日本では何かをやろうとしたり、変えようとしたりするとものすごく時間がかかります。新しい事を始めたのはいいですが、勇み足で飛びついてしまい、失敗してしまったというのは、ままあることで、慎重に事を運ぶという意味では、それでもいいのかもしれません。
ただ、世界的には、情報通信技術の発展や、交通網の充実で、どんどん時代の流れというのは速くなっており、スピード感が重要となる分野が増えています。時代から取り残されると、将来に禍根となり、命取りにもなりかねないのです。
このブログでは毎度、言及していますが、日本の電機メーカーは、まだ10年ほど前は、世界のトップを走っていたのですが、いまや韓国、台湾メーカーの後塵を拝し、背中が見えなくなりつつあります。さらには、中国に抜きされるのも時間の問題でしょう。
「円高」を言い訳にしますが、それが理由の一つであることは認めますが、グローバル展開の遅さがこうした事態を招いたことは否めません。日本メーカーが国内市場で不毛な争いをしている間に韓国のサムスン電子は、世界の隅々にまで製品を供給する販売網を築き上げたのです。世界のどんな小さな村でもサムスン製品を見かけることができるといっても過言ではなくなりました。
台湾メーカーは私たちには姿が見えにくいですが、中国メーカーと共同で、世界最大の市場にがっちりと食い込み、さらには余勢を駆って韓国に続いて世界をうかがいます。
世界の人々の所得が向上し、どんどん豊かになっていくという、大きな流れを見極めることができず、しかもタイムリーな経営判断ができなかったことが、日本メーカーの最大の敗因でしょう。多くの製品は20年前くらいからすでに、海外生産していたわけで、円高などはっきりいって言いわけにはなりません。中国に工場を建てればいいのです。中国でうまくいかないならベトナムやその他有望な投資先があるわけです。円高を言い訳にするのはボンクラ経営者です。
大小多くのメーカーが乱立する、電機の分野はとりわけ競争が激しく、風景が一変してしまいましたが、いずれ日本が今のところまだ優位に立つ自動車も後に続くでしょうね。すでにその兆候はあって、トヨタ自動車は利幅の大きい車が売れていた欧米に深入りするあまり、新興国の開拓は後手に回り、独フォルクス・ワーゲンや、韓国・現代自動車に後れを取りつつあります。それどころか米ゼネラル・モーターズも先行しています。
ここへきて感情的なものもあって、「中国経済に陰り」みたいなことをやたらとメディアが言い立てますが、バカ言っちゃぁいけません。中国はたしかに成長の勢いは徐々に鈍化していくでしょうが、それでも8%成長ですよ。成長どころか後退しつつある欧米や日本とは違うのです。1%でも利息がつけば御の字のこの時代に、8%も成長するんですよ。
中国の沿岸部は勢いは衰えつつありますが、内陸部にはまだまだ豊かさを求めて貪欲に働きまわる人々がいるのです。また、中国の中間層、富裕層はどんどん消費が成熟しつつあり、そうなると日本企業には商機が大いにありますし、何より日本は節約とかエコとか、しみったれていますが、派手に金を使う性向があります。それは中国経済の底堅さを演出するでしょう。
日本には地理的な近さもあるし、文化的に欧米より中国に近く、ニーズをつかみやすいなど、多くのアドバンテージがあると思いますが、うかうかしていると、かっさらわれてしまいます。日本企業を研究して、自分のものにしようとする中国人留学生やビジネスマンはうようよいます。多少は向う傷を負っても、一気呵成に攻めてしまわないと、せっかくのアドバンテージも宝の持ち腐れになってしまいます。
長らく恵まれた立場にあると、感覚がマヒして貪欲さが失われてしまうのでしょうね。日本は時代の流れがまだ遅かった時代に、経済大国となり、ブラウン管テレビやVTR、ラジカセ、ウォークマンなんかを何十年もつくって、利益を上げてきました。
今では商品サイクル、栄枯盛衰が激しく、一つの商品で3年も儲けられればいい方ではないでしょうか。あのサムスンやLG電子でさえ、テレビ関連の投資は重荷になりつつあります。だから、儲かる商品、世界が求める商品、役に立つ商品の開発をもっともっとスピード感を持って進めないといけないし、臨機応変にビジネスモデルを構築する必要があります。
韓国や台湾なんて日本より遅れてスタートし、不利な立場だったので、逆に鍛えられてたくましくなりました。韓国、台湾よりもさらに厳しい環境におかれる中国はさらに強い体質になるでしょう。こうした相手と戦うには、もっともっとスピードを上げていかなければなりません。殿様商売では振り向いてもらえないし、いいものがあっても、マネされて埋没してしまうでしょう。
リニア新幹線の整備計画なんて、半世紀ぐらい前からあったんですよ。それが完成するのが2020年代なんて、「今まで何やってたの?」っていう感じです。それに2020年代といわず、やろうと思えば、2010年代に東京-大阪間でフル開業できるはずです。
リニア新幹線の完成を早めることで、どれだけ経済効果があることか。逆に計画が遅れたことで、かなりの損失を被っているということにもなるのです。このあたり、時代を見極めることのできる人材をもっともっと養成しないといけないし、私たち個人個人も感覚を研ぎ澄ませる必要があります。