自動車の未来~東京モーターショー2011⑤ 国内メーカー・マツダ・富士重工業・三菱自動車

  日本には一生懸命頑張っている自動車メーカーがまだまだあります。世界規模で生産、販売網を持ち、豊富な研究開発費を武器にグローバル競争での勝ち抜きを目指すメーカーがある一方、独自の技術やアイデアで、規模は小さくてもユニークな個性を発揮する会社もあります。
  日本のいいところは、多様性が維持されていることですね。勝ち組の一握りの者が、すべてを独占するのではなく、規模が小さく劣勢にある者も共存しています。もちろん勝ち組でない人たちは苦しい状況にはあり、円高や欧米の金融危機も追い打ちを掛け、存亡の危機と闘っているわけですが、苦境を乗り越え、独自の進化を果たしてほしいと思います。


  ハイブリッドでも電気自動車でもない、“第3の道”を目指すのか、マツダの動向は目が離せません。マツダのコンパクトカー「デミオ」は、「スカイアクティブ」という切り札の技術で、マイレージが30キロ/リッターで、同クラスのハイブリッドに肩を並べるレベルです。
  こうなると、わざわざエンジンを積み、さらに電池とモーターをのっけるのがバカバカしくなります。構造が複雑で、エンジンとモーターを制御するソフトの開発が必要になる分、開発費も割高になるでしょうからね。
  欧州勢の展示を見ていても同じようなことを感じたのですが、日本メーカーはハイブリッドに安住して、エンジンの開発がややおろそかになっているのではないかということです。
  数年前に自動車部品をつくっている、ある中小企業の社長に聞いたことがあるのですが、「中小企業の技術を結集すれば、エンジンの燃費は2倍にすることも不可能ではない」と。正直、話半分で聞いていましたが、あっさりとマツダが高性能のエンジンを生み出したことを考えると、難しいことではないのではないかという気がしてきました。




  注目したいのは、「CX-5」ですね。スカイアクティブのガソリン車に加え、クリーンディーゼル車もラインアップに加わります。
  日本、米国では劣勢ですが、欧州市場で強いマツダならではですよね。トヨタ自動車がいすゞ自動車と提携し、中小型車向けのディーゼルエンジンの開発を目指したものの、はかばかしい成果を挙げられないままであるのに対し、独自にディーゼルエンジンに挑戦する姿勢は面白いし、日本企業の底力を見せてほしいと思います。


  残念なのは、「RX-8」。世界で唯一のロータリーエンジン車でしたが、来年6月で生産を終了する予定です。ロータリーエンジンは、水素を直接燃焼できるという利点もあり、一つの可能性を示したわけですが、高い技術と市場の求めるニーズの間には大きなギャップがあったようです。
  ロータリーを完全に捨てるわけではないでしょうから、マツダには、エンジンの可能性を徹底的に追及してほしいですね。




  コンセプトカーも目を引きました。「雄(TAKERI)」。ミニバンやSUV、ワゴンタイプ、コンパクトカーなどが主流になり、各社ともセダンに力点を置く比重が下がりつつありますが、グローバル展開を考える上でも、セダンの開発は重要だと思います。韓国・現代自動車なんかは、米国市場向けにするどいところを突いてきていますからね。
  トヨタ、日産自動車、ホンダにはない視点、選択肢を示している点で、マツダの姿勢には非常に好感が持てました。


  富士重工業は、試練に立たされている会社です。元々はここも技術力に定評にある会社なのですが、研究開発費の問題で、低燃費競争からは脱落し、米ゼネラル・モーターズが放出した株式の一部を引き受けて筆頭株主となったトヨタとの関係で、どう活路を見いだせるかがポイントですね。
  レガシー、インプレッサ、フォレスターと、魅力的な車はあり、それなりの市場ニーズもあると思うのですが、販売網と認知度ですよね。東京なんかでは想像できませんが、雪深い北海道なんかでは、4輪駆動車が求められるので、「スバル」の存在感はかなり高いです。レガシーなんか使い勝手いいですからね。






   トヨタと連携して、スポーツカーに力を入れる路線は面白いと思います。トヨタの「86」が、昔の車づくりに引きずられて、ちょっと野暮ったい感じに仕上がったのに対して、スバルらしさをどう打ち出すか? 車のデザインとか、独特のセンスがある会社なので、欲しいと思える車が出てくるのではないかと、ちょっと期待しています。




  三菱自動車。この会社も技術に自信を持つ会社です。かつては現代自動車に技術を教える立場だったんですけどね。今も技術陣は精鋭ぞろいだとは思いますが、何せ経営が安定しません。自動車関係のジャーナリストと話すと「マツダとくっつけばいいのに」という声が多く聞かれますが、難しいでしょうね。
  マツダは三井住友と関係が深く、三菱はその名の通り、見捨てられつつありますが、三菱グループですからね。残念ながら、そこは冷徹な資本の論理が貫かれることでしょう。


  日産やホンダは、ダウンユースの電動自動車をコンセプトとして出してきましたが、三菱の「i-MIEV」はすでに具体化しています。
  環境への配慮をアピールするために、事業所なんかで導入するところが増えているようですけど、今後は一般のユーザーに浸透できるかどうかですよね。
  タウンユースならば、自宅に充電できる設備があれば用は足りるとは思いますが、街中で充電できないというのは心理的に普及のネックになることでしょう。
  日産同様、スマートハウスの展示がありました。これはすでに触れたことですが、車のバッテリーと家庭の電源がリンクするのは、なんとなく不自然で、実用的ではないと思います。自動車の用の電池が高性能、低価格化する頃には、家庭用の蓄電池も普及しているでしょうしね。