相場ある限り

  金融市場が動き出したことで、少しは展望が開けてきた感がありますが、日中の動きをみると、米国頼み、為替頼みで自律的な動きに欠け、もどかしく感じます。いろいろと不満を上げればきりはないものの、素直に値動きするというのはトレーダにとっては、とても歓迎すべきことだし、相場がある限り、生きていくことができるんだなと、実感しました。
  先物、ドル・円ともにこの数年来、200日移動平均線を抜けきることができませんでしたが、今回はそれなりに値幅、時間調整をした後なので、こうなったら、しばらくはしっかりした展開が続くことを期待したいですね。
  私自身の年初の予想では、中国の春節が明けて一段落したら、欧州各国の国債の借り換え、新規資金調達が必要になってくるので首が回らなくなり、、金融恐慌に突入するとみていましたが、修正が必要です。とはいえ、それなりに相場の動きは読めているので、どちらかというとうれしい誤算、敗北ですね。ショートをかける楽しみも増えるというものです。
  とはいえ、中長期的には欧州はさらに凋落し、米国は国家破綻に至るという見立ては変わっていません。この半年、1年間の様々な動きを見ていると、さすがに国家破綻だけは回避したいという思惑も見られますが、人類史上最悪の状況までに積み上がった債務の後始末をどうするのか? まともなやり方では処理は不可能だと思ってみています。いびつな日米関係を考えても、さっさと米国が国家破綻して、長年をしがらみを清算するのが日本にとっても、そして米国にとってもいいのではないかと考えています。私の希望通りに動くかどうかは分かりませんが。
  今回の上昇相場は、日銀が金融緩和を表明したことがきっかけですが、一応、いったん陰の極に達して、自律的な景気回復に向かいつつあるという、ファンダメンタル的な要因があるでしょうし(もちろん目先、ドル安が行き過ぎという考え方もあります)、さすがにこれまで200日線に押さえつけられてきたので、適度な戻りが欲しかったというテクニカル的な要因もあるでしょう。
  あとは、インチキとか、政治的な思惑もあるでしょうね。欧米としては破たんを回避するために、じゃぶじゃぶと市場にマネーを供給することで、株価を押し上げ、景気を下支えし、乗り切ろうと考えているフシがあります。今回の世界的な株高局面が「過剰流動性相場」と呼ばれるゆえんです。
  日銀は欧米が金融緩和を始める以前から、2000年代に入ってすぐにデフレ脱却を目的に量的緩和を進めてきましたが、リーマン・ショック後、欧米の中央銀行が供給した流動性と比べると、抑制が効いていました。これが歴史的な円高が進んだ要因でした。
  欧米に先駆けて金融緩和をしてきた日銀ですが、今回の緩和については欧米に追随する形で、「危険な一歩」を踏み出したと見ることもできます。要は金融緩和競争に乗り遅れるなということで、安易にのっかってしまったということです。もちろん目先の円高是正という事情もあるのですが。
  景気は少しは良くなるのかもしれませんが、それと引き換えに、全体としては景気が大して盛り上がらない中で、インフレが起きるとどうなるか? 欧米に端を発する通貨不信認の流れが波及したらどうなるか? とんでもない副作用を引き起こす可能性がある“劇薬”であるということも肝に銘じておかなければなりません。
  今回の日銀の金融緩和は「サプライズ」のように海外でも報じられていますが、緩和の10日ほど前にロイターが観測記事を流していましたよね。私は材料織り込み済みと思っていたのですが、追加緩和を決めた14日の日銀政策決定会合直後、マーケットは敏感に反応しました。
  日経平均9000円付近での動き、1ドル=77円後半で小休止した時の動きは、非常に臭く、何かありそうだなという気はしましたが、相場を押し上げる材料よりは、むしろギリシャ情勢が日本で報じられる以上に緊迫していたのでダウンサイドリスクの方に目が行ってしまいました。マーケットを動かす人たちにとっては、まさにそれこそ思うつぼですね。私も目をくらまされました。
  ただ、インチキ臭い兆候は、なんとなくあって、先物は、2月13日に8980円で何の脈絡もなく、突然、900枚買われる動きがあり、そのことを考えても、出来レース、まさにインチキ、イカサマで仕組まれたものでした。キッシンジャー博士の「円高はこれ以上進まない」との“予言”もありましたしね。
  ちょっとしたバレンタインプレゼントになったわけですが、どう考えても、政治的な思惑がプンプンしますよね。要は日本も欧米と道連れにされつつあるということです。円は対欧米通貨に対しては強くても、いつかは中国やロシアなんかの通貨に比べ、非常に弱い通貨になってしまうでしょうね。
  目先の金融恐慌を回避し、株価、景気を浮揚させるために、テクニカル的にも絶妙なタイミングで米国の命令で緩和させられたわけで、株価、ドルの上昇で、ちょっと浮き足立ってしまいますが、その事実は重く受け止めるべきでしょう。
  さはさりながら、ボラティリティーが上昇し、トレードしやすくなったということは、非常に好都合で、このチャンスを逃すべきではないでしょうね。金融恐慌まで時間的、経済的にも余裕ができるでしょうから、金(金価格はやや高いですが)でも買い増して、しっかり守備固めをしましょう。
  米国云々、歓迎できなかったり、すっきりしなかったりすることはたくさんありますが、とにかく相場がある限り、利益を得られるチャンスは無限にあるんだなということをしみじみ実感しました。乗れるものには何でも乗ってみましょう。