スーパーの西友が3月から中国産米を5キロ1299円で発売しました。中国というと日本向けの農産品、加工食品の輸出が多く、食料基地なのですが、過去にさまざまな食の安全をめぐる問題が起きたことで、決していいイメージは浸透しておらず、消費者の側も安いけれども、恐る恐る手を出すという感じでしょうか。
中国産米といっても、品質管理は日本側の基準に基づいて行われているでしょうし、米の品種もジャポニカ種だそうですから、土地や水の違いで、微妙に日本産米とは異なる部分はあるでしょうけど、それなりの品質は確保できているでしょうから、総合的に判断すると決して悪くはないと思います。
個人的には、昨年末に正月用にと中国産の落花生をいただいたのですが、おそらく日本人の高い要求に応える基準をクリアして出荷されたのだと思うのですけれども、とてもおいしくて、本当に食べだすと止まりませんでした。
落花生がやみつきになってしまい、JR上野駅でやっていた千葉県物産展で、高級とされる特産の落花生を買って食べたら、中国産に慣れたせいもあって、そんなにおいしいとは感じられなかったんですよね。千葉県産の落花生を食べ終わった後、中国産の有機栽培の落花生を近くのスーパーで買って食べたら、これがまたおいしかった。
こういう経緯もあるので、私自身は、中国産に対する抵抗はあまりないのですが、主食の米となると、ちょっと別ではないかと思っています。
西友で中国産米が発売された初日、夕方のニュース番組で日本産、中国産、米国産の米を街で食べ比べてもらう調査をやっていたのですが、日本産米がそれなりに評価を受けたものの、中国産、さらには米国産もそこそこ好評で、「あまり味に違いはない」という声が出ていました。
中国、米国でも、日本人の嗜好に合わせた米について研究しているし、栽培方法も工夫しているので、ちょっと食べ比べただけでは、よほど敏感な人でないと、違いが感じられないかもしれません。でも、日本産の総じて品質の高い米を食べ続けていると、微妙な味の違いは識別できるのではないかと思います。
人それぞれ生まれついた体質があって、穀物は合う合わないが顕著です。私の場合は、まさに米が体質に合わないと、絶大な信頼を置くかかりつけ医から言われていて、小麦粉やそば粉を中心とした食生活だったのですが、漢方薬で体質改善し、現在では体に合わない食物はなくなりました。
また、同じ穀物でも、産地によってこれまた、その人に合う合わないがあるようで、日本産米が合わないけれども、中国産米は合うという人もいて、そういう人にとっては、中国産米の発売開始は、まさに朗報と言えるでしょう。
そうは言うものの、地元でつくられた食物にこだわりを持ち、食べ続けるというのは、地域や日本全体の一体感を保つ、重要かつ数少ない機会だし、B級グルメブームに象徴されるように、地域活性化、ひいては日本経済の活性化につながるポテンシャルを持っています。学校給食なども大切な役割を果たしていますね。
日本人が生産に関与しているので、中国産にせよ米国産にせよ、作られた米はかなり完成度が高いと思います。ただ、作り手の思いや、生産地、生産者が見えるという点では日本産米には太刀打ちできないと思います。
日本人の気質や風土、めぐまれた環境、きれいな水によってはぐくまれた日本米は、どんなに肥沃な土地であろうと、低農薬で効率的に生産されようと、中国や米国の米とはモノが違います。
私は体質的に合わなかった米を控えていたのですが、気にせずに食べられるようになり、米にはそれなりにお金をかけています。現在は、高級炊飯器と5キロ3500円の魚沼産米を毎日のように食べています。食生活自体は米と味噌汁と納豆が基本で、シンプルなのですが、おいしい米を食べると、十分満足感が得られ、テンションが上がります。外食すると、米の質がやはり気になりますね。
安価でそこそこ質が良い輸入米が流入することで、何より気になるのは、食を通じて格差が広がり、さらに国が分断されることですね。
これまでは所得の差はあっても、日本人ならば、食べているものにそれほど差はなかったのですが、格差が固定化することで、明らかに生活圏、生活の質が分断されようとしています。日本の流通、外食産業は一生懸命頑張ってしまうので、安くてそれなりに満足感が得られる食品を提供してくれ、頭が下がるのですが、それでも限界があります。
やはりいいものを食べようとなると、それなりにコストがかかります。細かいところの気配りや心の込め方も違いますから、同じようなものを食べても食後感は異なり、質のいいものを食べると、気の持ちようが違うし、おざなりなものを食べると、やはりどこかですさんでしまう部分があります。
すでにいろんな形で入り込んでいると思いますが、米国産なんかの得体のしれない遺伝子組み換えや、農薬が使われている食品がこれからもどんどん輸入されるでしょうね。今はまだアレルギーが強いですが、徐々に抵抗感がなくなり、違和感なく溶け込んでしまう日がそう遠くない将来来る可能性が高そうです。
食に関して平等で、しかも質に敏感であったからこそ、日本人独特の感性がはぐくまれ、日本経済が長きにわたって強さを維持できた部分は大いにあると思います。日本のマーケットは日本人の品質に対する厳しさを反映して、世界一レベルが高いのです。それが、安物の輸入品の流入で崩れるのは、憂慮すべき事態ではないでしょうか。