昨年秋以降のギリシャ支援をめぐる動きを見ていると、「どう考えても無理筋だろう」「ユーロ崩壊か?(ギリシャのような小さな国が離脱したとしてもユーロ自体がなくなることはあり得ないですが)」と身構える局面でも、多少は崩れることはあっても、決定打とはならず、破滅的な暴落を回避してきました。
3月中旬に一応、当面のギリシャ支援の方向性が固まったことで、各国の金融緩和政策も後押しして、市場はリスク回避の動きから、リスクテイクへとかじを切りましたが、問題は先送りされたにすぎず、むしろ潜在的なリスクが高まったとすら言えるでしょう。
基本的には、衆人環視の状況下では、暴落というのは起きにくいもののようです。暴落の際には口火を切る人がいるわけですが、もし、その売りがきっかけになって投げ売りが始まったならば、世界中からとてつもない非難を浴びるわけで、さすがにいくらがめつく、卑しい連中といえどもそういう暴挙にはなかなか出られないということです。
ただ、例外もあって、リーマン・ショックの時は、金融市場全体が非常事態にあるということを織り込んでいなかったことで、リーマン・ブラザーズが破綻した瞬間、大暴落しました。
あの時は、暴落前にいろんな情報が錯綜して、ちょっとしたきっかけで値が上下しました。「韓国の金融機関がリーマン救済に資金を出す」みたいな怪しげなニュースがそれなりの報道機関から流れ、小反発しましたが、デマでした。この辺も誰がどういうソースから情報を入手して流したのか、誰が売買したのか(売り抜けたのか?)、きちんと検証すべきだと思うのですが、ほっかむりしたままですね。
本当に緊急事態の時には、目の前で暴落ショーが繰り広げられるし、金融機関も何でもありの汚い手を半ば公然に使ってくるということも、リーマンの教訓として頭に入れておいた方がいいでしょう。暴落前の値動きとしては、直近(昨年後半から今年2月中旬くらいまで)の日経平均先物やドル・円の底値付近での動きに似ていました。レンジで方向感なく推移した後、ちょっと上昇して、いきなりずどんと落ちました。2度同じ動きをするかは分かりませんが。
ここ4、5年の状況を見る限りは、誰もが「暴落するかもしれない」と身構えるような状況よりも、パターンとしては、誰もが予期しなかったようなところで、ある日突然、ずどんと暴落するケースが圧倒的に多いような気がします。
チャイナ・ショックだの、ドバイ・ショックだの、ギリシャショックだのと、かなりの値幅を伴った大暴落がいろいろとありましたが、大抵は、抜き打ち的に起きましたよね。日経平均先物の取引時間が今よりうんと短かったので、そう感じるだけかもしれませんが。
でも、全く予期できなかったかというと、必ずしもそうではなく、上昇が一段落した局面であることが多く、数日くらい前から何となくきな臭さがただようというのはあります。高値警戒感みたいなのはあって、いつ崩れるかなとびくびく(あるいはショートを仕込んでわくわく)するような状況です。
ただ、相場全体を揺るがすような大暴落に向かい、一瞬にして暗転するとまでは、誰もが予想できず、高値圏でだらだらとロングを引っ張ったり、それまでの上昇に乗り切れず、未練がましく買い持ちしていた人たちは地獄を見ることになります。
上昇局面が長らく続くと、どうしても市場全体のマインドが緩くなってしまいますからね。買えば上がるというおいしい状況に油断していると、リスク管理の甘さを見事に突かれてしまいます。
往々にして、そういう場面では、どんなに注意深く接していても、上目線が抜けきらないので、なかなか、ショートに転じにくいですしね。「そろそろショートだろう」と思っても、しつこく買われるので疑心暗鬼にもなってしまいます。
唯一の救いは、上昇途中とか下落途中の中途半端で達成感が感じられない局面では、暴落しないことです。これに関しては、いつまでも通用するかどうかは分からないので、あまり安易に信じることはおすすめできませんが。
そういう意味でも、予期しなかったようなところで、暴落はある日、突然やってくるということです。株価が上昇しようと、通貨が買われようと、欧米が衰退し、世界支配が終焉に向かいつつあることは間違いありません。金融緩和で市場をお金でジャブジャブにして、偽りの金融市場の活況を演出し、時間稼ぎをしているにすぎないのです。
トレーダーとして、常に怠ってはならないのは、微妙な値動きに敏感であるべきということと、警戒心を忘れないようにすること。要はそれに尽きます。