このブログで、「破綻国家」というと、基本的には経済的にもはや再起不能状態になっている、米国のことを指していうことが多いですが、実は残念ながら、この日本も、破綻国家というにふさわしい状況に陥りつつあります。
日本が破綻状態と言っても、経済的な意味合いではなく、自分で物事を決定したり、諸課題に適切に対処できないという意味です。
まあ、米国の言いなりで、為替介入を繰り返し、貴重な資産を食いつぶしており、今後もヤクザのような国にカネを無心されるであろうことを考えると、経済的にも破綻しつつあると言えなくもないですが、基本的には米国をはじめ諸外国と比べると、経済状況は、はるかに健全であり、むしろ財政破綻危機などとあおって、増税を強行し、米国に貢ぐ財源をひねり出そうとする輩がいるので、財政、経済そのものの危機というよりは、そちらの方を警戒しなければなりません。
東日本大震災や東京電力福島第1原発事故後の右往左往ぶり、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)をめぐる、ドタバタを見るにつけ、もはや、国家としての体をなしていませんね。
以前に「日本再占領」(中田安彦著、成甲書房)という本を紹介しましたが、その中でウィキリークスによって流出させられた米外交光電を読み解く中で、米国が日本を積極的に従属させようとしているのではなく、むしろ日本の外務省や財務省の官僚、そして一部政治家がそれを望んでいるのだという構図が浮かび上がりました。
日本は第2次世界大戦で、完膚なきまでに叩きのめされ、そこからいち早く立ち直るため、吉田茂首相が再軍備化をせず、軍事力を米国に依存し、経済復興を優先する「安保タダ乗り」の道を選んでから、対米従属路線が始まりました。
これにより、バブル経済絶頂期まで半世紀近くにわたり、日本は未曽有経済発展を遂げ、「経済大国」として一目置かれる存在になり、その余韻は今でも残っているわけですが、一方で、自ら必要な軍事力を持つことを放棄したことで、国際的な発言力は限られ、米国の陰に隠れてしか、国際社会では行動できなくなってしまいました。
また、東西冷戦が終了し、ソ連との軍事競争に勝利した米国は、その矛先を日本に向け始めます。日本の経済力を脅威に感じ、「敵国」として認識するようになったのです。
1990年代後半以降、金融攻撃を仕掛けられ、大手銀行がバタバタと倒れていき、タダ同然の値段で、破綻した銀行が米国のファンドによって買いたたかれるようになりました。
また、米国債というババをつかませて、円高にしてはしごを外し、資産価値を目減りさせるというデフレ攻撃や、米国債を買い支えさせ、自分たちは日本が貢いだ資金で、日本の優良企業を買いあさるというのもいまだに常套手段ですね。
軍事力放棄、すなわち、自分たちの運命は自分たちで切り開くということをやめてしまったがために、大きな代償を支払わされることになってしまったわけです。
先週末、ハワイで行われたアジア太平洋経済協力会議で、日本はTPP参加表明や、米軍普天間飛行場問題で、あらためて、日米合意順守を明言させられたわけですが、経済的にガタガタして、もはや国家としては終わりに近づいている米国に、この期に及んで、言われたい放題、やられたい放題というのは、日本自身の問題でもあるのです。
TPPに関しては、中国が参加に前向きな姿勢を示すなど、急展開しつつあります。中国の動きは日本にとって吉なのか凶なのか、現在のところは、断言できません。ただ、言えるのは、自分で自分のことを決められない「破綻国家」など、だれもまともに相手にはしないし、カモにされるだけということです。中国は日本がまともに外交交渉ができる国であるとはみなしていません。
だから、米国の動きだけでなく、中国に対しても、現時点では理不尽な要求に何もなすすべがないのが日本の現状です。ゼロからのというか、大きくハンディを背負って、外交交渉に臨まなければなりません。
日本の国益を追求しようとしたら、ぶざまな格好をさらすしかないわけですが、そこからでもスタートし、少しずつでも前に進んでいかなければならないということです。その覚悟が、政治家や官僚、そして国民にあるのかは疑問ですが。
まずは、日本が破綻国家であるとの自覚を持つべきでしょうね。