久しぶりのラーメン店紹介。今年は年初来寒い日が続き、3月になれば少しは楽になるのかなと思いきや、日中の最高気温が10度以下という日がほとんどで、寒さに弱い私はついつい出不精になってしまいました。これも地球温暖化が原因なのだそうです。暖冬でも猛暑でも冷夏でも温暖化、温暖化、実に都合がいいですね。
例年、春先は体調を崩しがちなのですが、今年は花粉の飛散量が少ないこともあって、比較的楽に過ごせています。ただ、最近やや胃腸が弱っていて、食欲も減退気味で、ほんのりとした酸味がただよう、煮干しベースのつけ汁が恋しくなり、つけ麺界のパイオニア、東池袋「大勝軒」を訪れてみることにしました。
東京では、4、5年前くらいから本格的につけ麺がブレイクし、いまやすっかり定番となり、いろんなお店が各所にできていますが、私はそれほどつけ麺に思い入れはないんですよね。
常々強調しているように、ベーシックな醤油味の東京ラーメンが好きで、そこを基本にしつつ、新しくできたラーメン店に勉強のために、ちょいちょい手を出しているというような感じです。北海道で長く暮らしていたこともあって、味噌ラーメンも良く食べるし、辛い物好きなので担々麺なんかも外せないですが、やはりオーソドックスな醤油味が一番ですね。
私が初めて東池袋・大勝軒に訪れたのは、15年ほど前ですかね。あまり詳しくはないのですが、現在の大勝軒は創業者の薫陶を受けたお弟子さんが再興したもので、現在とは違う場所で営業されていました。
大勝軒は当時から大人気で、平日にもかかわらず行列ができていて、2月ごろだったでしょうか、20分ほど待ってようやく店内に入れました。そもそもは醤油ラーメンを所望して行ってみたのですが、味は調っているものの、正直、それほどインパクトはありませんでした。当時、私は荻窪の御三家に首ったけだったので、物足りなさを感じていました。
ただ、その時、行列に並んでいたほとんどの人が「あつもり」「あつもり」と注文していたのが非常に気になりました。大勝軒でラーメンを頼むのはごく少数派で、みんな「あつもり」が目的で訪れているんだなということに気づきました。
数か月後くらいに再訪して、初めて「あつもり」を注文したのが、私のつけ麺との初めての出会いです。今では各地に大勝軒の系列店があるので、行ったことがある方はご存知でしょうが、弾力のあるむちむちの麺が印象的でした。
つけ汁の方は常時、マイナーチェンジはしているんでしょうけど、基本路線は変わっておらず、煮干しベースに酸味を効かせた味は、今も昔も変わっていません。正直、初めて食べた時は、それほど感動しませんでしたね。むしろ、「世の中の人ってこんな味が好きなんだ」と違和感がありました。
でも、何日か経つと「そういえばあの味って今考えるとちょっとおいしかったのかも」と思わせるものがあって、好きでたまらないってほどではないんですが、定期的に食べたくなる味だなぁと感じつつ、今に至っています。
かつての大勝軒はこじんまりした昔ながらの店舗で、店内もせせっこましくて、一見さんはやや近寄りがたい雰囲気があったのですが、現在の店舗は首都高のガード下で、サンシャインシティなどの中心部からは外れ、ひなびた感はあるものの、店内は完全に現在風の新興ラーメン店と同じ、こぎれいでシックな感じです。
以前は店を見つけづらかったのですが、今は都電荒川線や、東京メトロ有楽町線の駅から近く、アクセスしやすくなっています。
例によって混雑時間帯を避けるべく、午後2時すぎに訪れたのですが、行列はなく、スムーズに入店できましたが、根強いファンや近隣の人に愛されているようで、昼食時間帯ではないにもかかわらず、席は8割がた埋まっていました。
ゆで玉子がすきなので、ゆであつ中盛り(850円)を注文。かねがね主張していますが、私はラーメンには固ゆでの玉子が合うと思っています。中途半端にとろっとした黄味より、ゆで上がったぼそぼそした黄味(おいしくなさそうな表現ですみません)の方がマッチしていると思います。
黄味に火が通っていないと、玉子全体がぬるくなってしまい、スープの温度が冷め、おいしさが減退してしまうケースが有名店でも非常に多いです。しかもその方が主流です。
大勝軒はしっかり固ゆで玉子で、私の基準では上級ランクです。つまらないささやかなこだわりでしかないのですが。ちなみに荻窪・丸福の玉子そばの玉子はおでんのように味がしみ込んだ煮玉子で最上級です。
つけ麺を始めた人はいろいろいるようで、各地に元祖とか源流を主張するお店がありますが、つけ麺をメジャーにしたのは間違いなく大勝軒ですよね。いまや全国区ですから。
どの店でも、大勝軒の味が根底にあることは間違いありません。全然違う味付けでも、無意識のうちに影響されているはずです。
ベーシックな味は期待を裏切りませんよね。私にとって、好きで好きでたまらないというほどではないのですが、ほんのりした酸味、煮干しの香ばしさ、アクセントにちょっと忍ばせている赤唐辛子粉末が、弱った体にじわりとしみ込んでいきます。
それほどお腹がすいているというわけではなかったのですが、食欲をそそられ、ちょっと多いかなとも思われた、中盛りの麺も難なくクリアできました。これほどつけ麺に感謝したことはかつてありません。すっかり生気を取り戻せました。
なんだかんだいいつつ、月に1~2回はつけ麺を食べています。いつの間にか、食生活の一部として定着しているのですから、すごいことだと思います。
最近の東京のラーメン店のトレンドは、スープをあんかけ風にしたものや、具が進化し、とんかつやステーキなど脱チャーシュー化が進んでいるようです。
つけ麺のように日々の食事の中に割って入るくらいの強さをもち、新たなスタイルを確立できるのか? 注視したいと思います。