても、素直に反応できなくなってしまっています。株価操作もなく、為替介入も行っていなかったならば、それなりの水準まで下げて、経済指標を受けて、しっかり反発できていたと思いますが、不自然な価格帯にあるので、気持ちの悪い動きにしかなりません。政府や中央銀行が市場に介入する弊害ですよね。まさに。
  欧米の財政問題を取り巻く状況や、金融機関をめぐる環境、そして、単純にテクニカル(日柄、値幅)から考えて、そろそろ、暴落あるいは大幅下落のタイミングかなぁという気がしないでもないですが、悪あがきを続けるならば、もしかしたら、今後、数か月くらい、こういう動きが続く可能性もあります。
  中国の株式市場なんか見ていると、配当から考えるとすでに十分下げていると思うのですが、いまだに執拗に「バブル崩壊」懸念をあおっています。何か思惑があるんでしょうね。
  中国バブル崩壊については、一面ではそういう部分もあるとは思いますが、3年くらい前から比べると、はるかに落ち着いているし、かつての日本の狂乱的な土地ブームを考えると、今の中国の勢いはむしろおとなしいぐらいだと思います。貧富の差は激しいし、いろんな矛盾を抱えているわけですが、中国の中流以上の層はハンパない購買力を持っています。安物の車やテレビ、衣料品しかかえない、ケチな米国人とは違うのです。
  デイ・トレードでは、しばらくはたまに小さな値幅を稼ぐのがせいぜいでしょうか。あまり深追いするべきでないですね。結果として、動いてしまっても「去る者は追わず」。あまりこだわると、逆を突かれたときに大けがをします。じっくり腰を落ち着けて確信のあるところ以外ではエントリーしないのが無難ですね。
  金はいい感じで押し目を付けているし、中国株も中長期投資の視点で、いろいろ研究してもいいのではないでしょうか。欧米が金融恐慌に突入したら、ある程度はお付き合いせざるを得ないでしょうが、いつまでもシンクロすると考えるのは間違いでしょう。ダメ人間は堕ちるし、勢いのある人間は、しっかり立ち直るでしょうから。
  そういう視点で投資を考えるじきではないでようかね。