日本の生きる道 その2 強い内需と多様性

  東日本大震災でサプライ・チェーンが寸断し、世界中のメーカーが影響を受け、日本のモノづくりの底力を世界が思い知る結果になりました。
  でも、日本は製造業が強い国で、輸出が大きなウェートを占めているようなイメージを持たれがちなのですが、実は違うんですよね。日本のGDPに占める輸出入の比率は10%強。米国も同じくらい。ドイツはEU全体では日米と変わらないのですが単独では30%弱、韓国は30%強、中国、インドも20~30%です。
  日本は圧倒的に内需が強い国なのです。だからこそ、地場産業として製造業が強くなったのでしょうね。内需が強いということは、その土地に根差した、独立心を持った企業が育ちやすい企業が生まれやすい状況が生まれます。
  余談になりますが、韓流スターを見ていて、私はあわれに思うことがあります。一方で韓国文化の偉大さや、竹島はわが領土みたいに、尊大さを強調しますが、彼らは日本語を学び、日本の消費者に媚を売らねばならないわけです。しかも売っているものは欧米や日本の二番煎じなんですよね。本当の意味で韓国らしさを出せていない。その意味で内需が小さいというのは悲惨なことなのです。
  日本では、内需が強い上に、消費者の目線が厳しく、多様性を尊ぶメンタリティーが強いので、欧米や韓国などでは競争でほとんどの分野で大手2社寡占体制が進んでいるにもかかわらず、多くの企業が並立し、「ガラパゴス」といわれる状況が続いています。
  自動車ではトヨタ自動車を筆頭にホンダ、日産自動車、マツダ、三菱自動車工業、スズキ、ダイハツなどなど、ビッグ・スリーどころの騒ぎではありません。電機も東芝、日立製作所、パナソニック、シャープ、富士通といった面々、鉄鋼は新日本製鉄、住友金属工業(新日鉄と経営統合予定)、JFEスチール、神戸製鋼所などなど、枚挙にいとまがありません。
  一応、トヨタの自動車が国内シェア半分を占めるのですが、私たちはそれでは納得しない。ほかの選択肢がほしいのです。
  単純な自由競争が進めば、少数独占になるのは、競争理論や経験則上明らかです。資本主義の論理ともクロスして、コカ・コーラかペプシ・コーラ、ボーイングかエアバス、マイクロ・ソフトかアップル(あるいはグーグル)、インテルかAMD・・・みたいなことになってしまうのです。
  それを考えると、日本がいかに多様性に満ち、世界から見ると特殊なのかということを実感させられます。経済界の中には、海外企業と競争する上で、業界再編を進め、スケール・メリットを生かして“オール・ジャパン”で戦う態勢を整えるべきだという意見もあります。
  もちろんそれが必要な分野があると思います。でも、すべてにそれを適用することが本当にいいことなのでしょうか。多様性があるからこそ、生き残るために新たな戦略構築に迫られ、ブレーク・スルーするということや、小さいからこそ小回りが利きやすいというメリットも多いのではないでしょうか。
  トヨタやホンダがハイブリッド車を開発し、マーケットを席巻すれば、マツダがアイドリング・ストップや超低燃費エンジンを開発し、違う選択肢を提供するという、まさに好例ではないでしょうか。
  製造業で、究極のところで韓国が日本に追いつけないのは、中小企業の層の厚さです。権威やメンツを重んじる気風のある韓国では、中小企業が育ちにくい土壌がある。層の厚さが、逆に先の震災によるサプライ・チェーン・ショックにつながったとも言えるでしょう。でも、一人一人がそれぞれの使命感を持っているから、大震災のような非常時でも大きな混乱は起きないし、トップ・ダウンよりも、ボトム・アップの強みがある。
  欧米の金融資本主義が破綻に追い込まれたのは、実はこういうところにもあるんですよね。規模のメリットばかり追求し、上から目線でしか考えられなくなってしまったことで、本当に大切なものは何か見えなくなってしまった。マクドナルドのハンバーガーのようにボリューム・ゾーンを攻略して、それなりに収益を上げられても、消費者の多様なニーズにこたえられず、結局少数の勝ち組以外は、悲惨な結果になってしまう。
  だから、人々の生き方が非常に偏屈ですよね。ベンチャー企業と言いながら、ある程度の規模になると、誰かに売っ払ってしまったり、個人主義とかいって自分を犠牲にして誰かのために利他的な行動をすることもあまりない。
  ビジネス・スクールの教科書通りにやればそれなりにうまく、そつなくこなせるのでしょうけれど、それだけでは何かが足りませんよね。そう感じるのは日本人だけでしょうか?個性や一味違った強みを打ち出すのは、それぞれの人々の努力だと思います。
  もちろん、個々人がてんでばらばらの行動、主張をし、統一的な戦略を取りにくいという、私たちにとっては、重大な弱点もあり、政治の世界をみると、それが如実に表れている。でも、その弱点は永遠に克服できないと思います。日本人のメンタリティーに合ったやり方で対処する以外にないでしょうね。(続く)